第七話 大聖女
いつも応援いただきましてありがとうございます!
「ピレア・ハーツ伯爵令嬢! お前の共謀者たちは拘束済みだ!」
クルスが、ピレアに仲間たちの救援はないことを告げる。
「……っ!? なっ……駄目よ!! 私が大聖女で……王妃になるのよ!!」
ピレアは俯くと、自分の欲望を叫ぶ。すると彼女を中心に黒い液体が溢れ出す。
「アーノルド様っ!」
「クラリス」
俺の前に踊り出たクラリスの神聖魔法によって、迫っていた黒い液体が弾かれる。
「ピレア様は、欲望のままに神聖魔法を使っています」
「そのようだな」
クラリスは、ピレアの状況について述べる。
「自身の欲望を糧にすると、強い効果が出ます。ですが、それに触れれば他者を自分の欲望に染めます……止めなければなりません」
「方法があるのか?」
黒い液体は、ピレアの欲望を表現するかのように暴れている。クラリスの神聖魔法は、神々しい白銀だ。聖女でも扱う者が変わるだけで、こうも変わる。
このままピレアを放置すれば、この場に人々が再び傀儡人形に成り下がるだろう。止めなければならない。
「……はい。ですがそれには、アーノルド様のお力をお借りしたく……」
「勿論だ。私に出来ることなら、何でもしよう」
暴走するピレアを止める方法を訊ねると、クラリスは少し言い淀んだ。いつも凛とした彼女にしては珍しいことである。何か難しいことかもしれないが、俺はクラリスを安心させるように微笑む。
「ありがとうございます。では……私のことを褒めてください」
「……分かった」
少し照れた顔でクラリスが、俺が協力する内容を告げる。思わず、その内容に関して言及したくなるが、今は時間が惜しい。俺は大人しく頷いた。
「何をこそこそしているのよ!? もう何をしたって無駄よ!! クラリス! あんたは邪魔なのよ!!」
「……くっ!?」
ピレアが黒い液体を巨大な両腕へと変化させた。そしてクラリスに向かって、巨大な腕を振り下ろす。クラリスの神聖魔法の結界にヒビが入り、クラリスが後退る。
「大丈夫か? クラリス」
「……っ、はい」
俺はクラリスの肩を支える。暴走するピレアの力は凄まじく、再度腕を振り下ろそうと構え始めた。
「クラリス。君なら出来る。人一倍頑張り屋で、真面目で……そして誰にも優しくて素晴らしい人だ。私はそんな君が婚約者でいてくれるのが、心の底から嬉しい。この状況を救えるのは君しかいない。この国を、人々を守る為に君の力を貸してくれ」
先程、クラリスから聞いた方法を実行する。お世辞抜きの俺の気持ちだ。本当はもっと伝えたいことがあるが、今は時間が限られている。急いで伝えるしかない。
「……アーノルド様。ありがとうございます」
クラリスは柔らかく微笑む。
「いい加減に! 潰れなさい!!」
ピレアが叫ぶと同時に、巨大な両腕が振り下ろされた。
「私は! アーノルド様の婚約者であり、この国を守る大聖女です!! いい加減になさい!!」
クラリスが拳を握り、それを振り上げる。彼女の声を共に、黒い巨大な腕が砕けた。
「なっ!?」
ピレアはクラリスの反撃に驚き固まる。
「ピレア様には、沢山反省して頂きます!」
「何をっ……っ!?」
クラリスはピレアに生じた隙を逃さずに、ピレアをウサギの人形へと姿を変えた。
「これで、もう悪いことは出来ませんよ」
「流石だな」
ウサギの人形を拾い上げると、クラリスが自信満々に微笑む。大変なことがあったが、一件落着したことに、安堵した。




