第六話 吉報
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「何を言っている! クラリス姉様を貶めようとした罪人が、今度は兄上を脅す気か!?」
ロビンがピレアの要求に対して、怒りを露わにする。
「ピレア様! それは、アーノルド王太子殿下を脅迫しています! 国王両陛下を直ちに解放してください!」
続いてクラリスもピレア、国王夫妻を解放するように要求した。
「そうだ! 我々を利用したのに、王太子殿下を脅すなんて酷いぞ!」
「国王両陛下を直ぐに解放しろ!」
ピレアに操られていた人々も、口々にピレアを非難する。
「外野は黙っていなさい! 決めるのは、アーノルド様なのだから」
大勢から非難する言葉を浴びせられたが、ピレアは余裕の笑みを浮かべた。現状で主導権を握っているのはピレアである。
「……その条件を飲んだとしても、両陛下を無事に帰すとは限らないだろう」
俺はピレアの要求を飲んだとしても、こちらに不利益しかもたらさない可能性を指摘する。
「ふふっ! 流石はアーノルド様! ですが……他に選択肢はありませんよ? 国王両陛下と、婚約者どちらが大事か分かりますよね?」
「……嗚呼、分かっているとも……」
優勢である為、ピレアは俺に選択を迫る。これはアーノルドという個人の問題ではない。王太子として、今後のこの国に対して選択だ。俺は苦々しくも、選択することを了承する。
「私を信じてください。約束は守りますわ」
「…………」
誠実さの欠片もない、言葉が告げられる。ピレアには約束を守る必要はない。反故にする前提での発言だ。
「ふふっ……お優しいアーノルド様にクラリスを断罪し、追放するのはお辛いでしょう? 私がお力を貸して差し上げます」
俺が黙っていると、ピレアは得意げな表情を浮かべた。そしてこちらに向かって歩いてくる。
「…………」
ピレアの言う『力を貸す』というのは、俺に魔法をかけ再度傀儡人形にするということだ。何も抵抗出来ない状態で、クラリスに暴言を吐かせられる。それを分かった上で、ピレアの要求を受け入れる訳にはいかないのだ。
だが、俺が期待している報告は未だ届かない。
「大丈夫ですよ! 全て私に任せてください! 私とアーノルド様が、国王と王妃になり幸せに暮らしましょう!!」
狂気じみた瞳が、俺を映す。
「アーノルド王太子殿下っ!」
大広間の扉が大きな音を立てて、開いた。一人の騎士が、俺の名前を呼ぶ。彼は俺の護衛騎士のクルスだ。彼の後ろには、国王夫妻が居る。如何やら、俺が待ちわびていた報告が届いたようだ。
「なっ!? あんたは! ……っ! 国王夫妻も!? 何で此処にいるのよ!?」
クルスと国王夫妻の無事な姿を見て、狼狽するピレア。人質が解放されれば、要求は通らない。
「『何で』か? 確かめてみろ」
ピレアに確かめるように、俺は自身の耳を指さした。
「……っ!? 如何いうこと!? なんで、護衛騎士と国王たちが居るのよ!? 逃がしているんじゃないわよ! 私の合図があるまで、生かしておきなさいって言ったでしょう!? ちょっと! 聞いているの!?」
俺の指摘を受けて、ピレアは自身の耳にあるイヤリングに話しかける。だが相手側とは通話出来ていないようだ。それはそうだろう。
「無駄だ。俺が触れた際に、通信を妨害した」
淡々と事実を告げる。
「なっ!? じゃあ……あの時、私に触れたのは……」
「貴様に気付かれない様に妨害工作する為だ。それからクルスに、反撃していいと伝える為だ」
驚きながらも、ピレアは気が付いたようだ。そう、俺がピレアのイヤリングに触れたのは魔法で通話を妨害する為である。ゲーム内では、断罪の進行状況により国王夫妻が危険に晒されていた。それは最後までクリアした際に、明かされた情報である。
それを知っていた俺は、原作を改変する為に護衛騎士と国王夫妻も救うことにした。護衛騎士であるクルスも一緒に捕らわれていたが、彼は優秀だ。イヤリングを通した通話が途切れ、ピレアの仲間たちが動揺している状況ならば勝てると信じていた。
俺がピレアに操られた状態では、クルスも動けないだろう。だが、俺が自発的に喋ることにより、操られていないという合図を送った。一世一代の賭けだったが、上手くいってくれて良かった。
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