ベヒモスの双剣。
「ちゃーす」
「おーあんちゃんか。出来てるぞ。嬢ちゃんは一緒じゃないのか?」
「リザは女子会っす」
「そうか」
リザへの伝言はウィルさん達に任せ、俺は双剣を受け取りに王都の贔屓の鍛冶屋にやって来た。まぁ贔屓と言ってもここ以外知らんが。昨日言ってた用事とはこれだ。
「これだ。受け取れ」
俺は剣鉈とベヒモスの双剣を受け取り、双剣を早速鞘から抜いてみる。イカス。刀身が黒銀の輝きを放って俺を魅了する。オリハルコンの剣鉈はデザインが地味だったしな。まぁ鉈にデザイン性を求めるのも間違ってる気がするが。
「おっちゃんイカスな! かっちょいい!」
「まだだ、まだ喜ぶのは早いぜあんちゃん…」
「ん?」
「魔力だ…、魔力を流すんだ…」
なんか今日はおっちゃんが普段と違う。何かを拗らせたか? 取り敢えず言われた通りに魔力を流してみる。
「なん…だと…?」
「どうだ、凄いだろ?」
すると刀身に赤い模様浮かび光りだした。黒銀の刀身が赤く帯、さながら魔剣の雰囲気だ。ミスリルは魔力で青く輝いたがベヒモスは赤く輝くらしい。
「これが…ベヒモスの角の輝き…」
「スペシャルと言っただろう…? まぁ赤く光るのは俺の趣味だがな。本来は光らん」
「なん…だと…?」
赤く光る双剣に感嘆を漏らすが、おっちゃんが普段の口調に戻り趣味で光らしたと暴露に驚きである。
「嬢ちゃん剣がミスリルで青かったからな、赤く光るようにしといた。なに、礼は要らん。ただ赤く光るだけでなんも効果無いしな」
しかもただ光るだけらしい。課金エフェクトか! まぁカッコいいから俺的にはなんも問題ないしお礼を言う。
「そうか。まぁサンクス」
「なに良いって事よ。おっとそれとこれも持ってけ。サービスだ」
おっちゃんがさらに双剣を2組み渡してきた。
「ん? これは?」
「訓練する時はそれ使え。下手に打ち合って刃が傷んでもつまらんしな」
「なるほど。でも良いのか? 普通にお金払うぞ?」
「いいてことよ。不良在庫のベヒモス買ってくれたしな。それに只の訓練用で安もんだしな」
なんとベヒモスの角は不良在庫だったらしい。まぁミスリルも高いし、それ以上となると売れないのも分かるが。
改めておっちゃんにお礼を言ってから、王都を少し散策してグラムの街へと帰った。久しぶりに王様達にも会っていこうかと思ったが、リザが居ないし文句言われそうだからやめといた。
「ただまー」
「おかえりー」
家に帰るとリザが本片手に寛いでいる。まぁ既に夕方だし帰っていても不思議じゃない。
「明日から釣り行くんですって?」
「おー。ちゃんと聞いたか。リザはどうする?」
「イリーナさん達もリリィちゃんも興味ないみたいで行かないし、私も遠慮するわ」
「そっかー。大物釣って来るから楽しみにしてろよ!」
「はいはーい。釣れると良いわねー」
意気込む俺に何とも気のない返事が返ってきた。
「そういやイリーナさん達からのプレゼントって何だったんだ?」
「秘密」
「いや秘密って教えてくれよ」
「教えませーん」
「いや取って食わんし良いじゃん」
「すけべー」
読んでいた本で顔を隠しながらまるで教えてくれる気配がない。しかもスケベとまで言われてしまった。ぐぬぬ。さては余程美味いワインか何かを貰ったに違いない。
「そうそうハルキ。明日朝5時に街門前に集合ですって。ウィルさんに伝言頼まれた」
「おぅそうか。サンキューリザ。朝5時か流石釣りは朝が早いな」
「朝早いし、私は寝てるから見送らないわよ」
「わーお。まぁ起こすのも悪いしぐっすり安眠しててくれ」
「おはよーございまーす」
「おはようっす」
「おはようございます」
「おう、おはよう」
「ハルキ君おはよう」
約束の時間に遅れないように早めに来たんだが、俺が一番遅かったみたいだ。時計を確認してみたがまだ5時前だし遅れた訳じゃない。
「それじゃ荷物を頼むよ」
「アイアイサー」
皆の荷物を収納し、空飛ぶ絨毯に乗り込みいざ行かん!
「所で湖ってどっちです?」
「ん? あれ? リザさんから聞いてない?」
「はい?」
湖の場所を知らないのでウィルさんに訪ねたが、何か様子が変だ。
「いや今日から泊りがけで海釣り行くんだよ」
「え? 湖じゃなくて?」
「聞いてなかったんですね」
「時間しか聞いてないな」
「まぁそんな訳だからよろしくな、ハルキ君」
俺はてっきりウィルさん達が釣ってた近くにあるらしい湖で釣りをすると思っていたが、今から泊りがけで海に行くらしい。どうやら昨日の準備中にどうせなら海行こうぜ! っとなったらしい。まぁ構わんが。
「まさか今日中に目的地の港街に着いてしまうとは…。凄いなハルキ君。速くても2日は掛かると思っていたんが」
「ちょっと本気出しました」
「そもそも普通は馬車で5日、6日掛かるんだが…? 恐ろしい速さだな」
「前より速くなってますよね?」
「そのうち1日で世界1周とかしそうっすね」
余りの速さに皆困惑している。俺の本気を甘く見たな。そして流石に1日で世界1周は無理だから。多分。
「じゃ取り敢えず今日はもう遅いし、適当にそこらで食事にしようか。ハルキ君疲れただろ、今日は奢りだから好きな物食べていいからね」
「あざっす!」
既に日が落ち暗くなっていたので、適当に目についたお店で夕飯を済ませることになった。俺の分はウィルさん達の奢りだ。長時間運転手の役得というヤツだ。
メニューを見ると港町だけあってやはりメインは魚料理だ。焼き、蒸し、揚げにお刺身まである。正直悩むが…君に決めた!
「俺は焼き魚でお願いします」
「ん? 良いのかい? 折角だし新鮮なお刺身もあるよ?」
「お刺身は明日自分で釣って食べます!」
「そうだ。その意気込みだぞハルキ君」
「ハルキさん気合十分っすね」
「なら僕もお刺身はやめてあえて蒸し料理でいきますか」
「なら俺は揚げか!」
「まぁ僕はお刺身食べるけどね」
「まぁ俺もだけどな」
俺の考えにロイ君、ロイド君も刺身を避けたというのに、ウィルさんは刺身を注文し、バルドさんも意気込みとか言いながら普通に刺身を注文した。おい!!




