刺身。
「ハルキさんもお刺身食べますか?」
「遠慮しなくて良いぞ」
「そっすよハルキさん。ささどうぞ」
「ハルキ君食べないと損だぞ。なに、明日は釣れるさ」
海に来て2日程経ったが、実は俺は1匹も魚が釣れていない。ビギナーズラックとは都市伝説だったのか?
「食べる…」
ここは釣った魚を持ち込みOKのお店だが、結局釣れない俺は皆からのご相伴なる。初日に自分で釣った魚の刺身を食うと息巻いていたのにこの様だ。過去に行って殴ってやりたい。
「美味しい!! 畜生全部食ってやる!!」
「やめーい! 遠慮しろ!」
「遠慮しなくて良いって言った!」
「言葉の文だろ!! そもそも全部食って良いって意味じゃねぇ!!」
「うがー!!」
俺はバルドさんの苦情をものともせずに刺身を全部食べる事に成功した。腹は膨れたがしかしなんとも空しい。
「本当に全部食いやがった!」
「まぁまぁバルド。僕達の分けてやるしあんまり怒るな。ハルキ君はまだ1匹も釣れてないんだからな。荒むのも仕方が無いさ。それに僕達の魚はまだまだあるしな!」
「まぁそうだな。一皿位どうって事無いな」
「うがーー!!」
「うわ! またハルキさんが暴れだした!」
「ロイド君止めろ!」
「ういっす!」
バルドさんの挑発に俺は全ての刺身を食らい尽くそうとしたが、ロイド君に羽交い絞めにされた。
「畜生! 明日こそ目にもの見せてくれるわ!!」
「ふっ」
「鼻で笑ったな! そうだ! 海にメテオ撃ち込んで魚を気絶させれば!」
「それは釣りじゃねぇ!!」
「ハルキ君。それは石打漁だ!」
「ハルキさん落ち着いてください!」
「そっすよ。楽しく釣りしましょう! 釣り!」
「は!? いやもういっそ海を俺の異次元収納で収納してしまえば魚取り放題なのでは!!?」
「すまん! 俺が悪かった! 笑ってすまん! 謝るからそんな恐ろしいことはやめろ!」
俺の次第に過激になる漁法の発想の末、バルドさんは慌てて謝りだした。しかし我ながらナイスアイディアではなかろうか?
「本当に出来そうなのが恐ろしいな…」
「あぁ。からかうのも世界が掛かって来るな」
「ハルキさんぱねっす」
「世界を手中にしたハンター…」
世界は要らん。魚をくれ!
「よっしゃー!! 今日こそは釣るぞ!! メテオ撃っていいすか?」
「こら大声出すな。他の釣り人に迷惑だろうが。あと撃つな」
「えぇー? ちょっと、ちょっとだけなら?」
「ちゃんと釣りしろ、釣り。じゃ今日も各自好きに釣りってことで散開!」
初日は初心者の俺の指導の為に皆で一緒に釣りをしていたが、2日目からは各々好きなスポットで釣り始めた。ちなみに弁当持参なので夕方まで戻ってこない。
俺はというとこの2日、ずっと浜辺から投げ釣りをしていたが釣れやしねぇ。
「沖行くか…」
おもむろに空飛ぶ絨毯を取り出し沖に向かう。沖だ、沖に行けばきっと釣れる。俺はリザに大物を釣ってくると約束したんだ。
「やっぱ釣れん…」
昼飯を食いながらぼやく。朝から一向に釣れやしない。どこかに爆釣の魔法のルアーでも売っていないものか。金ならある!! そんなアホな事を考えながらデカい魚が跳ねているのが目につく。馬鹿にしてんのか? メテオ撃ち込むぞ此畜生が!!
「ん? なんだあれ?」
さらに釣りを続けていたが、遠くから海面を何かが猛スピードで飛んでくるのに気づいた。目を凝らしながらよく見と多分トビウオの群れだろう。飛んでるし。ただし大きさが1メートルほどあるがそれが大群で俺に突貫してくる。轢き殺す気か!
「『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』『メテオ』―」
そんな事は許さん。俺は群れを回避しながらメテオで次々と撃ち落としていくが、いかせん手数が足りない。そもそもメテオは範囲魔法じゃないのか? おかしくね?
「うひゃひゃひゃひゃ。大漁大漁」
手数が足りないと言っても撃てば当たる即死魔法のメテオである。俺はホクホク顔で海面に浮かぶ大漁のトビウオを回収していく。手数が足りないので撃ち漏らしが大量に飛んで逃げていってるが見逃してやろう。ふっ、またつまらんものを撃ち落としてしまった。しかしこれでリザにお土産できたしよかよか。
「ギャーーーーーーーーーー!!! 死ぬ!!!」
俺がトビウオを回収していたら突然海中から大口を開けて、牙をむき出しに白い何かが飛び出してきた。俺は寸での所でそれを回避した。しかしこいつは牙をガキンガキン鳴らしながらさらに襲ってくる。
「ギャーーーーー!! 助けてーー!! って叫んでる場合じゃ無ぇ!!! 『メテオ!!』」
余りの驚きに叫びながら逃げていたが俺にはメテオがあった。
「はぁ…はぁ…。なんだコイツ?」
息を整えながら倒された白い巨体を観察する。体長は20メートルはあろうかという白い竜? ふむリヴァイアサンか! きっとコイツはリヴァイアサンに違いない! 遂に神が俺へテコ入れを開始したか!?
そんな事を考えながらリヴァイアサン(仮)を収納して浜辺に戻った。
「ちゃっす!」
「お? 笑顔だね。もしかして釣れたのかい?」
「えぇ。大漁っす」
「ほほう。どれ見せてみろ」
「何釣ったんすか!?」
「所でハルキさん何処で釣ってたんです?」
「ちょっと沖でな。まぁ見てくれ!」
笑顔で戻った俺に皆が出迎えてくれた。既に日が傾いて来ていたので戻って来ていたのだろう。先ずはでっかいトビウオを1匹取り出す。
「これっす」
「これは…」
「ほう…」
「デカいっすね!」
「凄いじゃないですか!」
ふふふ。みんな驚きを隠せないようだな。
「所でハルキ君。これ本当に釣った?」
「頭に打撃痕があるな」
「あ、ほんとだ」
「あれ? そっすね?」
疑惑の目が俺に向けられるが何故皆そんな目で俺を見る?
「実は沖で釣ってたら群れに襲われました」
「まぁそれなら仕方が無いか」
「そうだな」
「仕方が無いっすね」
「そうですね」
即座に釣ってないことがバレてしまった。仕方がないので真相を話す。
「群れという事は大量に?」
「えぇ大漁です。あとこんなんも倒しました」
満を持してリヴァイアサン(仮)を取り出す。ふふふ。驚くが良い!
「おぉーこれは大物だな!」
「おぉ良いもの釣って来たな。いや捕って来たのか」
「僕これ食べた事無いんですよね」
「何人分蒲焼き出来るんすかね!!?」
「あれ? 皆これ何か知ってるんです?」
「「「「シーサーペント」」」」
いまいち俺の思っていた反応と違い聞くと、リヴァイアサン(仮)は竜どころか蛇だった。ぇー? こんなにデカいのにこれ蛇なの? あと美味いらしい。まぁ美味いなら良いか。




