10話 「厄鋼」
いつもの倍の量を書いたから、GWのどこか一日は休み(サボり)ます。
「はい、誠に申し訳ございませんでした。このような事は今後起こらないように致します。」
僕ー新安エンは今、理事長に全身全霊で謝罪している。
理由は、2つ。
一つ目、目立ち過ぎたから。
今や学園では、「転入生は始祖の厄災の生まれ変わり」や「転入生は神の力を使える人だ」などの根も葉もない噂に加えて、「転入生は「闇」の始祖の直系の子孫」やら「死者を復活できる」などの僕やレイアさんの失態のせいで広まった噂がある。
その為、多分この学園で僕の事を知らない人はいないだろう。
二つ目、昨日の模擬戦での失態。
昨日あった学園全体での模擬戦で、僕は楽しさと必死さのあまりに加減を忘れて相手を殺してしまった。
その後に生徒や先生の視覚を遮断して、証拠隠滅した後に逃走したのだ。
もちろんバレていたので、さっき言った「死者を蘇生出来る」という噂が流れたのである。
ついでに治したはずの相手が、未だに意識が戻っていないという。
それで転入八日目にして、理事長に呼び出されたのである。
「さて、エン君。これはどう対処するつもりかな、学園の混乱と意識不明の相手の事。そして、これからの事。どうする、「始祖の厄災」よ。」
「そうですね、まずはお相手さんのことに関して取り組む所存であります。そもそも、彼女の身体に関しての損傷は無いと思いますが。まぁ、必ず起こして来ます。学園の混乱に関しては、すいません。対処のしようはありません、お力及ばず申し訳ございません。」
何故僕がこんな事をしてるのかというと、転入した時の書類に「理事長の判断での退学に大人しく従う」という名目に同意しなければならなかったからだ。
もちろん同意した為、僕は理事長に逆らえないのである。
「仕方ないですね、学園の混乱に関しては目を瞑りますよ。今までもこれからも、どれだけ目立っても目を瞑ってあげましょう。始祖様なので多めに見てあげないとですからね。それに強大な力をいくら制御しても、我々からしたら神のような力なのですから。その代わり、契約書通りの物をください。それでこの件は終わりです。」
僕は大人しく腕を差し出し、理事長が注射器で僕の血を採血した。
「それでは失礼しました。」
理事長は注射器三本分の血を採り、僕は理事長室から出た。
外では、ミャオさんとレイアさんが待っていた。
「どうしたんですか、お二人さん?」
すると、二人は心配そうな表情で見て来た。
「どうしたって、そりゃあ一つしか理由はないでしょ。心配で見に来たの、悪い?」
「そうニャンよ、師匠が心配で二人で授業抜け出して来たニャン。何も言わニャイで、それくらい心配してるって事ニャン。」
僕はいい友?を持った気がする、多分。
僕は一瞬涙目になったが、二人との関係性が友達なのか怪しいと感じて普通の目になった。
だって、ミャオさんは弟子である。
レイアさんに関しては初日に決闘して、その後に自己紹介して仲が深まったが、僕はレイアさんを一μmも信頼していない。
なんなら未満かもしれない。
それくらい信用していない。
そんな人達は果たして友なのか、僕は必死に悩んでいた。
そのせいで一瞬だけこれからしなくてはいけない事を忘れてしまったが、すぐに思い出して歩き始めた。
「少し用事があるので、僕は今日は欠席します。それじゃあ。」
僕は猛ダッシュしながら、二人に今日の別れを告げた。
約15分後、アミナで一番優秀な病院のアミナ国立病院に着いた。
その病院の特別病棟675病室を訪ねて、理事長との約束通りを果たす為に僕が殺しちゃった相手を起こしに来た。
奥から二番目のベッドに彼女は居た。
心拍数と脳波は安定している、なのに何故か呼吸すらしていない。
「どういう事だ、生きているのに死んでいるようだ。呼吸もせずに生きれるわけがない、普通の人は。どうするか、どうするべきか。そもそも、何が原因なのかがわからない。う〜ん。」
