南国風ギルド。
「ハルキー。トロピカルパフェー」
「ハルキさんこっちも! あと焼きそば2つ!」
「うっせー! 何故俺が働かねばならん! おらよ焼きそばだ!」
「人手が居ないからです!」
「んなこたぁ知ってら! 俺意外を雇え!」
温水プールを作る簡単なお仕事だったはずだが俺は厨房に居た。地下訓練場の温水プールで利用料を取り、その客はギルドで飲食でさらにお金を落とす。そんな循環の中、俺は前もって大量に仕込まれた焼きそばを収納から盛り付けて渡し、メアリーさんに愚痴る。他にも色々と仕込んだものが実は大量搬入されている。他のスタッフは明日のための仕込みに集中し、盛り付け担当の俺がすべてを収納から1人で行うというブラック職場だ。
そんな感じのギルド店内は期間限定で南国風に模様替えされていた。若い女性職員は皆水着姿で腰にはパレオを巻いている。もちろんリザもだ。今日も可愛い。
「ハルキー。トビウオのヒレ煎餅。あとなめろう」
「それメニューに表記すらして無いだろ! 断ってこい! つか誰だ!?」
「え? うちのお父さん」
「おっちゃんかよ!!? 仕方がねぇな、ほらよ」
「ありがとうハルキ。なんか評判だから来たみたいよ。1杯飲んだら帰るみたい」
正直盛況過ぎるし、家でローナさんの美味しいご飯を食べながらのんびり晩酌するほうが休まるだろう。泳ぐわけでもないしな。水着のお姉さんを見たかっただけかもしれんが。
「今日も1日がんばるぞい!」
「がんばるぞい!」
「さぁ今日もきりきり働いてくださいねぇー」
「メアリーさんのボーナスを俺達の手に!」
「私達の手に!」
メアリーさんのボーナスを強奪するため画策する。
「なに言ってやがりますか! 私のボーナスは私の物ですよ! ちゃんと2人には報酬出してるでしょう!」
「リザは兎も角、俺は割に合わんが?」
「売上の1割ですよ! 十分でしょうが!!?」
「俺が本気出したらダンジョンでも稼げるが?」
「ダンジョンを荒らすのは感心しませんよハルキさん」
俺が居ないとこのイベント自体が成り立たない。そのかわり報酬は出来高の売り上げ1割になっていたが。
「私もダンジョンの方が儲かるわ。帰ろうかしら?」
「普通は儲からないんですよ!」
まぁ俺達はおかしいからな。それと今回追加で女性限定でホールに人が雇われていたが厨房は変わらん。水着の分だけ報酬が良いらしい。まぁ働くか。今日が最終日だしな。
「ハ、ハルキ。えっととりあえずヒレ煎餅となめろう2つずつ」
「ん? どうかしたのか? というかおっちゃんまた来たのか」
「そうだけどちょっと違うの。耳かして」
リザが俺の耳元でコソコソ小声で話してくる。
「え、マジで?」
「マジよ、大マジよ」
ホールを覗くと確かにいる。
「何で王様がおっちゃんといるんだ?」
「席が無かったから偶々相席になったのよ」
「なんか仲良さげだが?」
「私達という共通の話題があるから…。どうしよう…」
「どうしようも何も俺は離れられないし、とりあえずこれ持って探りを入れてこい」
「おーけー」
俺は注文の品をリザに渡す。まぁどうせ暇だから来たんだろ。王様案外フットワーク軽いし。
「ハルキ! ミルダとスーンさんも居た! あとトロピカルジャンボパフェ」
「あいよ。んで何だったんだ?」
「明日家に来るって」
「そうかわかった」
リザが戻ってきたらこれだ。というか王様と姫さんいるなら今いる客の大半は王様の護衛関係じゃなかろうか? まぁ売り上げになるなら良いか。
「良しリザ、大半が王様関係者だろうし、じゃんじゃん注文取って売りつけてこい!」
「オッケー!!」
リザは元気良くホールへど戻っていった。うははははは! 最後に鴨がネギしょってやって来たぜ! どうせ盛り付けなど収納から出すだけで終わるし在庫売りつけてやる!
「皆、お疲れさま。さぁ堅苦しい挨拶は無しだ。乾杯!!」
「「「「「「かんぱーい!!!」」」」」」
南国イベントが無事に終わりそのままギルドで打ち上げだ。余った料理を好き勝手食べて、温水プールは職員の貸し切りだ!
「そういえば俺に搬入した料理どうしますか?」
「打ち上げで余ったら持って帰っていいぞ。追加報酬だ」
「どうせなら現金でくださいよ」
「ではメアリーのボーナスを追加で」
「なに言ってますかギルド長!! ご自分のボーナスでも渡してください!!!」
「そんなことしたら私は家に帰れなくなってしまう!」
ギルドでは偉いギルド長と言えども、家での立場は奥さんに負けるらしい。世知辛い事だ。
ピンポーン
「はいはーい」
ピピピピピピピンポーン!
「うっせー! 連打すんな!!」
「ようハルキ! 遊びに来た! 取り敢えずビールと昨日のなめろうな」
「私はシャンパンとリザをお願いします」
「あの…私はパフェをお願いします」
案の定扉を開けると昨日来ると言っていた王様達が居た。まぁこんな事をするのは王様くらいしかいない。
「いや家、大衆居酒屋じゃないんで、帰れ」
そして俺は扉を閉める。
ピピピピーピッピッピピッピピーンポン
「うっせー変なリズムとんな!」
「ハルキが閉めるからだろ」
「そうですよ失礼な人ですね!」
「すいません。調子乗りました」
「まぁ入んな。ブツは奥だ」
こうして王様達を招き入れる。
「なるほどいいブツだ」
「だろ?」
うるさかった姫さんだが、リクエスト通りご所望のシャンパンとリザを提供すると静かになった。
「あぁうちのお嬢達のあの顔を見ればわかる」
「報酬のほうは頼むぜ」
「あぁ任せとけ」
「それなんです?」
「「マフィアごっこ」」
俺と王様はマフィアごっこを唐突に開催した。姫さんはシャンパン片手にリザを侍らし、スーンさんはパフェをご賞味中だ。王様にもビールとなめろうを出している。気に入ったのか?
「んで何しにきたん?」
「いや王都でもギルドの温水プールが噂になってな。直接見に来た」
「あれ良いですね。スーンも泳ぐ練習できますし」
「お陰で私も少しは泳げるようになりました」
「それは何よりです」
「っつ訳で城でもいっちょ頼むわ!」
「まぁ良いが。報酬の方は頼むぜ」
「あぁ任せとけ」
「あ、またそれ始めるんですね」
話は即座にまとまり、王様達は我が物顔であれやこれと好き勝手に注文していく。いやここは居酒屋じゃ無いんだが? まぁリザも久しぶりに姫さんとスーンさんに会えて楽しそうだし、いつもは俺が城でそうだし、昨日ギルドで余った料理貰ってるから良いか。
そして夜にはおっちゃん達も加わり無礼講となった。




