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奴隷宰相 リュカと東国のジャングル探検編  作者: 近衛翡翠


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任命

首都リンベルに急ぐリュカ一行。途中、豪雨に見舞われた。道はぬかるみ、車馬は通行が困難だ。

「お母様に早くこのアカハナノキを届けないと…」とリゼ。

「どこか迂回できる道はないの?」とリル。

「あることにはあるが…」とホンテさんが提案したのは、川下りのコースだった。「急な豪雨で水嵩も増し、水流も激しくなっているから、とても危険だ。」


「でも、虎穴に入らずんば虎子を得ず。って言うし…」とヘレナ。

「しかし、お前たちの命や、この薬草を失うわけにはいかない。」とホンテさん。

「それでは、これに乗るのはいかがでしょう?」とクシイナダが提案したのは、なんとタツノオトシ号に乗っていくことだった。

「どうしてこれが?」

「こんな時もあろうかと。タツノオトシ号の小型版を、持ってきていたのです。」

「ありがとう!」とリュカは、クシイナダに抱きつく。クシイナダは、頬まで真っ赤に染めている。

「ささ、乗ってください!行きますよ!」


こうして、首都リンベルに一直線、河川を下っていくことにした。東国の河川は、移動の大動脈であり、いくつもの幹線からなる。つまり幸いにも太い水路が多いため、移動に困ることはなかった。


こうして、首都リンベルの王宮・スンサーン宮殿に戻ってきたリュカ一行。すぐさま、アカハナノキを献上する。西国のレモンと共に煮出したものを濾せば、マラリアの特効薬・キニーネの出来上がりだ。


***************************


3日後、恢復したテレサ女帝に謁見したリュカ。

「よくぞ戻ってきた。此度は、助けられたな。」

「ご回復、お祝い申し上げます。」

「うむ。今日は、話がある。憲法制定に関しては、我が国は時期尚早。申し訳ないが、先送りにしようと思う。」

訊けば、領地宛行に対する反発から、再び貴族の権益を明確に規定する憲法の制定は、時期尚早と思ったとのこと。

「わかりました。」

「その代わり、2つ詔勅を出そうと思う。あれを。」とテレサの指示で出された詔勅。1つは、各国の自治をこれまで通り認めるもの、もうひとつは議会による王権の制限を受諾するという旨の新たな勅令である。


「これならば、憲法制定と同じ効果が出せますね。」

「うむ。貴族の権益や人民の権利や、政体については、また追って考えるとしよう。それでな。」

「?」

「あと、こんな詔勅も発布することとした。」

訊けば、新たなカナイマの副総督にリュカを任じ、リュカにカナイマの財政を取り仕切らせる考えとのことだ。…やられた。

「まあ、お主はカナイマに出向かずとも好い。首都から人を使わすも良し、現地人を登用するもよしだ。どうする?」

「それならば、副総督を辞退し、ホンテさんを推挙したいと思います。」

「わかった。近々、その者を参内させよ。」

「かしこまりました。」

こうして、ホンテさんの参内の日取りが決まった。ホンテさんは、首都で仕立てた緑色のドレスに身を包んで、テレサ女帝に謁見する。こうして、東国のカナイマの地は、カトゥル帝国の統治のおよばぬ場所から、リュカの封土へと転換されたのである。


リュカ宰相領の創出に貴族層の反感は必至である。たしかに、奴隷も臣民の一員として封土を持つことはできる。また、カナイマの地は今はそれほど喉から手が出る土地では無い。しかし、未知の病であるマラリアの治療薬が当地より発見されたとなれば、話は別である。貴族層は、これを機にリュカに対する反感を増したのである。

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