第十話:祈りは魂の奥に宿る
白哉の語りが終わると、静寂が降りた。
鈴虫の声が遠く途切れず響く。
如月は息を飲み、白哉を見つめていた。俺は俯いて黙り込んだ。
「……なあ、白哉」
ややあって口を開く。その声は、妙に冷静だった。
「なして、お前は自分が亡ぅなった後で、
鈴の兄さなった俺んことを知っとんのじゃ?」
白哉は一瞬、視線を彷徨わせる。
だがすぐに俺を見返し、躊躇いながら口を開いた。
「……見とったから」
「は?」
「せやから……見とったんよ。ずっと、鈴の隣で」
俺は眉を顰め、白哉を見た。
「……」
「あ、信じてないんやろ? ほんまやで!
ほんまに見とったんやって!」
信じ難い話だが、白哉が嘘を言っているようには見えない。
俺は、白哉の気迫に押されつつ確認した。
「っ……じゃあ、何か?
お前は、亡くなった後も。
鈴の守護霊にでもなって、側におったと言いよんのじゃな?」
「おん!」
即答した白哉に、俺は気圧され押し黙る。
「守護霊かはわからんけど……鈴をひとりにしたないって、
思いながら死んだからかな?
理由はよう分からんけど、ずっと側におってん。
……やから、あの子が僕の骨壺、抱き締めて泣いとったのも知っとる」
その言葉に、俺は目を見開く。やがて、視線が微かに揺れた。
「じゃったら、俺が鈴に頭撫でられとったんも……」
「うん。見とったよ。
その後、黑が泣いとったのも、全部」
あっけらかんと言って見せるが、その表情はすぐに曇る。
そして目を伏せ、蚊の鳴くようなか細い声で。
ゆっくりと独り言のように白哉は自身の気持ちを吐露し始める。
「どんなに声をかけても、手を伸ばしても……届かんかったし、
悔しかったし、情けなかったわ。
でも……それでも、あの子を見捨てたくなかったんや。
せやから、僕は……次を願った」
白哉がゆっくりと視線を上げる。
「もう一度、生きて。ちゃんと、守ってやりたかった。
あの子の傍で、兄として……今度こそ、約束を守りたかったんや」
その言葉には、静かな決意が宿っていた。
如月がそっと俺の手に触れる。無言のまま、俺の手を握った。
……――――命が、巡る。




