生チョコ。
「ハルキさん大変です! ギルドの売り上げが落ちました!」
「いや知らんがな」
「そんな殺生な! 家賃優遇してるでしょ!」
「え? んじゃ適正払います」
「それじゃいざという時に無理難題を押し付けられないじゃないですか! これだからお金に余裕のある人は!」
皆はシーサーペントの蒲焼きで英気を養ったのか、また仕事でどっか行ってしまった。と言う訳で暇なので折角ギルドに来たのだがこの扱いである。やってらんねぇー。
「ふむ。帰るかリザ」
「そうね。なんかメアリー機嫌が悪いみたいだし」
「なに来て早々久しぶりに顔を出したのに帰ろうとしてるんですか!?」
「むしろこんな事言われて何故帰らないと思いで?」
「私達の間柄ならこんなのただの挨拶じゃないですか」
「嫌な挨拶だな」
「そうね。やっぱ帰りましょう」
「んだな」
「逃がしませんよ!」
ガチで帰ろうとしたらカウンター越しに肩を鷲掴みにされてしまった。こういう時はホント素早いな。
「というか普通にお客さんいるじゃないですか?」
「そうね。普通にいるわよメアリー」
「リザ達がメイドしてた時はもっと繁盛してたんですよーー!」
「いやあれと比べるのが間違いでしょ? あれ一種のお祭りのようなもんだし」
「そうよ。ただ通常営業に戻っただけじゃない」
「そろそろボーナス査定なんですよ。なんか良いアイデア出してくださいよ」
「何故に俺がメアリーさんのボーナスまで考えなければならんのか知りたいんですが?」
「良いじゃないですか。どうせ暇でしょう?」
「否定はできない」
「そうだ! リザもう1回メイドしてください! リリィさんとお願いします!」
「嫌よ! 絶対嫌!」
リザは断固拒否だ。そもそも前回酔ったリザをだましたという反省がされてない。
「良いじゃないですか減るもんじゃ無いし」
「そんなに言うならメアリーがバニーの格好でもすれば良いじゃない!」
「では私がするのでリザもしてください!」
「なんでよ! 嫌よ! 私は関係ないじゃない!」
「一蓮托生でしょう? 私達親友じゃないですか!」
嫌な親友だな。
「親友じゃなくてこういうのは悪友って言うのよ!」
「酷い! お姉ちゃんに向ってなんて言い草!」
「はん! 何言ってるんだか! 帰りましょうハルキ」
「ハルキさんはリザのバニー見たいですよね!」
「俺を巻き込まないでくれます?」
見たくないと言えば嘘になるが俺に振られても困る。
「というかメアリーさんはバニーに抵抗ないんですか?」
「え? むしろ着る機会が無いので若いうちに着れるときに着ときたいですよ?」
「リザは?」
「恥ずかしいから嫌よ!」
「まぁ普通はそうだよな? んじゃ水着は?」
「水着で接客とか意味不明だから! 海ならまだしも何言ってんの!?」
「つまり海なら良いと? メアリーさんは?」
「流石にギルドで水着はちょっと無理ですよ。海の家ならまだしもそれに今はもう秋も終わりですよ?」
「んじゃ俺が地下の訓練場を温水遊泳施設に出来ると言ったら許可します?」
「は?」
メアリーさんは何を言っているか分からないといった風だが、俺にかかれば地下を温水プールにするなど容易い。
「ハルキ、あんたまさか…」
「ふぉふぉふぉ。さっき海なら良いと言ったよな? それはつまり着る理由があれば言い訳だ。と言う訳で許可が出ればリザが水着で接客します」
「なるほど名案です! 早速ギルド長に許可を申請してきます!」
「させない!」
リザがメアリーさんの前に素早く立ちふさがる。
「リザ退きなさい!」
「行かせる訳無いでしょ!」
「なんでです!?」
「嫌だからに決まってんでしょ!」
「ハルキさん!」
「ほい。『スロウ!』」
「な!?」
「ありがとうございます!」
俺の魔法で急に動きが鈍くなったリザの横をすり抜け、メアリーさんはギルド長室へと急いでいった。まぁ許可が出ると良いな。