僕はベッドの隣で蹲り、悩みに悩んだ。
「ひとまず、解析だ。解析。それで原因は多分わかる。」
僕は彼女を能力で飲み込み、解析した。
結果、心身共に異常無しの原因不明。
「いやいや、待て待て。えっ、はっ、はぁ。待って嘘だろ、何もわからない。僕の能力でも全く、なんの手がかりも掴めなかった。どういう事だ、えぇ。」
僕はすごく悩んだ、すごく混乱した。
なんの異常も無いのに、呼吸をしていない。
まるで死んだようになっている。
全くもって訳がわからない。
内外共に損傷が無くて、僕の解析能力でも結果がわからない。
「こんな事、生まれて初めてだな。どうしよう、手荒だけどもう一回殺して「再構築」で治そうか。でも失敗するかもなぁ。えぇい、物は言いようやりようだぁ〜。」
僕はひとまず、異空間からナイフを取り出し、相手の心臓部に躊躇う事なく差し出した。
その後に一応、首も「覇剣ロキ」で切り落としておいた。
「よし、早く始めよう。死なれたら流石に体だけ直しても生き返らないからね。」
僕はパパッと「再構築」で治し、ベッドや病室に着いた彼女の血を異空間に取り込んで証拠を隠蔽した。
「よし、待とう。ちょっとだけ待とう、寝て待とう。」
僕は病室の壁に寄りかかり、少し寝る事にした。
どれくらい経っただろうか、窓を開けて外を見ると建物の光が綺麗に見えた。
「やっべ、結構な時間寝てたのか。で、彼女の様子は?」
僕は近くにあるベッドサイドモニターを覗き込み、ため息をついた。
「何の変化も無し、意識も無し。成果0。何か、何か原因があるはずなんだけどなぁ。」
そもそも、人が生きる為には二つの物が絶対に必要である。
一つ目は体、これは当然である。
体がないと何の生命活動も出来ないからである。
二つ目は魂、これは行動や意識を操作する為に必要不可欠である。
この事から考えられる事、それは簡単。
「魂が何らかの理由で破損、若しくは消失したって事か。」
僕は膝から崩れ落ち、痙攣しているのか疑うレベルで震えた。
なぜなら、魂に関しては修復くらいはできるが再現して生み出すことは無理だからだ。
どんなに完全に再現しても、性格や行動に多少の違いが出る。
なにより、魂が違う彼女は彼女と言えるのだろうか。
そんな疑問が浮かんで、どうしても魂には手を出したくない。
だが、自分の尻拭いは自分でやる。
その為なら魂の修復、最悪の場合は錬成だってしてやる。
「よし、やるか。ふぅぅ〜、やるぞー。はぁぁぁ、ふぅぅ。」
僕は息を大きく吸い、もう一度取り込んで解析した。
だが今回は、肉体ではなく魂に注目して解析した。
すると驚きの事実が分かった。
「おいおい、嘘だろ。何かしらの能力で魂が封印されてやがる。」
何の能力かはわからないし、これ以上は解析されない。
でも原因が分かってしまったら対処はたやすい。
その対処法とは、能力の無効化の後に破壊することである。
やり方は簡単、僕の血を飲ませるだけ。
でもそれだと前の金峰ガンみたいにならないかと思うかもしれないが、血の中に含まれる厄災の力と濃度を調整するので大丈夫である。
ひとまずは、血液中に含まれる厄災の力を僕の能力と「破壊」だけに厳選し、濃度を通常の0.000031倍にする。
その血液を口から流し込む、のは気が引けるので軽く彼女の腕に軽い切り傷をつけてそこから流し込んだ。
そして1〜2分経つと彼女は目を覚ました。
無事に対処が成功したようだ、でも人体に被害が出ている可能性もないとは思うけどもしかしたらあるかもしれない。
「こんばんは、体の方は大丈夫ですか。」
僕は気さくに話しかけた。
相手を心配しているのもあるが、自分の不安を押し殺すという理由で話しかけた。
「あぁ、大丈夫だ。わざわざ病室まで来るなんて、心配をかけたな。」
「いえいえ、僕が手加減し忘れたのが原因ですし。そこまで気にしないでください。」
一応、会話をできるくらいには回復した模様だ。
だけど、彼女の能力についてどう説明するか。
