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9.お誘い

キリの良いところがなくて、少し短いです。

「久しぶり。大分顔色が良くなったな」

「カイト!久しぶり、おかげさまで元気になりました」


 自主軟禁生活の最終日、ティータイムの時間にカイトが私の様子を見に来てくれた。この10日間はカイトに一切会っていなかったので、少し嬉しい。

 仕事の休憩時間に立ち寄ってくれたようだが、少し時間に余裕があるとのことだったので一緒にお茶を頂くことになった。

 リリアンさんがお茶の用意をしてくれる。今日はアールグレイのような香りのお茶とプレーンクッキーだ。食べ物や飲み物は元の世界のヨーロッパ圏に酷似していて、和食や中華がないのが残念だが、お城の料理は全て美味しいため文句は言えない。今日のお茶もクッキーも例に漏れずとても美味しい。


「そう言えば私にも魔力があったみたいで、この間に魔法を1つ覚えたわ」

「そうか、それは良かった。じゃあ今後魔法の教師もつけないとな」


 前に魔法が使ったことがないと言ったら不便だと顔を顰めていたカイトは、私も魔法が使えると聞いて自分のことのように喜んでくれた。しかも勉強の教師陣に魔法の先生まで付けてくれるという。本当に至れり尽くせりだ。


「ありがとう。そうだ、忘れていた」


 私はベッド近くのサイドボードの引き出しから、先日借りていたカイトの白いハンカチを2枚取り出した。


「ごめん、これ借りっぱなしで。ちゃんと洗ったから」


 普段の洗濯はリリアンさんがやってくれるのだが、これは自分できちんと手洗いをしてアイロンをかけていた。本当はお菓子の1つでも付けたかったが、生憎自由にできるお金が私にはない。


「そのままもらってくれて良かったのに。律儀だな」

「そう言うわけにはいかないよ」


 借りたら返さないと気になって仕方がないのだ。カイトはそのままハンカチを受け取るとポケットにしまった。

 そのまま何となく会話が途絶えてしまい、しばらく2人で黙ってお茶を飲んだ。


(うーん、気まずい)


 かといって部屋に籠りきりだった私にはもう話すネタがない。カイトの近況でも聞こうと口を開きかけたところで、向こうから話を切り出してくれた。


「アリサ。もし良かったら明日一緒に出かけないか?会わせたい人がいるんだ」


 思いがけないお誘いだったが、軟禁生活に飽きていた私は二つ返事で承諾した。


「良かった」


 カイトは私を誘うのに少し緊張していたのか、良い返事がもらえてほっとしているようだった。そういう反応をされると勘違いしそうになるので、変に意識しないように自分に釘を刺す。


(カイトは私に負い目がある、もしくは私がサリア様に似ているから色々とよくしてくれているだけ。それ以上の意味はないんだから)


 何とも罪作りな男であるが、私の方でしっかりしておけば問題はない。彼はあくまでも目の保養の、とても頼りになる友人だ。


「今回は俺がきちんと町中を案内する。昼は外で食べて、夕方には城に戻ると思う」

(わぁ、何だか健全なデートみたい)


 早速ほだされそうになっている自分がいたので、奥歯で口内を噛んで戒める。


(危ない危ない。天然イケメンはこれだから困る)


 カイトは自分の顔の良さとそれに伴う行動をもう少し慎重に考えるべきである。これが私じゃなくて他の女の子ならきっと勘違いしていたに違いないのだ。


「そう言えば私、このまま外に出ても大丈夫?」


 私は話題を逸らすことにした。


「リリアンに協力してもらう予定だ」

「リリアンさんに?」


 私は部屋の隅で空気のように佇んでいた彼女に目を向けた。


「はい。万事お任せください」


 リリアンさんが頷く。カイトとはすでに打ち合わせ済みらしい。


「すまない、そろそろ戻る時間だ」

「あ、うん。じゃあまた明日」

「また明日。ああ、朝の鐘と昼の鐘の間くらいに迎えに来る」


 この国では大体朝の8時と正午と16時にそれぞれ1回ずつ鐘が鳴る。朝の鐘、昼の鐘、夕の鐘と呼んでいて、始業とお昼と終業の合図になっている。例外も勿論数多くあるが、大体はこのサイクルで仕事をしているのだ。カイトの言った時間だと大体10時くらいだろうか。


「分かった、準備しておく」

「ああ、じゃあまた」


 カイトは微笑むと、仕事に戻っていった。

 彼の自然に出るスマートな所作に、私は眼福眼福と内心で拝んでいた。

次回は今日の20時投稿予定です。

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※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。

※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。


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