第五話 要求
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第5話
「うっ……あれ? 俺は何を……」
「えっ!? アーノルド王太子殿下っ!? し、失礼しましたっ!!」
光が収まると、俺に飛び掛かろうとしていた人々の動きが止まる。そして瞬きをすると、俺に向かって拳を握っていることに気が付き後退した。
「……くっ!?」
ピレアは人々の魔法が解け、顔色を悪くする。
「これで舞台は整ったな。如何した? 先程までの余裕が無いじゃないか? 無理もないか、私をはじめ皆を魔法で操り優位な立場を築いていたのだからな」
「こ、こんな筈では……」
散々、好き勝手をしてくれた。俺は嫌味も兼ねて、ピレアが仕出かしたことを周囲にも分る様に告げる。すると、ピレアは指の爪を噛む。
「この中に、クラリスがピレアを虐めていたというのに心当たりがある者は居るか?」
続けて俺は、ピレアを追い詰める為に嘘の証言について事実確認をする。
「居る筈がありません! クラリス様はお優しい方です!」
「そうです! クラリス様がその様なことはしません!」
ピレアの魔法が解けた人々は、口々にクラリスが悪事を行っていないことを証言する。俺はそのことに、満足気に頷く。
「……ということだ。もう一度言おう、ピレア・ハーツ伯爵令嬢。貴様はクラリスを無実の罪で断罪しようとした罪人だ。潔く罪を認めろ」
クラリスを支持する言葉をピレアに聞かせる。そして逃げ道が無いことを告げた。
「いいえ……。私を裁くことは出来ません」
形勢が不利だというのに、ピレアは不敵な笑みを浮かべた。何処からその自信が湧いてくるのか謎である。
「見苦しいぞ、貴様の仕出かしたことは判明している。この場を逃れる術はないぞ」
俺は鋭くピレアを睨む。言葉遊びで逃げることが出来る程、クラリスを貶めようとした罪は甘くはない。
「ふふっ、あるのですよ……。アーノルド様、国王両陛下はお元気ですか?」
ピレアの口が弧を描き、俺の両親の安否について口にした。それは両親を心配した上での安否確認ではない。俺への脅しである。
ゲーム内では、アーノルドがピレアの言うままに行動した。結果的に国王夫妻も排除したのだ。
「……っ、貴様……」
俺に掛けた魔法が解け、傀儡に出来ないからこその脅しである。
「そう睨まないで下さい? 私が命令すれば、国王両陛下とは二度と会うことは出来ませんよ? それでもいいのですか?」
ピレアは楽しそうに笑うと、毒々しい赤色のイヤリングが揺れた。
「…………何が望みだ」
両親を人質に取られている以上、下手なことはできない。俺はピレアの要求を訊く。
「アーノルド王太子殿下の名の元に、クラリスを悪女として断罪しこの国から追放してください」
ピレアは鈴のなる様な声で、残酷なことを告げた。




