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8.魔法習得

※エピソードタイトルを「魔法習得2」→「魔法習得」に変更しました。

「私も魔法を使ってみたいのですが難しいでしょうか?」

「どうでしょう。魔力が備わっていれば使えると思いますけど」

「では、魔力が備わっているか調べる方法はありますか?」


 リリアンさんは顎に手を当てて考え込んでいる。この世界の人たちはみんな魔法が使えるということは魔力が備わっているかどうかをいちいち確認する必要がないので、調べる方法自体が存在しない可能性があった。


「1つだけ、眉唾物ですがあります」

「本当ですか?」


 ほとんど迷信のようなものなので、あまり期待しないでほしいとリリアンさんは前置きをした。


「実は魔力は全身から少しずつ放出されているらしく、中でも手のひらが一番魔力を放出しやすいと言われています。だから魔法を出すときは手のひらをかざしたり指を使ったりするのですが、このように手のひらをかざした時」


 リリアンさんが自分の前に手のひらをかざすと、少ししてケセランパサランが手のひらに集まり出した。


「手のひらにくすぐったい感触が来ます。一説によると、魔法はこの世界に無数に漂っているフェアリーによって発動すると言われているので、このくすぐったい感触は目に見えないフェアリーが手のひらから自然放出される魔力を食べに来ているのだと言い伝えられています。まぁほとんどオカルトのようなものですけどね」

「へぇ」


 リリアンさんには言わないが、私はそれが迷信ではなく真実だということが分かる。どうやらケセランパサランはこの世界ではフェアリーと呼ばれ、見えないながらも認知されているらしい。

 私も早速やってみるとフェアリーが集まり出したので、魔力自体は備わっているようだった。


「私も感触があるので魔力があるかもしれません」

「そうですか。では魔法を習得できるかもしれません」

「あの、お仕事の邪魔でなければ、片付けの魔法を教えてもらえませんか?」


 差し出がましいお願いだったが、リリアンさんは二つ返事で了承してくれた。


「魔法はイメージです。こうしたいと魔法が発動した後のことをよく想像すること。それからそれに見合った魔力を出力すること。想像に対して魔力が少ないと魔法は発動しませんし、放出する魔力が多いと無駄になったり魔法が暴走したりします」

「分かりました」

「では、「カサリシェ―片づけろ―」」

「カサリシェ―片づけろ」


 フェアリーは全く反応してくれなかった。


「恐らく魔力が全然出ていませんね」

「どうやって出すんですか?」

「んー、どうと言われましても…」


 リリアンさんが困っている。


(きっとはじめからできるから感覚を説明できないんだ)


 この世界の人たちは生まれた時から何かしら魔法や魔力の勘所のようなものが備わっているに違いない。だからきっとリリアンさんに限らず、他の人に聞いても私がほしい答えは返ってこないだろう。


「すみません、1人であれこれ練習してみますね。魔力はありそうなので後は魔力を出すコツさえ掴めば自分でもできると思います」

「そうですか、お力になれず申し訳ございません」

「いえ、とんでもないです。却ってお仕事中にあれこれ質問してお邪魔しました」


 これ以上リリアンさんを拘束しても悪いと思った私は1人で猛特訓をすることにした。幸いフェアリーたちは見えているので、この子たちに魔力を与えて仕事をさせるイメージはできている。後は魔力さえ出すことができればきっとこの子たちは私の期待に応えてくれるに違いない。


 私は暇を見つけては魔法の練習をした。しかし魔力を出す感覚が分からないのでいくらやっても梨の礫である。


(どうしよう、全然分からない)


 とりあえずフェアリーとコミュニケーションを図るべく、近くにいた子を両手で優しく包み込んでみた。


(あ、ほんのり温かくなってきた)


 なんだか春の陽だまりにいるような心地がしてきて、私はそのままベッドに仰向けになる。何だか眠くなってきた。



 気が付くと花畑の中にいた。色とりどりの花の中を無数の蝶が舞っている。これは夢の中だとぼんやり自覚していた。花畑と蝶以外は真っ白な空間だったからだ。

 しばらく1人でいたが、いつの間にか目の前に美しい黒髪の女性が現れた。花冠をして、風でロングヘアーがたなびいている。古代ギリシャのような白いワンピース型の服を着ていて、肌も透き通るように白かった。顔は良く見えなかったが、所作やふるまいからさぞかし綺麗なのだろうと思う。

 その女性が私の手を握ってきた。身体の前で両手それぞれ指を絡ませる。温かかった。何だか触れている手のひらがその女性と繋がっているようだった。そして唐突に理解した。


(あ、これが魔力?)


 不思議な女性と繋がったことにより、自覚していないチャネルを気付かせてもらった。そんな感覚があった。

 女性がそっと手を離す。顔は見えないけれど微笑んでいるようだった。その女性は私の頭を優しく撫でると次の瞬間にはいなくなっていた。ぼんやりしていると一際強い風が吹いて花弁が宙に舞った。それを目で追っているうちに私は覚醒した。



 目が覚めると先ほどと同じように仰向けで寝ていた。両手には先ほど捕まえたフェアリーが開放されるのを大人しく待っていた。私は何か確信を持ってその子に命じた。


「カサリシェ―片づけろ―」


 魔法の対価に魔力を渡した。今まで感じたことのない感覚だ。強いて言えば気を出すようなイメージだろうか。何となくこれくらいの魔力でこれくらいのことができそうというのも分かった。魔力を空間に出すのではなく、フェアリーに引き渡すのだということも理解した。フェアリーたちに魔法のイメージとそれに見合った魔力を引き渡すことで魔法が発動するのだろう。


 魔力を渡されたフェアリーはフワフワとベッドに着地した。私がベッドから降りると魔法でシーツの皺をピンと張っている。部屋は基本的に片付いているのでここくらいしかやる場所がなかったのだろう。

 私は魔法が発動して感慨深い気持ちになった。


(それにしても夢の中のあの人は一体誰だったんだろう?)


 知らない女性だったことは確かだ。私の作り出した幻想の人だったのかもしれない。

 こうして不思議な体験の末に私は片付けの魔法を習得することができたのだった。

※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。

※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。


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