第7話・これからの生活のために
ギルベルト・ガンドールたちは、一部の国民を連れて、無事に魔の森を抜け、目的の滅びた村へとたどり着いていた。
村の建物は壊され、屋根の残っている建物は全くなかった。
こんなところで本当に生活していけるのだろうかと、ギルベルトについてきた国民たちは心配をしたが、傭兵たちは周りを確認し、廃墟を片づけ、一緒に来た国民たちが休めるように、テントを張っていく。
それを見ていた国民たちも、少しずつ自分にできる事を始めた。
水の確保は、すぐにできた。魔物に襲われた村は、穢れているのではないかと思われていたが、近くを流れる小川の水は清らかで、村にある井戸も澄んだまま、枯れてはいなかった。
食料は、王都オフレンドを出る前に調達したものの他、魔の森を抜ける時に魔物を倒した際の肉があった。
傭兵たちは魔物の肉を手早く処理すると、調理して国民たちに振舞い、 王都ではあまり魔物の肉は出回らないため、国民たちはとても喜んだ。
「ギルベルトさん、チェスターくん、他のみなさんも、本当にありがとう」
食事の後、代表して傭兵たちに礼を言ったのは、宿屋の女将であるパメラだった。
老人や子供たちは、傭兵たちが張ってくれたテントに入ると、疲れていたのだろう、すでに眠ってしまっている。
今も、傭兵たちは魔物の襲撃がないか、交代で見張りをしてくれていた。
最初は不安に感じていた国民たちだったが、傭兵たちの至れり尽くせりの対応に、本当に感謝していた。
「私たちを連れての移動は、大変だったでしょう。だけど、誰も怪我をせずに、ここまで来る事ができました。本当にありがとうございます」
パメラの言葉に、ギルベルトは首を横に振った。
「王都オフレンドを出たはいいが、これで良かったのかと迷っていた者ばかりだと思う。今回の事は、私たちがオウンドーラを見限った事が原因だ。できる限りの事をさせてもらうつもりだ」
ギルベルトの言葉に、他の傭兵たちも頷いた。
「まずは、ここで暮らせるようにしていかなきゃですよね」
ノートとペンを持ち言ったのは、チェスターだった。
「俺たち傭兵は力自慢の集まりですから、力仕事は任せてください。あと、魔物からここを守る警備の方もね。水の確保はできたし、食料はそのへんで魔物を狩ればいい。ここに村を作るための資材は、魔の森から調達すりゃいいでしょう」
「じゃあ、私は女たちをまとめて、みんながおなかいっぱいになって元気に動けるように、食事を用意するよ! あと、過ごしやすい寝床もね!」
明るい声と笑顔でそう言ったのは、パメラだった。
彼女の明るい声につられたかのように、商人たちが手を挙げる。
「では、その他の足りない資材や食料、生活に必要な物の調達は、私に担当させてください」
「そうだ、私たち商人が、ここでの生活に困らないように、いろいろと用意します!」
「みんなでここに、私たちの新しい居場所を作りましょう!」
パメラや商人たちの言葉に、ギルベルトたち傭兵は驚いたが、パメラや商人たちはどんどん話を進めていった。
そんな彼らを見ながら、ギルベルトたち傭兵は思う。
人は、強い。
だから、自分たちもできるだけの事をしよう、と。
「じゃあ、小麦粉をたくさん仕入れて来ておくれ。パンを焼かなきゃいけないからね」
「わかりました。あと、調味料なども見てきますね。それから、毛布やいろんな雑貨類も仕入れてきましょう」
「あぁ、そうだね。よろしく頼むよ!」
「でも、お金が……商品を仕入れるための金が……。王都オフレンドから全て持ち出せなかったからなぁ」
先立つものがなければ、何も買う事ができない。
今ある分を全てかき集めればどうだという話を始めた商人たちに、
「じゃあ、これを使うといい」
と、金貨がぎっしりつまった革袋を渡したのは、ギルベルトの右腕でもあるダンカン・ダウソンだった。
彼は金貨のつまった革袋をあと二つ取り出すと、
「オウンドーラ王から報酬として受け取っても、使えるところに行かないんだから、貯まる一方さ。遠慮なく使ってくれ」
と言って笑った。
「あと、魔物を倒した時の素材がある。量があるから、それなりの金額になるだろう。それに、魔石や魔結晶も持って行くといい」
魔物たちから取れる素材や、倒した時にドロップする魔石や魔結晶は、高値で取引されているものがある。
ダンカンはそれを惜しげもなく提供した。
「おお、すごい! でも、いいんですか?」
「あぁ、構わない。今後の暮らしに使ってくれ。なぁ、ギルベルト、ビル」
ダンカンの言葉に、ギルベルトもビル・ヒドルスも頷いた。
「では、商品を仕入れに行く時に、私も同行して良いだろうか? 医療関係の道具を揃えたいんだ。あと、このあたりでは手に入らない薬草も欲しい」
医者であるビル・ヒドルスの言葉に、誰もが頷いた。
これから生活していく場に医者が居るのは、とても心強い。
「ギルベルトさん、ダンカンさん、ビルさん、チェスターくん、傭兵のみなさん、本当にありがとう!」
代表して、またパメラが礼を言った。そして彼女は、
「ねぇ、ギルベルトさん、お願いがあるんだ」
と、続ける。
「なんだ? 先程も言ったが、私にできる事なら、できる限りの事はさせてもらおう」
ギルベルトの了承を得たパメラは嬉しそうに笑うと、言った。
「ギルベルト・ガンドール、私はあなたに、ここが村なら、村長に、ここが国なら国王に……私たちの新しいリーダーになってほしいんだ!」
ギルベルトはパメラの言葉に驚いたが、静かに首を横に振った。
「いや、駄目だ」
「何故!」
「それは……とにかく、申し訳ないが、私は駄目だ。他を当たってくれ」
ギルベルトはそれだけ言うと黙り込み、立ち去った。




