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奴の名はイクサ  作者: 牧目十六


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5/6

その5

 マコトが先輩たちに取っ捕まったという話は、すぐ翌日に伝わってきた。でも、マコトの姿を見る限り、さほど大したことはなさそうだ。目に見える範囲では、大怪我を負った様子もない。もしかしたら、脱いだらアザだらけかもしれないが。

 どっちにせよ、その後もマコトはユウジの子分であり、ユウジはイクサの子分だった。多少の造反劇はあったかもしれないが、それに僕が巻き込まれることはなかった。おそらくイクサは僕のことなど知らないだろう。

 やがて3月になり、イクサを含む不良グループは一斉に卒業した。卒業式の日も不良連中は全員が太いズボンを思いっきり低い位置で穿き、卒業証書を受け取る時も周りを威嚇しまくっていた。式の前後には一部の先生が「お礼参り」されたという噂も飛び交ったが、真偽の程は分からない。

 イクサたちが去れば、次はユウジたちの時代だ。だが、ユウジたちは何もかもイクサたちの半分以下のスケールでしかなく、存在感が薄かった。自転車のアクロバット走行を見せることもなかった。おかげで学校のワル度数が一気に下がり、ずいぶん呑気な雰囲気になったような気がする。いかついツラの不良どもがたむろしていた場所は、普通の生徒たちの溜まり場となった。学校に平和が訪れた、と言ってもいいだろう。

 私立高校に進んだイクサは、そこでも当然のように頭角を現したようだ。バイクの免許を取り、暴走族に入ったという噂を聞いた。その姿を実際に目撃したこともある。ナナハンなのかハーレーなのか定かじゃないが、デカいバイクにまたがったイクサは相変わらず、いや中学生の時以上にカッコよかった。スポーツ刈りだった頭(校則では本当は坊主刈りでなきゃダメだった)はリーゼントに変わり、眉毛はさらに細くなっていた気がする。もちろん、近寄って確認したわけじゃないが。

 だが、そんなイクサに転機が訪れる。詳しいことは今でも知らないが、病気で長期入院することになったのである。高校は一年間休学することになった。そして一年後に復学したのだが、かつてのような覇気は感じられなかった……らしい。人づてに聞いた話なのでどこまで正確なのか分からないが、少なくともイクサが「番長風を吹かせる」といった行為に興味を示さなくなったというのは事実のようだ。かつての同級生がみんな一学年上になってしまい、付き合いづらくなったのかもしれない。それでもイクサはしばらく学校に通っていたようだが、結局自分から退学してしまったらしい。

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