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勇者になってみませんか?  作者: 七瀬 優
第一章 名称未定 りん「りんの大冒険がいいよ!」
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幼馴染

 今日のりんはこけに、こけた。

 ビターンとか「ぎゃっ」とかドテとかバタとか「痛い~」とか「ぎゃう」とかズルベターンとか……。

 悲鳴やころんだ音がするごとに心にナイフがザクザク刺さるように痛かった。

 ただ、なぜかこけまくるりんを女子達がいつも以上にかわいがっていた。

 本当に、マスコットになってるな。


 そして、やっと本日の授業も終わり放課後になった。

 金曜日の放課後と言う事で、教室では週末の約束をしてる生徒もいれば、試合前の部活に急ぐ生徒などもいる。

 土日に向けた準備に余念がないのだろう。

 ま、土日に予定もなく、いつもの放課後を過ごす俺のような生徒も居るには居るのだが。

 そんな匂いをかぎつけたのかは知らないが、

「よ、来栖川。明日暇だろ、バイトしないか? いいバイトあるぜ?」

 前の席の男子が俺の方に向いて話しかけてきた。

 こいつは、田中だ。まあ、見てのとおり俺の前の席の男子だ。

 時々こうして、バイトなどの情報を持ってくる。

 ただし、いいのはバイトの金額だけで、内容は……ってのばかりだったりする。

 まあ、金欠で彼のバイトに同行した哀れなクラスメイト達から話を聞いた限りによるとだが。

 そんな訳で、俺はこのバイトの罠には一度もはまってない。

 だが、今の俺はまさに金欠。残金24円。やばいな罠に誘われそうだ……。

「また妙なバイトだろう」

 一応、内容に探りを入れる。

「ほら、これこれ、日給1万。土日で2万だぜ」

 田中はスマホでバイト情報の画面を見せてくる。

「って、スマホ買ったのか!?」

「ふ、ばれたか。最新型なんだぜ」

 ここぞとばかりにスマホ(最新型)を見せびらかしてくる。

「お前、自慢したいだけだろう!」

「そうとも言う」

 俺がスマホを取り上げようと手を伸ばした所で、田中は逃げていき、そのまま次のターゲットに話しかけていた。

 はぁ、金があればスマホも欲しいな。

 さっきチラッと見たバイト内容の『1日寝て過ごす』ってのに少し後ろ髪引かれたが、いまさら奴に頼むのもシャクなのであきらめる。

 ま、どうせ危険な新薬の実験とかなんだろう。そう思うことにする。


「あおちゃん、あおちゃん」

 その声に振り向くと、りんが何か両手に細長い棒のようなものを持ってこっちに向かって駆けて来た。

 そして、そのまま、ドテ。見事にこける。

 お、こけても手に持ったものは死守したぞ。りん何をそんなに大事にもってるんだ?

 すぐに起き上がり、近くに歩み寄る。

「サヤちゃんが教えてくれたんだよ。ころばなくなるおまじない」

 ころばなくなるおまじない?そんなものは聞いた事ないけどな。

 まあ、女子はおまじない好きだからそういうのも知ってるのかもしれん。付き合ってやるか。

「どんなのだ?」

「うんとね~」

 りんは口にポッキーをくわえると……。

 ああ、手に持ってたのはポッキーだったか。

「こえお、おあないおうに、いっほにはべう」

 これは、ええと「これを、折らないように、一緒に食べる」と言ったところか。

 …………。

 それは、俗に言うポッキーゲームというやつじゃないか。

 おい、りん。お前だまされてるぞ。

 俺はりんの言うところの『サヤちゃん』を探す。

 周りの女子と一緒に興味津々に俺達の方を見ていた。

 声に出さずに、口だけ動かす「いけーいけー」って……。

 りんも早くしろと言わんばかりに口にくわえたポッキーをこっちに近づけてくる。

「しょうがない」

 俺はそのまま、ポッキーの端をくわえると。

「「「おおおおおお」」」

 周りのどよめく声が聞こえるが、その期待を無視して。

 速攻でポキンと折る。

「あああああ、折れちゃった」

 りんが悲しそうに折れたポッキーを食べながら言う。

 これで、見世物にならなくてすんだな。

「じゃあ、もう一度だ~」

 りんがもう一方の手のポッキーをもう一度くわえてくる。

 く、もう一本あったのか。

 周りの視線が、「折るとかお茶を濁したら許さない」と言わんばかりのプレッシャーをかけて来る。

 このうえは……。

 りんのおでこにデコピンをする。

 ビシ。

「いたっ!」

 りんが声を上げた瞬間にポッキーを抜き取って、俺が食べてやる。

 ポッキーが無ければ続けれないだろう。

「ああ~あおちゃん、私の食べた~~~~」

 りんが2回ほどこけながら、女子達の方に走っていった。

 周りの見物人のから「間接キスだ」「いいな~」「なんで来栖川ばかり……」などと言った黒い何かのこもった声が聞こえたような気がしないでもないが、気にしないでおく。


「おあちゃんに取られた~~」

 りんが女子の輪に加わり何か訴えている。

「隊長、作戦は失敗です。なんか簡単にあしらわれています」「間接キスだったよね?」「特に二人は気にしてなかったよね?」

 何か色々言ってるのが聞こえる。何かたくらんでいるぐらいしかわからないのだが……。

「これはもう、最終作戦。一緒に寝るでもやらないとダメなのではないでしょうか?」

「え?あおちゃんとは時々一緒にねるよ~」

「「「………………」」」

「我々は敵を見誤ったのかもしれない。敵は『幼馴染』と言う関係だ!」

 なんか、話し合いの末にガックリと女子達が疲れ果てた感じになってるのが見える。

 何かあったのだろうか?

 そして、周りの男子から感じる恐ろしい殺意の視線は何なのだろう。



 その後、りんと帰える途中、『サヤちゃん』がりんに何か耳打ちしていた。

 これ以上りんに変な事を吹き込まないでくれるとうれしいのだが……。

 あと、『サヤちゃん』の名前ってなんだっけ?りんが何時もそう呼んでるから度忘れした。

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