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奴隷宰相 リュカと東国のジャングル探検編  作者: 近衛翡翠


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急報

東国のジャングルを旅して、珍しい植物を知るリュカ一行は、一度アミ族の集落へ戻ることにした。ここで採れる植物は貴族層や帝国の資源になる。アミ族の人々は、宴会の準備をしていた。

グラン・チェレビジェを用いたお酒を用意し、食べ物はバナナの葉の器に盛り付ける。主な食べ物は、木の実や魚、それに狩猟で獲ったというイノシシやシカといった大型動物だ。ウサギなどの小型動物を罠で捕らえる場合もあるそうだが、今日は捕まらなかったらしい。大型動物の狩猟は、主に人が撃つ弓矢で行うそうだ。


「今日はあなた方が来た。ゆえに、宴会を行う。」とティヤマカンさんが言う。

「歓迎ありがとうございます。」とリュカがお礼を言う。

「我々にも訪問客は珍しくてな。外部の話をしてやってはくれぬか。」

「かしこまりました。」ということなので、僕達は首都・リンベルでの何気ない日常と、日々追われている政務について話した。

「カトゥル帝国ではどのような草花が生えているのですか。」と、頻りに聞かれるので、僕らはパンジーとか、バラとか、桜とかが庭に植わっていて、春には見事な庭園美を織りなすことを伝えると、彼らは恍惚の目をしていた。


「じゃあ、カナイマの地では、様々な珍しい植物を採集して首都に送ってくれませんか?」とホンテさんに頼んでみる。

「もちろんかまわないが、われわれとしてもただでやるわけにはいかない。」

「もちろん相当の代価はお金でお支払いします。」

「それだけでなく…」

「?」

なんだろう。食糧とかかな。と思ったら、違ったようだ。

「カナイマの地に生息する動植物の採集権を、一手に引き受けたいんだ。」とホンテさん。

「入会権(いりあいけん)を認めてほしいということですね。もちろんかまいません。」「リュカ君!」とリルが忠告に来る。

「いいの?他の部族が、カナイマの地に入ってきたらどうするの?」

「そのときは、また別に考えよう。」とリュカ。

「はあ、知らないよ…」

翌日、首都から手紙が来た。手紙には勅封がしてあるため、テレサ女帝が発したものかなと思った。

「なんだろう。」と、単なる安否確認かと思ったら、もっと重大だった。

「帝が危篤?!すぐ帰れ?」

「お母さまが!?」

リュカ、リル、リゼ、マリー、ヘレナ、クシイナダは、大変なことになったとすぐに協議を始める。


***************************


「すぐに、帝都に帰ろう。」とリュカ。

「リゼ殿下には、ぜひ帝に会わせてあげたい。」

「そうね…」とリルは言葉を飲み込んだ。

「これが最後の出会いということもあり得ますからね。」とクシイナダが場の空気も考えずにズバッという。

「ちょっと、空気を読みなさいよ!」とヘレナ。

「まあまあ、ヘレナ。でも、クシイナダの言うことももっともだし。どうします殿下?」とマリー。

「わたしは、リュカの巡回に付き添いたい。」とリゼ。「でも、お母様のことも心配だわ。」

「ちょいと見せてみろ。」とホンテさんは、手紙をリゼから取り上げた。

「何をするんですか?!」とリゼが叫ぶ。

「いましばらく、黙ってろ。」

とホンテさんは、帝の容態を記した長文にわたる手紙の読解を始める。

「ホンテさん。ユニマルの文字が読めるのですか?」と、しばらく経ってリュカが問う。

「ああ、父が侍医として首都に勤務していた時期があってな。これは帝都の医師なら知っている可能性がある。ただ、この地域で採れるのが、最高品質のものだ。」

「そうなのですね。それで何かわかりましたか?」

「ああ。アカハナノキを持っていくといい。」

「アカハナノキ?」「蚊から伝染する病「おこり」に対する特効薬だ。」


「「おこり?」って、沼からの瘴気にやられるあの病気?」とヘレナ。

「とお前たち、ユニマルではそういうのだな。でも違う。あれは、小さい虫から伝染するんだ。」とホンテさん。

「それで、アカハナノキというのは、どこに生えているのですか?」とマリー。

「この辺りに、生えていることは生えているが、残念ながらあまり見つからない。」とホンテさん。

「少し遠くまで散策してもいいか。」

「もちろん構いません。」とリュカ。

***************************


そうして、幾時間歩いたことだろうか。すっかり日が暮れた頃になって、ホンテさんがアカハナノキを見つけた。これを持って帰れば、良いだけだ。ところが、帰り道が暗くてわからない。方位磁石もなぜか様々な位置を指しているために、役に立たない。

「なんで~?!」とマリーが焦る。

「まずいよ。このままじゃ帰れないかも」とリル。


陽が沈むと、ジャングルの様子は一変した。昼間よりもむしろ賑やかになる。遠くでは、獣の低い唸り声が響き、木々の上では得体のしれない鳥が甲高く鳴いている。闇の中では無数の虫が光り、まるで星空のようだった。しかし、その美しさとは裏腹に、空気はどこか不気味な緊張が漂っている。

「夜のジャングルは、昼より危険だ。」ホンテが静かに言った。「外で寝るのはお勧めしない。」


そんな中、雨が降ってきた。泣きっ面に蜂である。ホンテさん曰く、熱帯雨林では、しばしば多量の雨が降るということだ。

僕達は、たまたまあった洞窟で雨宿りすることにした。急いで焚火を起こす。

「とりあえず、服を乾かそう」とリュカ「リュカ君…」「うん?どうしたの?」

「私たち恥ずかしいから…あまり見ないで…」

リュカは失念していた。彼女たちはリュカにとって異性なのだ。

「ご、ごめん!」ということで、リュカは洞窟の奥に分けてもらった火を持って行って、一人で過ごすことにした。洞窟の入口の方には、女性陣が焚火を囲んでいる。


「なあ、お前たちはリュカに惚れているのか?」とホンテ。

「うーん。惚れてるというより、普段から一緒に過ごしてるから、弟ってイメージが強いですかね。」とリル。

「よく熱心に図書館で本を読む姿が憧れますね。」とマリー。

「それは惚れてるのでは?私も小さい頃から一緒に遊んでいるから、リルと同じく双子の弟がいる気持ちかなぁ。」

「3人ともいいですね。わたしは、会った日が浅いから、あまりわかりません。」とクシイナダ。

そんな女子トークがリュカの耳にも届いていた。なんだか、こしょばゆい気持ちだ。


***************************


次の朝は快晴だったので、急いで狼煙を焚く。そうすると、パンチさんが心配したらしく、迎えに来てくれた。

「おお!リゼ、リュカ殿、皆よくぞ無事で!」

「パンチ殿、出迎えありがとうございます。帝の危篤にあたり、特効薬となる薬草を持って参りました。」

「そうなのか!ますます、リュカ殿には頭が上がらないな‥‥」

「それより、早く帰りましょう!」

「まあ待て。先の大雨により、カナイマからリンベルに帰る道が悪路と化しているのだ。このままでは泥濘(ぬかるみ)で通行できない。」

「そんな…」と泣き崩れるリゼ。

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