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question episode 006 消えていく過去

成功すればするほど記憶は薄れる。


複数のインタビューを調べ、悠真は法則ぽいものをみつける。


転送されてすぐの頃「以前に何かあった気がする」と語る。夢の中に知らない風景が現れるという者がいた。聞いたことない名前を誰かに呼ばれたような感覚がある。という者もいた。


 やがて感覚と記憶は薄れていき、新しい役割に没頭し、新しい人間関係が生まれ新しい記憶が積み重なる、以前の自分は遠くになりつつある。



 悠真はその現実に残酷を感じ、でも同時に自問自答した。本当に残酷なのか?と・・・。

人は誰でも過去を少しずつ忘れていく。子供の頃の記憶は薄れかつての自分とは違う自分になっていく。

そーゆー変化と似ていると思うのだった。


確かなことは記憶を失っても、その人の『幹』は残るということだ。



悠真は蒼汰【中田陽菜】に会いに行くことにした。

診療所は山を越えた、二つ先の小さな集落に位置していた。バスを乗り継いで、3~4時間。古びた建物の前に立った時、不思議な胸騒ぎに襲われた。


 診療時間に合わせて訪れると待合室には高齢の患者が数人待っていた。

白衣を着た彼女が歩いてきた。蒼汰が男性だった頃の面影は、どこにもない。でも、歩き方がそっくりだった。


悠真は受付で"胃の調子が悪い"といって診察を申し込んだ。診察で向かい合った時医師は穏やかな顔だった。

問診表に記入しながら、悠真はさりげなく、何気なく『・・・蒼汰』と声にならない息の声で囁いた。

 

 医師の手は一瞬止まった。彼女は何も言わなかった。


悠真は泣きそうになるのを堪えた。診察が終わり医師は「お大事に」とだけ言った。もちろん蒼汰の声ではない。


診療所を出て、しばらく道の端でぼんやりとしていた。

山の空気は、頬に冷たく触れたように感じた。


これでよかったのかもしれないと、思った。







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