97.告白
※キスシーンがあります。苦手な方はご注意ください。
カイトが真っ直ぐに私を見てきた。
「アリサ、君のことが好きだ」
私は目を見張った。カイトはそのまま話を続ける。
「今まで言わなかったのは君の気持ちが少し不透明で掴み切れなくて尻込みをしていたから。でも、今日それを凄く後悔したよ。この気持ちを伝えられないまま終わっていたかもしれないんだ」
胸の高鳴りを抑えることができなかった。しかし同時に疑念も残る。
「私も、カイトのことが好き 。でも、あなたはサリア様のことが好きなんじゃないの?」
「サリア?何故ここでサリアが出てくる?」
「あなたの視線の先には私じゃなくてサリア様がいると思ったから」
「だからか…」
カイトは何か納得したようだった。
「アリサの心が掴み切れなかったのは、俺に靡いているように見える時もあれば、妙に拒絶されているような時もあってよく分からなかったからだ。俺の好意が全てサリアに向いていると思っていたんだな?」
「うん。サリア様の代わりなのかなって」
「分かった、払拭しよう。今後もそう思われたら堪らない」
そう言うとカイトは私の両手を握りながら力強く断言した。
「アリサはサリアの代わりじゃない。俺はきちんとアリサという女性を好きになっている」
「そう、なの?」
同じ顔なのに、そこまで断定的に言えるものなのだろうか。
「そもそも皆アリサとサリアは似ているって言うけどな、俺から言わせたら全然違う。勿論顔は瓜二つだし、フェアリーアイであるところや正義感が強いところ、努力家なところとか似ている部分もあるが、似ていない部分も沢山ある。例えばサリアは即断即決で自信家だった。あいつには迷いってものがほとんどなかったよ。アリサは優柔不断だし、いつも自信が無さそうにしている。自分を過小評価し過ぎていると俺は思う」
「過小評価かは分からないけれど、自信がないのはそう」
「これだけ色々やっていてまだ自信がつかないのか?まぁ今はそこは一旦置いておく。…後はサリアは好き嫌いがはっきりしていて主張もするし、嫌いなことに対する熱意は全くなかった。ダンスやドレスが良い例だ。アリサは嫌いなことや苦手なこともきちんと取り組んでいると思う。でも好き嫌いの主張はやっぱり少ないな。節足動物が嫌いなのは分かったけど」
私は第三の試練を思い出して苦笑した。
「それからサリアは甘えるのが上手だった。あまり何かを抱え込むということもなかったように思う。最期くらいだ、言わなかったのは。…アリサは甘え下手だし、秘密主義で何でもすぐに抱え込もうとする。悪い癖だよ、全く」
カイトは苦笑した。確かにそういうところがあるので私は罰の悪い顔をした。
「サリアの最期は知っているか?」
「他の人から聞いたわ」
「そうか。俺はサリアを愛していたよ。心の底から惚れていた。98年間、サリアの死を受け入れたくなくて転移魔法の研究に没頭した。フェアリーアイは短命だ。あちらとこちらの世界の時間の流れが同じならサリアは38年前には既に寿命が尽きている。それでも時間の進みが違うかもしれないとか、時空の歪みでサリアが生きている異世界に辿り着くかもしれないとか、陛下と2人で都合よく考えていた。とにかくそれが生きるよすがだったんだ」
話すカイトはやはり少し辛そうである。それほど愛した人だったのだ。
「カイト、辛いなら話さなくて良いよ」
「いや、俺が話したいんだ。…転移魔法を使ってようやくアリサを見つけた時、俺は死ぬほど嬉しかった。やっぱりサリアは生きていたんだと勘違いをして、君を連れてきた。…違うのだと判明した時、俺と陛下は少し違う考えを持った」
「陛下と違う考え?」
「陛下は「どのような姿形になろうとも、この世界を見守っています」と言ったサリアが、生まれ変わってアリサになって戻ってきたのだろうと考えていた。例えアリサが別人でもサリアの生まれ変わりならそれで良いと仰った。でも俺は違った。生まれ変わりでもなんでもアリサはサリアとは違う全くの別人だ。俺はサリアでないと意味がなかった。だから君が違うと分かった時、勝手な話だけど酷く落胆したよ。そしてやはりサリアはもうこの世にいないのだと悟った」
この話が本当なら、カイトは最初から私とサリア様を別人だと区別していたということか。
「君が城を抜け出して攫われた時、俺は大して心配していなかった。ただ陛下に命令されたから探しただけで、職務を全うするという義務感しかなかった」
「そう、なんだ」
意外にドライだったらしい。カイトは私の顔が翳ったのが分かったのか慌てて言葉を紡いだ。
「はじめはだ。…アジトを突き止めて突入して、椅子に縛られて怯えている君を見た時、やはりサリアとは別人なんだと思った。でもそれと同時に失礼な言い方かもしれないけど、凄く庇護欲を掻き立てられた。守りたい、俺が守らなければならないって。アリサのことをもっと知りたくなった。あれほどサリアじゃなければ意味がないと思っていたのに」
「そんな最初から?」
吃驚した。まさかそんなに初めから好意の発端があったとは思っていなかった。
「流石に最初は確信がなかった。もしかしたらサリアに似ているからかもしれないと俺も思っていた。そうだったら君に対して凄く失礼だろう?だから俺もしばらく時間が必要だった。守りたいという気持ちは変わらずあったから専属護衛を申し出たが、その時もまだ半信半疑だった。でも一緒に過ごすうちに確信に変わっていったよ。それこそ魔狼退治の辺りにはもう自分はアリサのことが好きだと自覚していた」
奇跡兵団の男性に髪を切られた時、独占欲のように感じてしまったあの発言は私の勘違いではなかったのだ。夏のライアンさんの時も、きっとドラゴンの棲家での出来事も酒に酔っていたわけじゃなく、私が踏み込まれて拒絶しそうになっていたからああ言って引いてくれたのだろう。他にも思い違いだと思っていた諸々のことは全て、私に向けられたものだったに違いない。
「ずっと勘違いをしていたわ。カイトが私に優しいのは異世界に連れてきた負い目かサリア様に似ているからだと思っていた」
「今はその全てが勘違いじゃないって分かった?」
私はコクリと頷いた。自分のことが好きだと言われてもやはり疑念はあったから、話してもらえて良かったと思う。
「カイト、話してくれてありがとう」
「サリアのことを思い出さないわけじゃない。でも今は君のことが好きだ。信じてほしい」
「うん。私もあなたのことが好き。ずっとあなたへの気持ちを押し殺していたの」
カイトは優しく笑った。
「やっと君の気持ちを知ることができた」
そう言うとカイトは私の頬に手を添え、ゆっくりと顔を近づける。
(ああ、今度は私で間違いないんだ)
出会った最初の頃にキスをされかけたことをふと思い出した。あの時は私に対してではなかったから拒んだ。今度は違う。
私はようやくカイトと口づけを交わした。お互いの今まで言葉にできなかった思いは全て熱いキスへと還元されていく。甘い痺れで頭がボーっとして、しばらく理性は仕事を放棄していた。
ようやく両想いになりました(´ノω;`)
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ありがとうございます!
次回は明日の12時台に投稿予定です。
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※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。
※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。




