#17 地上
休暇ということで、地上に一時、出られることになった。
「期限は一週間、近くの『ハイネケン』という小さな街での滞在のみ許されているが、それでもここよりはマシだろう。総員、直ちに地上に向けて出発する」
この土臭い洞窟内での生活に、いい加減、ウンザリしていたところだ。どうやらそのハイネケンという街は、田園に囲まれた田舎街らしいが、そんなことはこの際、どうでもいい。
太陽だ、太陽が見たい。
日の当たらない場所で、かれこれ二か月余りを過ごしている。いい加減、暗い場所にはうんざりだ。
この先、第五階層手前までは敵の姿が見当たらない。こういう時はたいていの場合、猛烈な数の魔物や翼竜が出てくる、再び大攻勢にさらされる。そうなる前に、前線基地である第四階層の前線基地を発展しつつ、また補給路の安定のため、鉄道を走らせることとなった。
その準備期間中、我々は短い休暇を得ることとなった。
翼竜が、すでに整備兵らの手でエンジンを始動されていた。私はコックピットで各部点検をし、降りてきた整備兵に敬礼し、その座席へと乗り込む。
滑走しつつ、隊長機やファルケンベルク曹長機に続いて、私は離陸した。第四階層の滑走路は長く、爆撃機の着陸も可能なほどだ。そんな長い滑走路に、我が撃竜は半分ほどのところで離陸する。
薄暗い回廊を、巡航速力で飛ぶ。思えば、この回廊の途上ではいろいろとあった。
まずは激戦の分岐点を通過する。ここでは二度目のあの戦いが思い出される。両腕に大火傷を負うほどの戦い、魂を削るほどの魔力消費を強いられたあれは、一生忘れることはできないだろう。
第二階層を通り過ぎる。二千人以上の犠牲を払って奪い取った場所だが、今は補給基地として少人数が常駐しているに過ぎない。魔物も現れず、比較的落ち着いた場所と変わり果てていた。
そして、私が最初に赴任した第一階層の基地上空を通り過ぎると、明るく光る点が見えてくる。
そう、あそこはまさしく、地上につながる孔だ。
『全機、急上昇!』
その孔だけは、垂直に上らなくてはならない。機速を上げ、一気に上昇する。その先には、暗がりに慣れ過ぎた目には刺激の強い、明るい世界が広がっていた。
両側には、絶壁が円形に広がっている。そうだった、ここは隕石孔だった。高さ数百メートルの絶壁を乗り越えると、荒涼とした土地が広がる。
この場所は、滅多に雨が降らない。それゆえにこの隕石孔も原形をとどめることができたのだが、そんな荒涼とした場所の只中に、街が見えてくる。
あれが、我々の休暇の場所となる、ハイネケンだ。
すぐそばには、細い川が流れている。その川は近くの山脈の雪解け水が絶えず流れており、その水がこの小さな街を支えている。あの隕石孔から最も近い、人の住む街。そこは田園で囲まれた街であり、人口はわずか三千人ほどののどかな場所だ。
この街の十倍もの兵士たちが今、あの隕石孔の奥にいると思うと、妙な気分になる。しかしこの街も隕石孔調査軍とは無縁ではなく、三千人の人口を上回る軍人が常駐し、次々とあの暗い洞窟の奥へと送り込まれている。ただの大麦の田園地帯だったこの街は、今や地上の中継基地として機能している。
そんな街の外れにある飛行場に、我々は降り立った。第二対竜戦闘隊は、撃竜が四機、双胴竜が十三機。歴戦の末に、双胴竜の数が減っている。それほどまでに双胴竜は撃墜率が高い。そういう事情もあって、国中の上級魔導士たちが予科練に集められ、飛行訓練を受けさせられているが、さすがに多くの者が根を上げそうになる。私自身も、苦しかった。だが、魔導士の誇りにかけて訓練をやり遂げ、どうにかパイロットになれた。だが、そういう魔導士はごくわずかしかいない。