いや、まずは仲を深めよう。
今の状態で説明しても、説得力がなくて怪しまれるのがオチだ。
「まずは、お互いについて知りませんか。生憎、あなたの退院までの時間はたくさんありますし。自己紹介とかしませんか?」
そう提案すると、「ふっ、そうだな。」と鼻で笑って答えた。
レイアさんだったらうざったらしくてぶん殴ってるが、この人が鼻で笑うと謎の色気があるのはなぜだろうか。
「私はアヴェント・アブ・ラヴァーだ。まぁ、好きに呼んでくれ。そして能力は「鏡」、相手の動きを反転してマネできる。自分で言うのは何だが結構無敵だった、でもお前には破られたがな。エレントは16位だ。まぁ、こんなものだ。次はお前が自己紹介をしてくれ、新安エン。」
「いや、名前はわかるんですね。そうです、新安エンです。能力は、能力は~。」
どうしよう、どの能力を教えるのが無難か。
複数あるは論外、「闇」はなんかあらぬ誤解をされそうで怖い。
まぁ、再構築でいいや。
だいぶチートじみた能力だけど、他二つよりかはマシか。
「能力は「再構築」、物体の原子構造や原子そのものを変化させて、いろいろなものが作れます。エレントは、転入してきたばかりなのでわかりません。」
「そうか、エレントがまだないのか。だがまぁ、一年生にしてはすごいと思うぞ。実際、戦闘中に私の能力の仕組みに気づいて対応してきた。しかも剣を相手に素手で戦い、無傷で勝利している。とても1年生のやっていい所業ではない、しかもあの話題性。おまえはすごい、誇っていい。」
ひとまずは自己紹介は終わったが、すごく言い出しづらい。
いつ切り出すか、今しかない。
僕は大きく息を吸って吐き、乱れる心を落ち着かせた。
「一つ重要な話があります、心の準備をしてください。」
「なんだ、いきなりどうした。心の準備、まぁわかった。話せ。」
混乱しているラヴァーさんには悪いが、単刀直入に言わしてもらおう。
「これからあなたは能力が使えません。ラヴァーさんを治療しているときに、とある理由で能力を破壊せざるを得ない状況だったので。」
「そう。まぁ、そんな感じはしていた。気にするな、能力よりも命の方が大切だ。それに教えてくれてありがとう、使えないとわかっているなら対処くらいはできる。」
なんて優しい人なんだ。
この能力が物をいう世界で、能力がなくなったという事実は相当なことだ。
その原因の人に、責めないどころか感謝する。
他責任思考が至高の領域に入っているレイアさんとは大違いだ。
「代わりと言っては何ですが、僕からの見舞い品です。」
僕は異空間から一本の長剣を取り出し、ラヴァーさんのベッドにそっと置いた。
「なんだ、どうして剣なんかを見舞い品に。まぁ、この心意気はうれしいが。悪いが考えてることがよく分からないやつだな、お前は。」
「そうですかね、割と合理的な理由なんですが。」
そうだよ、ちゃんとした理由があるんだよ。
そうじゃなかったらただのイカレてるやつだよ、うん。
「だってあなた、これから能力が使用できないんですよ。なので、護身用にでもと思って剣をあげたわけです。ひとまず見てみてから決めてください。使わなかったら、売るなり見るなり壊すなり好きにしてください。」
そう告げると、ラヴァーさんはそっと剣を鞘から抜いた。
「なんだこれ。深藍色できれいな剣だな、確かに飾るのも悪くない。そんなことより、この剣に能力ついてないか。なんとなく力を感じるような気がするんだが?」
「勘が鋭いですね。そうです、能力付きの武器です。能力の内容は「衝撃」と「吸収」、あとは常時発動ってわけじゃないですがあなたの「鏡」と「氷」の能力も使えます。そしてこの剣の主な素材である厄鋼ウェントにより最小限の力で能力の発動が可能。」
「すまん、もっとゆっくり分かりやすいように教えてくれ。訳が分からない。」
やばいな、自分が作った剣の話になると一人で盛り上がっちゃうんだよな。
