ティアラの聞き込み②(目に見えない彼との距離)
60「ティアラの聞き込み②(目に見えない彼との距離)」
その後私はギルドで引き続き聞き込みを行った
そしてギルドでは"英雄さま"とフードの男について
の情報を少しでも聞き出すことが出来た
そしてその中でも特に注目の情報はというと
①フードの男、もしかしたら"英雄さま"かもしれない
男は冒険者になってないという事だ
(この情報には流石に私も2度聞いてしまった
まさか登録していないなんて!)
②フードの男を再三、ギルド職員のメルルが
勧誘しているが頑なに加入しようとはしなかった
ようだ
(これは身元がバレる事を嫌がっての行動なの
かもしれない)
③フードの男に伝えた買い取り業者とは
この町に住むハーフエルフの薬屋の事のようだ
(今のところここが一番情報を持っている
可能性がある)
といったところだ
まさか冒険者になっていないという点を
除いては意外性のある点は少ないかもしれない
そして情報でもあった通り、次の目的地は
「よし、ハーフエルフの薬屋に行くとしよう」
私はギルドを出てそちらの方に向かうのだった
ーーーーエイダ・カルラ合同宅/薬屋ーーーー
「失礼する 少々お聞きしたい事があって
訪れたのだが・・・
誰か、誰かいないだろうか?」
私はその薬屋に着き、店に入ったのだが
そのカウンターには誰も存在しなかった
そのため先程の声かけをしたのだった
すると奥から女性の声が聞こえて
「すいません!ちょっと待ってくださいね」
そしてカウンターの奥のほうがガサガサ
いったかと思うと
「はい!お待たせしました
それでどうかしましたか?」
奥から現れたのは人間の女性だった
話にはハーフエルフの店だと聞いていたが・・・従業員か?
まあ思っていた人とは違うかもしれないが
何か聞けば知っているかもしれない
私はそう思いこの女性に話を聞いてみることにした
「ここにカルラというフードを被った男が
来ていると思うのだが・・・
彼について何か知らないか?
もしかしたら彼が今、町で噂になっている英雄さま"
と関係あるかもしれないんだ」
ここは冒険者ギルドではないので特に
変な小細工なしの直球で聞くことにした
フードの男が"英雄さま"であることを少し匂わせてだ
すると彼女はそうなのですか?とあまり驚かずに答えたのだった
「そうですねカルラはよくここに来ますよ
(なんせ住んでますから)
この前の戦いの後に来てますし
あの有名な"英雄さま"についての話は彼から
聞いたことがないのでわからないですね」
彼女は隠すようなそぶりを見せず淡々と返す
うむ、とりあえず彼がここに来ていることは認めてもらえた
しかし今、私が聞きたいのはそんなことじゃなくて・・・
「そ、そのカルラという男はどういう人なんだ?
ほら性格とか!例えば謙虚だったり
紳士的だったりしないか?
その他にも隙の無い人だったり、完璧だったり・・・」
私はそんな風に問いにならないような問いを彼女に尋ねる
そんな私の問いに少し笑みを浮かべ
「彼が・・ですか?
いえ、彼はもっと人間味のある人ですよ
たまに優しかったり、気を使ってくれたりしますけど・・・
隙だらけだし、完璧とは程遠い人ですよ
それに完璧でないからこそ・・・」
と私が聞きたかったことではないが
彼女の彼について何でも知っているかの
ような答えが訳もなく私の心をざわめかせた
そしてそのざわめく心からか言うつもりもない言葉が自然と口をついて溢れてきた
「その!彼も実は"英雄さま"のような
人なんじゃないか?
ほらギルドでの強引な勧誘があったみたいに
誰からも認められて、求められるようなそんな!」
私は自分で言っていて訳が分からなくなった
なぜこんなにも彼女の言葉を否定するのか
なぜこんなにも彼がそうであって欲しいと言ってしまうのか
しかし彼女はそんな私を笑わずに
先ほどまでの笑みを引っ込め
真剣な顔でありながら、どこか悲しさ
の混じったような表情で話し出す
「確かに彼は多くに求められ、それに
応えるだけの力があるかもしれません
それによって認められ"英雄さま"だと
言われることもあるかもしれません
しかしそれは彼自身ではなく、彼の力が
認められ求められているだけです
そんな、それだけを自分のすべてだと
思われ、誰も自分自身のことを見てくれない
のは悲しすぎると、彼は言っていました
ですから、あなたの言う悲しさとは無縁で
完璧な"英雄さま"には程遠いですから
彼はそんな人ではありませんし
そうなりたいと求めるはずがありません」
私は彼女のその真っ直ぐな言葉に
何も言うことが出来なかった
私は"英雄さま"をしっかりと理解して
見ていただろうか?
その誰にも真似できないような行動
そしてそれを実現するだけの力
私はそれだけに憧れて、そうあるべきだと
決めつけていたのではないか?
自分に出来ないことも平然とこなせる
誰もが諦めるようなことをいとも簡単に成功させる
そんな風に完璧な人間だと勝手な理想を彼に押し付けていたのではないだろうか?
そんな勝手な押し付けが彼を縛り付け
そうあるべきだと強要している
ことにも気付かずに・・・
そこまで考えた私は、そんな勝手なことを
彼の友人であろう彼女にまで押し付けよう
としていたことに深く恥じた
私は深く頭を下げ彼女に謝罪する
「本当に申し訳ない!私の勝手な理想を押し付け
剰えあなたの話まで否定してしまって・・・
彼のことを全く理解していなかった
調べただけで、勝手に知ったような気になって・・・」
すると彼女は首を振って
「いいえ、あなたが思った彼
そのように見えていた彼
それも彼の一部であり、彼自身よ
けれど問題はそれを彼の一部ではなく
それだけをすべてだと思い込み
押し付けてしまうことよ
だからあなたにも彼を、彼自身に
目を向けてみてくれると嬉しいわ」
とはっきりした口調で、そして最後には
笑みを浮かべてそう言ったのだった
私は彼について知らないことが多い
しかし今度は、今度はちゃんと彼自身に目を向けて
彼について知っていけたらいいと心から思うのだった・・・
文章書くのがここまでつらいとは・・・
次話、もしかしたら閑話挟むかもしれません