しかし、根を上げそうになるものの、厳しい訓練に耐えるしかない。なぜならば、根を上げれば今度は、双胴竜に乗せられることが決定するからだ。撃墜率の高い双胴竜に乗るか、死に物狂いで撃竜のパイロットになるか。どちらにマシな未来が待っているかは、もはや言うまでもない。
撃竜が着陸し、格納庫へと滑走する。バラバラとけたたましい音を立てて広い格納庫に入ると、そこで私はエンジンを切る。そして、辺りを見渡した。
眩しい。これほど世界が眩しかったとは、すっかり私は忘れかけるところだった。岩肌からむき出しにされているあの魔力伝導のためのものと思しきパイプが放つ青白い光以外は、暗闇に近い場所にずっと長いこと過ごしていた。あまりの光の眩しさに、直りかけの腕の火傷がうずく。だが、悪い気はしていない。
土の匂いがする。あの隕石孔の奥のそれとは大違いだ。太陽の光を浴びてはぐくまれた土が放つその匂いは、私の魂をも揺さぶるほどの生気を与えてくれる。
「さて、宿の手配だが」
集まった第二対竜戦闘隊の三十人は、隊長の言葉を待つ。今晩から一週間、それぞれがこの街の宿で過ごすことになっている。その一時の住処を、隊長から告げられる。
ファルケンベルク曹長、ヴァーグナー曹長、そして双胴竜の操縦士と魔導士、それぞれが皆、宿の名前と部屋を割り当てられる。が、私だけ、その割り当てがない。
おかしいな、隊長ともあろうお方が、私の宿を言い忘れたというのか? 私は尋ねる。
「あの、隊長。小官の宿は、どこなのでしょうか?」
「ああ、フィッシャー軍曹の宿は、これから向かう」
他の隊員には宿の場所を継げたというのに、私だけは直接、隊長が案内してくれるようだ。そういうわけで私は、隊長と共に宿へと向かう。
そこは、この街の中央を突っ切る表通りに面する大きな宿だった。その二階に、私の部屋があるのだという。
「はぁ……いいんですか、私のようなものが、これほど大きな宿に泊まるだなんて」
「何を言っている。調査軍の功労者だぞ。これくらいの待遇は当然だろう」
そう言いつつ、隊長と共に宿に入った。扉の向こうの奥のカウンターには、宿の主人が見える。
「いらっしゃい」
不愛想な態度で、我々は迎え入れられる。なんとなく感じていたが、この街の人々にとっては我々、軍人の存在はあまり歓迎されていないらしい。
が、そんな宿屋の主人の態度など構うことなく、隊長はこう言ってのけた。
「ここに、二人分の宿が手配されているはずだが」
私は一瞬、聞き違えたのかと思った。二人分? ちょっと待て。私は一人だが。もしかして、ヨハンナも来るのか?
「ああ、聞いている。ええと、確か……シュタイナーさんと、フィッシャーさんだったか」
「そうだ。間違いない」
もはやそれは、聞き違えではない。私は、隊長と同室にされていた。どおりで私はあの時、呼ばれなかったわけだ。
そして、なぜ隊長が直々に私を宿に案内したのかが分かった。
うん、やられた。
しかし、遅かれ早かれ、こういう事態は起こりうることだと覚悟はしていた。
とはいえ、青天の霹靂とはまさにこのことだと思った。文字通り、晴天での出来事ではあるし、その場に着いてから事実を知らされては、私には他に行き場はない。
で、結局、二階の部屋に向かうこととなる。
「どうだ、広い部屋だろう」
うん、確かに広い。でも、二人分と考えたらどうなのだろうか? 部屋の端には、ガラス張りの小窓が一つ。そして部屋の中央にはテーブル一つと二つの椅子が向かい合っておかれている。その部屋の奥には、大きなダブルベッドがあった。どう見てもあの大きさは、二人用だな。ああ、私は今夜、何をされるのだろう。
「ええと、隊長、その……」
