○地獄八景亡者戯◉ラウンド3
嵐のように鍋の下準備をしたタウロは牛車を引き導魔法師を乗せてオオガミと走っていった。
「でも、良かったタウロは導魔さんに黙って出て行ってくれたんだ。妙な横槍が入らなくて思う存分、てっちりを楽しめるね。清六さんに喜八さん」晴明は興奮して鍋のことばかり言っているが真の目的は地獄巡りということを忘れていた。清六と喜八も何か申し訳ない気分で鍋の下ごしらえを続けていると
「おーい邪魔するぞ〜」大きな声はツキノワ別名槌熊だった。
「はーい!」晴明とタマモは玄関まで出迎えにいくとホヘトの女将のお糸さんと一緒であった。
「ごめんやす、お邪魔しますどすえ。ほんにええしつらえのお屋敷どすな」
お糸は初めての導魔坊に少し緊張していた。食堂に案内されるとツキノワの運んできた風呂敷の包みを解きお酒の入った指樽を差し出した。「こんな気を使わなくていいのにただ身一つできてもらえれば良かったのに」「力持ちのツキノワはんがおいでやすのでタマモはん、お口汚しどすけどよろしおあがりやす」軽く二升は入っていそうな日本酒をもらってしまった。
「お糸さんにお風呂ご馳走すればいいんじゃない、タマモさん」
「そうよね、お鍋までまだ時間もあることだしどうお糸ちゃん気持ちいいわよ。一緒に入りましょ、こっちよ」
お風呂まで案内していった。
「ツキノワさんもひとっ風呂どうですか」晴明は誘ってみるが
「おい坊主、庭でひと汗流さないか相手してやるぞ」二の腕をパンパンと叩いて外に出ていった。
「あっ待ってくださいお願いします」オオガミが出かけていて晴明も少し物足らない気分だったのでちょうど良かった。
中庭に木刀の激しい衝突音が響いた。いつものオオガミとの稽古より激しい組手であった。そのあまりに大きな音に母屋の方から平家の大番頭、藤原康成が覗きにきた。
「晴明どの今日はいつもに増して激しい稽古でありますね。何かあるのでしょうかな」
平清盛の一の家来である康成であるがこの男、実は導魔坊きってのトラブルメーカーなのだ。しかも女性関係のだが鼻が利くのもいいところで今日は”地獄巡り”というエサに食らいついたようだ。
「いや今日はちょっと珍しいご馳走を用意したんで康成もどうですか」ツキノワも直接の面識はないが彼のことをよく見知りしていて「地獄巡りってアトラクション付きだぜ。面白いものが見れるかもよ」と小指を突き立ててニヤリと笑うと康成はデレっとした顔をすると
「是非ご一緒にお願い致します候」頭をぺこりと下げ稽古を最後まで見ると風呂まで付き合い楽しそうにしていた。




