98話 奴隷契約と主人契約
相変わらず、いきなり始まっていきなり終わる
私は、何者かに頭を撃たれた事だけは分かった。
気絶しちゃったみたい、起きた時には馬車の床に寝かせられていた。
ただ、外は雨が振っており……馬車に乗っている男達も苛々しているようで「おいおい、こんな大雨になるなんて知らないぞ!」「俺に言うな!」と2人は怒鳴りながら喋っている。
何処かに着くなら早く着いて欲しかった……。
肌が雨で冷たくなっていく……それより、私は雨がダメなのよ。全然と言っていい程、恐怖を感じてしまう。
私は波打つ様に降る雨を聞こえないように、耳を塞いでは目を瞑っていた。
数十分辺りだろうか、揺れていた馬車は止まり。私は引っ張られては、ある地下に引っ張られた。男達は「なんか凄く、弱ってないか?」「まぁ売れば関係はないだろ」と言っていた……けど私にはそんな事を気にする程、気力が無かった。
気絶していたせいか、隠れていた角は現れていた。
手には枷が着けられ、動かせないようにされ。枷から紐のリードが引かれ、引っ張られていた。
部屋に突如入れられたと思ったら、特に何もない部屋だった。人気も無く、牢屋とあまり変わらない場所。枷にある番号が何があるかは、なんとなく分かる。
売られる時の番号だろう。
あれから、何もしないでどのくらい立っただろうか……遂にと呼ばれた。
「お前が今日の目玉だ、早く来い」
私は紐を引っ張られ、その場から動かされた。
立たされた場所は何処かのステージの様な場所、複数の人が私を見てはどうしようか考えているようだ。
「さぁ皆様、こちらはマルズダマ国の貴族! そして半魔族というオマケ付き!」
「「「「おおおぉぉ~!」」」」
歓声が聞こえてくる、それは嫌らしいなんてものじゃない。全身は濡れていて、何も考えられない……。ただでさえ体が冷え切っていると言うのに……。
司会の様な人が声をだす。
「価格は最初から、黒貨1枚……さぁどうぞ!」
「10!」
「100!」
「500!」
それぞれの人達は、声を上げて値段を提示してくる。もう少しで閉めようと、司会者が声をかける時。甲高い声が聞こえた。
「1000でどうだ?」
「1000!! さぁ他に居ますか? 居ませんね……落札となります!」
その顔は何故か知っている様な気がした、ただ誰に似ていたのかも分からない。男の人は私に歩み寄って来た、先程から体が冷え切っていたのか……そのまま、私は寄りかかるようにして意識が切れた。
――――――――――――――――
はい、これまでのあらすじです。
何でこんなに陽気に喋っているんだって?
それはもう奴隷じゃない……というかもうメイドね。
実はあの時、私を落札した人って……デオルズド・ハズ・ヴィート。何処かで聞いたことある家名だと思わない?
エオリアさんのお父さんだったのよ。
何であんな所に居たのかも不明だけど……なんか命拾い? したわね。
「調子はどうだ?」
「はい、お陰で良くなりました」
私が居るのは、ある個室……ただ、個室というよりは屋敷の一室と言ったほうがいい程の大きさ。
服もなかったので、取り敢えずメイド服に着替えておいた。デオルズドさんは「それは良かった」と少し嬉しそうに笑った気が……した。
凄く不器用な人で……表情が表に出ない上に、娘の事になると過保護になる。なのに、素直になれなくて嫌われたりするらしい。
「偶然というのは、本当に起きるとはな」
「どうしてあそこに?」
「元々、メイドが減ってきたのもあって。奴隷でも雇おうと思っていたのだ」
デオルズドさんは「だが、そこに居たのは。あの娘が、エオリアが私達に合わせたいと言った少女と、一緒の見た目をした君がそこに居たからな」と呟いた。
本当の偶然ってあるものね。
それですぐにでも帰りたかったのだけど、デオルズドさんは「少し、協力して欲しい事があるんだ」と言って、こうやってのんびりしている。
頼み……それは、メイド業をやりつつメイド達を励ましてくれないかという話だ。
最近は、奴隷をメイドとして使っているためか。全然こちらに心を開いてもらえない上、萎縮されてしまうらしい。
「いいですけど……保証は出来ませんよ?」
「いや、君なら出来るさ……エオリアの心開かせてくれた君なら」
エオリアから前は嫌われていたらしい、ただある日……教会でお婆ちゃんと会った時かな? その時から初めて、手紙を届けられた。
内容は私の事ばかりだったが、文面を見ては嬉しさを感じるほどだったそうだ。
私、何もしてないのだけどね。
デオルズドさん……凄く言いづらいけど、どう呼ぼうかしら。デオさん? その辺りでいいかな。
「どうしたんだ?」
「デオルズドさんの名前どう言う風に呼ぼうかと、思ってたんです」
「それならデオで構わない」
そう言って、立ち上がって。扉の方に立ってからこっちを見ながら「私は書類の整理をするから、後はメイド長に聞いてくれ」と言って部屋を去っていった。
メイド長って誰だろう?
私は疑問に思っていると、扉が急に開かれ……1人の女性が入ってきた。
「メイド長のホレンダ・ウォーカスと言います」
あれ? また、何か聞いたことのある名前が出たわね。本当に誰だったかしら。
私は疑問に思いつつ、メイド長と今後の事で話し合うことになった。
次は、メイド達の~?