「話したいことは分かる。が、その前にまず、腹ごしらえだ」
思いっきり、はぐらかされた。私に懸念を与える機会を奪うつもりか、隊長め。
ともかく、軍服姿のまま外に出る。街の人々の視線が、痛いほど向けられるのが分かる。その視線からは少なくとも、好意的なものは感じない。軽蔑、侮蔑、厄介者を見る目。早い話が、この街での軍人は嫌われ者だということだ。
当然だろうな。いきなり人口が三千人しかいない田園の街に、三万を超える軍人が通り過ぎていった。荒くれものの多い軍人が、街の人口を上回るほど押し寄せたのだ。そう問う不快な思いをしたに違いない。
私自身も、田舎出身だから分かる。十年前の戦争の際は、私の街も中継基地にされた。当時、十歳を超えたばかりの私は、陸軍人から足蹴にされた覚えがある。今はまさにその逆の立場に立っていることを、私は自覚している。
「……やれやれ、ただでさえ軍人が増えて負荷が高まっているのに、軍規を守らない輩がいるのだろうな」
さすがの隊長も、その雰囲気に気付かずにはいられない。だからこそ、おとなしく振る舞うことを心掛けているようだ。もっとも、私も粗暴に振る舞うつもりなどないのだが、どこか窮屈さを感じる。
で、とある料理店に入る。久しぶりに、陸の料理が食べられる。胸躍る中、私と隊長は、グラーシュとシュペッツレ、それに炭酸水を頼んだ。料理店が少ないためか、ここは軍人だらけだ。それを少ない店員がさばいている。そのため、注文してからもなかなか料理が出てこない。が、この状況を見れば文句を言えるわけもなく。ただひたすら待っていると、奥から騒ぎが聞こえてくる。
「おい! いつまで待たせる気だ!」
軍服からすると、陸軍の下士官だ。四人組の一人が、大声で店員を呼びつけて叫んでいる。
「はい、た、ただいま……」
「さっきも聞いたぞ! 我々を誰だと思っている!」
考えてもみれば、元々が人口の少ない街だ。そこに大量の軍属が押し寄せれば、手数の足りない店にとっては待たせるつもりがなくても、そうならざるを得ないことくらいすぐにわかる。おそらくはそういう事情を知ってて、その下士官は騒ぎ立てる。そうすれば、自身を優先してもらえると踏んだようだ。
なるほど、軍規を守らない輩というのは、本当にいた。本来ならば民間人に対する暴言は、懲罰行為だ。だが、軍人が多すぎるこの街は、やや無法地帯になりつつある。
よく見れば、相手は私と同じ軍曹のようだ。こうなったらひと言、文句を言ってやろう。そう思った時、意外にも隊長が先に動いた。ずかずかとその陸軍の下士官の前に出て、こう叫ぶ。
「おい、ここは民間の店だ。ザクセン共和国軍人ともあろう者が、民間人に粗暴な態度をふるうとは何事か!」
「はぁ!? なんだおめえ、さてはカモメの一員か」
陸軍人は、空軍の我々を「カモメ」と呼んで馬鹿にしている。無論、地下ではそんな雰囲気はない。互いが互いを助け合わなければ、死に直結する。だが、まだその地獄を知らないやつらは空軍を見て馬鹿にする。
「お、おい、相手は大尉様だぞ。いくらなんでもお前、それは……」
「はぁ!? 上官とはいえ、ひ弱なカモメ如きを恐れて何が陸軍人だ。こんなやつはな、腕の一本や二本、へし折って……」
その言葉に、シュタイナー大尉は完全にキレた。その軍曹の腕をつかむと、こう言ってのける。
「俺は、第二対竜戦闘隊の隊長、シュタイナー大尉だ。俺の魔力は、ブレスドラゴン級の魔力障壁すらも撃ち抜いた。なんならその魔力で、逆にお前の腕の一本や二本、消し飛ばしてやろうか?」
つかむ手からは、白い煙が上がる。まずい、明らかに魔力が込められている。まさか本当にあの腕を吹き飛ばすつもりか?