「すいません。説明をまとめると、その剣は「衝撃」と「吸収」って能力が常時発動してます。「衝撃」は切った相手の内部で衝撃を起こして損傷させることができます、「吸収」は切った相手の体力を吸収することで別の能力に吸収した分の体力でノーリスクで発動できます。で、常時発動は難しいですが「鏡」と「氷」の能力も使えます。なので、「吸収」で奪った体力で発動させることをお勧めします。そして最後にどうしてその剣がこんなことができるのかについて、それはこの剣の素材にあります。この剣の主な素材は厄鋼ウェントと言って、厄災の能力を最小限の力で発動できます。その理由は厄災の力の伝導率が頭がおかしいくらいに良いからです。まぁ、説明はこんな感じです。ご理解いただけました?」
「うん、やっぱりわからん。が、なんでお前が厄鋼ウェントについて詳しいんだ?。あれは太古の厄災達の技術だろう、今では現存する厄鋼の物品はないんだぞ?」
でしょうね、そんな反応になるのはわかってたさ。
でもまぁ、自分の罪滅ぼしも含めて少しくらい豪華にしたっていいんじゃないか。
「いや、一本だけありますよ。現存している厄鋼の武器。」
「あるわけないじゃないか、どこにあるんだ。美術館か、それとも誰かの鑑賞品か?」
そう言って、場所を聞いてきた。
なので僕はラヴァーさんの隣に置いている剣を指さした。
「それです、さっきあげた剣ですよ。これが現在唯一ある厄鋼の武器です。驚きました、しかもちゃんと能力もついてます。下手な厄鋼の武器よりも、豪華で高性能ですよ。」
そりゃあ、始祖の厄災が手間暇かけて作った剣だ。
弱いわけがない、多分。
でも、一応は予備を100本くらい作ってあるからいいけど。
そうやって自画自賛をして満足したので、ラヴァーさんを見ると嬉しさと喜びと不安と困惑が入り混じった変な表情になっていた。
「どうしたんですか、そんな顔して。もしかして、満足できませんでしたか?」
「いや、満足だ。満足はしていてありがたいと思っている。だが、どうしても不安と困惑が湧いてくるのだ。どうして厄鋼の武器の唯一の所有者が私なのかと、そして使いこなせるか不安でな。」
なんだ、そんなことだったのか。
ここは優しく慰める流れだ、よし行くぞ。
「大丈夫ですよ、いくらラヴァーさんが能力なしでくそ雑魚でレイアさん並みにポンコツでもその剣があれば安心ですし、その剣は所有者から一定の距離離れると勝手に手元に戻ってきます。そしてこの剣があなたの手物に来たのは運命、まさにそういうことです。僕に負けた結果が生んだ賜物です、よかったですね。」
「まぁ、ありがたいが。調子に乗るなよ、年下が。私、2年生だぞ。確かにお前が言うことは正しい。だが、言い方ってものがあるだろ。はぁ、やっぱりお前は何考えてるのかわからないやつだ。」
えぇ、なんで怒ってるんだ。
特に言ってはまずいものはなかったような。
あぁ、そういうことね。
「すいません、ラヴァーさんは決して弱くないので安心してください。あくまで例えですよ、気にせずに。」
「じゃあ、お前は私がポンコツと言いたいのか。そこも訂正してもらわないと困る。」
えっ、僕そんなこと言ったっけ。
やっべ、覚えてないが謝っておこう。
「すいませんでした、ラヴァーさんはポンコツでも弱くもありません。」
「よろしい、今後気をつけろよ。そんなことより大丈夫なのか、お前は?」
急にどうしたんだろうか。
「どうしてですか、別に何の問題も発生してませんが?」
「いや、現在進行形で発生してるぞ。ほら、今は午前9時26分。完全に遅刻だな、残念だったな。」
「えっ、ええーと。えぇぇぇ、すいません。失礼します、今度見舞いに来るので。じゃあ。」
僕は急ぎつつもそっと病室を出て、院内を歩いて移動した。
そして、病院の外に出て木陰の中の「闇」に入って学園の校庭に出た。
こうして、理事長の呼び出しと過去の自分の尻拭いを済ませた後に遅刻しながら学業に勤しんだ。
早く遊びに行きてぇ~。




