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半魔族の少女は料理と共に  作者: 秋雨そのは
6章 貴族と平民と試験
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102話 彼女という存在

またまた暗い! 次は立ち上がるから勘弁して!

後、遅れてごめんなさい!?

 後悔してる暇が無いんだと思った。


 何故か、それは……目の前の状況が言っている。

 雨に打たれ……膝を着いて、自分を攻めていた。


 その瞬間、目の前の空間が歪んだ。それはあの人が来る……魔王が来る瞬間だ。

 歪みと共に現れる姿は、茶髪で老いた体で歩いていた……しかし、隠しきれないその雰囲気は魔物の王だと言えるだろう。


「なんじゃ……そんな、辛気臭い顔して」


「僕は……」


「知っておる、だからどうしたというのじゃ?」


 一瞬、何を言ってるんだと思った。お爺さんは「マリアは無事じゃ、それは儂が確認しておる」と言った。だけど、問題はそこじゃないとばかりにこちらを睨みつけてくる。

 唖然とした。それは、叱られたり……叱ってくれるのではないかと思ったからだ。しかし、そんな事をしないでこちらを睨みつける。


「お主は、なんでこんな場所で油を売っておる」


「……」


「ずっと、マリアの近くに居て……何も成長してないのはお主だけじゃ」


 そう、何も成長していない……それだけは分かっていた。どんなに剣を磨こうと、そばに居て恋人同士になろうと僕自身何も変わっていなかった。

 エンカさんが、人に頼る様になったこと。ナタリアさんが、力強く今を生きれるのも。メオドールさんが、人が変わった様に。


「だけど、何を変わればいいのか分からない」


「お主は、甘えてるだけじゃ……あの時の様に、マリアが居てくれればいい。そうすれば、自分は救われると」


「そんな事!」


 お爺さんは首を横に振った。そして……「お主はマリアの事を全部知っておらん」と言った。どういう事と訪ねようとした時に……雨に打たれながらもナタリアさんが近づいてきた。

 ナタリアさんは「あの子は……いえ」と言って、こっちを真剣な表情で見てきた。


「マリアさん……白雪 葵は、雨がダメなのよ……。それも、人が感じる恐怖なんて比じゃないくらいに」


「……!」


「何故知ってるかって顔ね。知ってるわよね、私が転生者って事も」


 知らなかった……近くに居ても、そんな事を喋ってくれなかった。そして、ナタリアさんがそれを知っている事も。

 転生者って事は知っている、だけど……この場でマリアさんの名前を、言い替えたのは何故……。

 ナタリアさんは、何も言えない僕を他所に話を進めていく。お爺さんは静かに見守るだけ。


「その様子では、本当にあの子は伝えていないのね」


「……どういうことですか?」


「何も考えていないのでしょうけど……あの子の過去を少し知ってるから」


 ナタリアさんは「――を受けて、――なのに……――されたのよ」知っている事を話してくれた。

 それは、想像を絶する話でもあるが……別世界である以上、説明が難しい事もあり……僕自身、理解が追いついていない。

 だけど、1つ1つ全ての話は……普通の人じゃあり得ない生活だという事が分かる。


「私は、全貌は分からないわ」


「そんな……事が、でも何で僕には……!」


「弱みを見せるのが苦手なのよ……私だって、過去を引き出すのに長い年月を使ったもの」


 ナタリアさんは「それでも、ほんの一部なんて……何を抱えているのかしらね」と呟いていた。

 雨にずっと打たれ続けているせいか、体が冷たい……だけど、それ以上に心も冷たかった。

 取り敢えず、学校の方に移動すると……ノームさんがいた。


「あら、戻ってきたの?」


「少しくらい、雨を避ける物持ってきてもいいじゃない」


「嫌よ、傘なんてこんな世界に無いんだし」


 ノームさんとナタリアさんが言い争っていた。言い争いが終わり、ノームさんはびしょ濡れのナタリアさんと僕に、タオルを投げた。

 お爺さんは全然濡れていなかった。それは多分魔法による、物ではないか。

 ノームさんは「何処まで喋ったの?」とナタリアさんに聞いていた。それを「冒頭だけよ」と答えた。


「はぁ……知っていた、喋っていない事も」


「あら、喋り方戻してもいいの?」


「意味ないでしょ……もしかしたら、喋っているかもと思う時もあった」


 ノームさんの口調はお嬢様の様なものから、素朴な女性の様な口調になった。それにナタリアさんは茶化しているようだ。

 唖然としてるしか無い、口調の事もそうだけど……ノームさんまで知っている事に。


「貴方は愛されている、だけど一歩引かれている……そう感じた事はない?」


「スキンシップを避けているような、気もしますけど……」


「彼女は、体に触れられるのが嫌いだった……違うわね、嫌にならざるを得なかった」


 ノームさんは「貴方は、前世の体を見ているのでしょう?」と言ってきた。それに頷くとナタリアさんが「服装はどうだった?」と聞いてきた。

 どういう服装だったか、あの時の事を思い出しても印象に残っていない……体の部分がモヤで隠されていた気がする。裸ではない……しかし、何かまでは思い出せない。


「女神がやったのね……相変わらず、細心の注意を払ってここまでやってた訳だわ」


「本当に、凄いよね~。私も女神の話を聞いてなかったら、信じてなかった」


 ノームさんに続き、ナタリアさんも口調が変わっていた。凄く元気な印象のある口調だ。

 それよりも聞きたかった。女神が細心の注意を払っていた? どういうことだろうか。

 それを聞こうとした瞬間、お爺さんが口を開いた。


「魔力と言うものは知っておるな?」


「はい……」


「それが強大であれば、害になることも?」


 はい、と答えるしかなかった。そして、お爺さんが付け加える「マリアの体には、膨大な魔力が秘められている……それも儂と同等な物がじゃ、それを意味することが分かるかの?」と言った。

 魔力は精神があるからこそ、安定した。出力として放てる……そしてイメージが大切な事も。

 それが溢れんばかりの量だったら、体では耐えきれない……そう習った。


「女神にお願いされたのは……生き返らせる時じゃよ」


「……」


「膨大な魔力をこっちで抑えるから、天候の操作をお願いと」


 お爺さんに問い詰めたかった。天候を操作していたのかと……だけど今は関係無い。

 女神が、魔王にお願いしていた? 考えてみれば、彼女が歩く先は……何時も晴れだった気がする。

 ハルデルト王国は、この時期は雨を振るのにと……テオドールさんから聞いてたから。


 ただ……何故今の状況で雨を降っている状況が分からない。


「流石に儂でも、魔力での影響が強すぎるのは無理じゃわい」


「今雨降っているのは何故ですか?」


「お主が原因では無いかの? 人の目というのは、意外と別な風に見えるものじゃ」


 その言葉に、思い当たる節としては……リンアさんと一緒に回った事だけど。

 あれが原因なのか? だとしたら、僕は……。

次は、同じ視点……もし変わるとしたら?

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