「あちちちちっ! ま、待て、いや、待ってください、大尉殿!」
急に言葉を改めるその軍曹は、あまりの魔力の強さに根負けしたようだ。なんだ、口ほどにもないやつだな。
隊長は、その軍曹の腕を話す。手首には、軽い火傷の跡が残る。恨めしそうに隊長の顔を見上げるその軍曹に、隊長はこう言ってのけた。
「なんだ、その態度は。その態度を改めないのならば、俺はここの司令部に、左手の手首に火傷を負った軍曹が軍規に違反し、民間人に罵詈雑言を浴びせかけたと、そう報告するまでだぞ」
考えてみれば、隊長は士官な上に上級魔導士だ。しかも、証拠となる火傷までつけられた。こうなれば、陸軍の下士官ごときが敵う相手ではない。悔し紛れの表情を浮かべたまま、四人は敬礼してその場を立ち去った。
その場にいた店員が、隊長に礼を述べる。
「あ、ありがとうございました。おかげで、助かります」
「小官はただ軍規に則り、民間人を守っただけのことですよ」
とだけ言い残して、再び席に戻ってきた。
「あの、隊長、陸軍の下士官と言えども、手首に火傷を負わせてしまったのはさすがに……」
「大丈夫だ。この店内にも空軍人もいるから、いざとなれば証言が得られる。それにだ、その程度で根を上げるような輩ならば、この先の地獄など越えられるはずもない。良い薬になるだろう」
まるで気にする様子がない。なんてお方だ。豪胆すぎる。もっとも、大尉と軍曹とでは階級が違い過ぎるから、たとえやつが陸軍へ訴えたところで、勝ち目はないだろうな。
そんな隊長の、一見冷酷で、それでいて正義感に真っ直ぐな姿は、いつ見ても惚れ惚れする。レーマン大佐に対しても、毅然とした態度で臨んでいた。いつも弱い者の前に立ちはだかり、守ってきた。私も、守られてきた。しかも以前の戦いでは、決死の覚悟で私に魔力を送ってくれた。
こんな軍人はそうそういない。そう思うと私は、顔が熱くなった。あれ、私、いつの間にか隊長に惹かれている?
そうだ。そういえば、大事なことを忘れていた。
「隊長、あの……」
「なんだ」
「以前、私は『返事』を保留したままでしたが」
「そうだったな」
「その返事を今、しようと思ってるのですが」
そう、あの野戦病院でのベッドの上で告げられた、事実上のプロポーズ。その時、できなかった返事。それをふと思い出したのだ。すると隊長は、やや落ち込んだ表情を浮かべる。えっ、なんで落ち込む?
「粗暴なところを見せてしまった。幻滅しただろうな。気持ちは分かる」
あれれ、なんだか逆の反応だぞ。まさか私が、さっきの隊長の姿を見て嫌いになってしまったと、そう勘違いしているのか。
「そ、そんなわけないです! 何をおっしゃってるんですか! むしろ、カッコイイと思いました! だって、弱き者をかばったのですよ、誰だって惚れる姿じゃないですか!」
私が思わず叫んだこの言葉を聞いた隊長は、意外そうな顔つきを見せる。そんな隊長に、私は続ける。
「ですから私、あのプロポーズ、ああ、いや、あの工房を一緒にやろうという話、私、受けます! 一緒に工房を継いで、一緒に暮らしていきましょう! 私にとっても、この先の生き延びるための、心の支えになります! ですから……」
と、そこまで大声で叫んだところでハッとする。
そう、この店には多くの軍人が客として座っている。さっき、あの下士官に詰め寄られていた女性店員もいる。皆、一同にこちらに注目していた。
しまった、そう思ったときは、もはや手遅れだった。あろうことか、大勢の前で私は、隊長に告白してしまった。が、そんな私に隊長はただひと言、こう返す。
「その言葉を待っていた」
その言葉が告げられた瞬間、周囲の軍人たち、そして女性店員が、一斉に拍手し始めた。
「おめでとう!」
「ほんと、おめでとうございます!」