「ハルキ、何なのよこの魔法は!」
「ん? 動きを遅くする魔法だ」
「私が遅い? 私がスロウリィですと!? 認めない!」
「いや認めないも何もそういう魔法だから諦めろ」
「くっ! いつからそんな魔法が!? 他にどんな魔法が使えるのよ!」
「色々」
「色々って?」
「秘密」
「教えなさいよケチ!」
「ふぉふぉふぉ。まぁ追々な」
俺の魔法でメアリーさんに後れを取ったリザは不満気だが、俺は使う機会が無かった魔法を使えて満足である。
「ハルキさん! 無事許可が出ました!」
「え? マジで?」
「はいマジです」
「あぁ許可したぞ」
「そんな馬鹿な!?」
ギルド長と一緒に戻ってきたメアリーさんだが、まさかこんなアホな企画が通るとはギルド長も意外とノリが軽い。
「訓練場は余り利用者が居ないからな。寧ろこれで有効活用できる。取り敢えずその温水遊泳施設とやらを見せてくれ」
「ほほーい」
なるほど。そういやあんまり人見ないな。
「とまぁざっとこんな感じです」
「相変わらずデタラメね」
「ハルキ君はほんと凄いな」
地下訓練場に移動し誰も居なかったので、幅いっぱいにサクッと温水プールを作り出した。なに軽い軽い。
「ハルキさんは人なんです?」
「いや人のはずですが何に見えます?」
「そうですね、人の皮を被った非常識でしょうか?」
「あー残念だなぁ。俺今生チョコ持ってるのに残念だなぁ。あー残念」
「何が残念なんです? 良く分かりませんが早く私にください」
「俺非常識だからメアリーさんが何言ってるんだが良く分かりません! そうだ! これは許可をくださったギルド長に差し上げます!」
折角こんな時分にリザの水着姿を拝める機会ができた感謝に進呈しようと思ったが、人外扱いされたのでおこである。ぷんぷん!
「おーこんなにすまんなハルキ君。これは有難く頂戴するよ。今日はこれでウィスキーを頂くとしようか」
「な!? 3つも!?」
「ご家族の分もですからこれ位普通でしょ?」
「私に1つくれても良いじゃないですか。この人でなし!」
「俺、人の皮を被った非常識らしいので人じゃないらしいですよ?」
「うぎゃーーー!! 出せ! 生チョコーーー!」
「はっはっは。俺の体をゆすったって出てはこないですよメアリーさん。はっはっは」
遂にメアリーさんがキレた。だからって俺を激しくゆするのはやめて欲しい。そんな事をしても俺の収納からは出てこないから。
「ハルキ、その位で許してあげたら? ハルキがおかしいのは本当の事だし」
「まぁリザがそう言うならあげますか」
「流石私の親友。頼りになる!」
「黙れ悪友! その代わり私への報酬は弾んでもらうわよ!」
「えっとそこはギルド長と応相談で」
「そうだな。取り敢えずはメアリーのボーナスから引いておくか」
「ちょっとぉぉおおお!!? ギルド長!!??」
「「ざまぁ!!」」
リザの一言で生チョコをあげたがボーナスは飛ぶようである。うひゃひゃひゃ。
「冗談だメアリー、そんな顔をするな。じゃ私達はこれから人を集めてハルキ君のこれを生かせるように会議をするぞ」
「わかりましたギルド長。あと本当に冗談ですよね?」
「はっはっはー」
「ギルド長?」
「ではそういうわけだから私達は失礼するよ。ハルキ君、生チョコは家族で有難く頂かせて貰うよ」
「あの? ギルド長…? え?」
メアリーさんの問いに答えずギルド長は去っていった。それに続いてメアリーさんも後を追って行くが果たしてボーナスの行方はいかに?
「んじゃ俺達は適当にご飯食べて帰るか」
「そうね。あと私にも生チョコ頂戴」
「帰ったらな」
「約束だからね! 指切り!」
そんな事しなくてもちゃんとあげるが、リザに指切りさせられた。しかしリザの手はちっちゃくて細くて可愛い。