なんてことだ。私はよりにもよって、大勢の前でなんてことを……だが、もはや後の祭りだった。周りは歓迎ムードだが、私は恥ずかしくてならない。顔が、熱くなるのを感じる。
それからしばらくして、ようやく地上の料理を味わう。その料理を待たされている間、私はただひたすら、恥ずかしさに耐え続けた。混雑している分、待たされていることもあるが、ああいう出来事の後だ。その時間がまるで永遠のように感じられる。
が、そんな感情も、目前に現れた料理の前では吹き飛んだ。地下では決して味わえなかった、熱々の料理が目の前にある。それを見た途端、先ほどまでの恥ずかしさはどこへやら、スプーンをぶっ刺して、その地上では普通の料理を無我夢中に食らいつく。
うん、やはり美味い。今までの戦闘食が酸味の強い泥水にしか思えなくなるほど、格別な味を堪能できた。歯ごたえも、味も、そして匂いも、何もかもが皆、懐かしい。そういえば私も地上にいた時は、こんな料理を食べていたんだな。いつの間にか、コーラとスナック菓子ですら美味だと感じるほど、味覚が麻痺していることに気付かされた。
さて、食事が終わり、日も暮れ、宿に戻る。そこで私は、最大の危機を迎えていた。
そうだ。ついに夜が来てしまう。あの一つのベッドに、互いの告白を終えた男女が一組、寝る羽目になる。
当然、起きるべきことが起きてしまうのは、必然というものだ。
「さて、寝るか」
しかしだ、当の隊長はと言えば、まるで戦闘後のブリーフィングを終えた時のような軽い台詞を述べながら、私を連れて部屋に入る。当の私はと言えば、身体の奥から何か熱くなるものを感じていた。
そんな鉄鋼炉の中の溶けた鉄でも流されたように熱く緊張している私の身体に、そっと隊長は手をかけてくる。
「た、隊長」
「おっと、今は隊長と呼ぶな。ヘルマンと呼べ」
「そんな、隊長を名前で呼ぶだなんて……」
「何を言っている。そういう仲になると、大勢の軍人の前で自身で宣言したばかりではないか」
「は、はぁ。ですが、心の準備が」
「すでにエンジン始動を終えて、離陸寸前だというのに、出撃を拒めるのか?」
「……いえ、できませんね」
「そういうことだ。さて、まずは滑走だな」
まるで出撃をするかのように言いながら、隊長、いや、ヘルマンは、私の軍服のボタンに手を伸ばす。上から一つ一つはがされ、次々と、私の貧相な身体があらわにされていく。
「……あの、私の身体を見て、がっかりしたのではありませんか?」
上半身を露わにしたままベッドに横たわる私は、ヘルマンにそう問う。が、またしても短い返事で答える。
「それがいいんだ」
うん、この方の性癖が、相当歪んでいることは、私にもよく分かった。軍事訓練である程度の筋肉がついてはいるが、残念ながら胸に本来あるべき二つの膨らみは、訓練では大きくならなかった。地下の第四階層の前線基地が建つ平原のように平らな胸に、ヘルマンは顔を押しつけてくる。
で、その晩のことは、とてもじゃないが私の口では語れない。
忘れられない夜になったとだけ、伝えることとしよう。
さて、その後の激しい運動の後、深い睡眠ののちに迎えた朝のこと。
突然、けたたましいサイレン音が鳴り響く。私と隊長は、飛び起きる。
「なんだ?」
互いに生まれたままの姿だったが、大急ぎで軍服を身に着け、外に飛び出す。すると、伝令兵が大声で緊急事態を伝えている声が聞こえる。
「でんれーい! 第三階層手前、分岐点に魔物およびワイバーン級、多数発生! 地上にいる全軍人は、直ちに出撃準備!」
なんということだ。つまりはまた、分岐点を塞がれたことになる。こうなると、その奥にいる第四階層の調査軍が孤立する。
我々の休暇は、想像以上に短く終えることとなった。再び我々は、地獄へと舞い戻ることとなる。




