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61.試食会

 予め今日試作する料理のレシピを紙に書き出して配布していた。


「では早速分担して作っていきましょう」


 今日アイデアとして提供する料理はナポリタン、ハンバーガー、ホットドッグ、ポテトチップス、エビフライ、牛肉コロッケ、フライドチキンに冷製クラムチャウダー、甘味はミルクレープだ。この世界の材料で作れてかつ今この世界にない料理を考えると、日本発祥の洋食、もしくはアメリカ料理しか思いつかず、全体にジャンクで重めなセレクトとなってしまった。


(私だって本当はもっと和食に寄せたかった)


 しかしパーティー全員を賄えるほどの調味料類はない。実は帰ってきてすぐ南の島で手に入れた種麹を元にジョゼフさんたちと調味料類の仕込みもしていたが、発酵、熟成までに長くかかるものばかりなのでパーティーにはとても間に合わない。また煮干しの作り方と出汁の取り方も教わったのでそれで何か作れないかも色々熟考したのだが、結局醤油や味噌、料理酒などで少しでも味を整えないと美味しくないのだ。


(カレーはスパイスが揃わないし、中華や韓国料理も調味料がない。まだまだ作れないものは多いわ)


 ちなみにご飯ものも何か作ろうとあれこれ思案したのだが、冷えて固くなった上にカピカピに乾燥した米が個人的に許せなかったので全てボツにした。私はご飯が大好きだ。なのでできることなら提供したかったが、大好きだからこそ万全の状態でない今は出したくなかった。やはりご飯は温かくないと駄目なのだ。来年再来年の課題である。


 料理人3人はレシピ通りにてきぱきと効率よく魔法を使いながら下ごしらえを進めていく。私は時折レシピの不明点を聞かれたり、食材の状態について質問されたりするのに答えていった。パーティーメニューはほとんど3人に任せ、私は平行して今日の夕食に国王陛下に献上する日本食を作っていた。献立は豚ロースの生姜焼き、肉じゃが、だし巻き卵、ミニサラダにあさりのお味噌汁、白米の定食風である。本当は千切りキャベツをつけたかったのだが、こちらのキャベツは加熱用で生食には向かなかった。あと自分の食べたいものを作ることにしたら副菜が2つになってしまったが、まぁせっかくの和食だし良いだろうと自分を甘やかす。


「このケチャップというソースは汎用性が高そうですね。マヨネーズもこちらのものよりもコクがあって良い」

「そうですね、どちらも重宝します」


 この世界にもマヨネーズは存在するのだが、少し味が違う。なので日本のマヨネーズのレシピを提供した。ただ食酢の代わりにレモン汁を使ってもらっているのでややさっぱりしているかもしれない。


「ここから派生してタルタルソース、オーロラソースが作れます」


 タルタルソースはエビフライに、オーロラソースはハンバーガーに使おうと思っている。ハンバーガーはケチャップでも良いのでそれは料理人に吟味してもらうつもりだ。

 出来上がったようなので早速試食してもらうことにした。


「うむ、どれも今までありそうでなかったものだ。このナポリタンとやらは食べたことがないはずなのにどこか懐かしい気すらする。フライドチキンはやはり骨なしの方が喜ばれるだろうな」


 ジョゼフさんがそう評価する。今回フライドチキンは骨ありと骨なしを食べ比べていた。私としては骨ありの方が食べ慣れているのだが、やはり格式高いところにお呼ばれするような方々は上品にパクリと一口で食べられる方が良いだろう。


「このパン2種のサンドイッチはぐっと食べ応えがあります。それに海老をフライにしてしまうなんて考えつきませんでしたね。このタルタルソースもいつものやつと違いますが美味しい」


 ポールさんが本当に美味しそうに食べている。


「料理長、このフライドポテトは凄いですよ!パリパリの食感がたまりません!それにこのコロッケは肉の旨味と芋と玉ねぎの甘みが最高です」


 ジュールさんもポテトチップスのジャンク感にハマってしまったようだ。簡単で美味しい、まさに悪魔の食べ物である。ちなみに私の好みで塩とブラックペッパー味だ。コロッケは下味をしっかりつけているのでそのまま美味しく食べられる。本当はソースを付けて食べてもらいたいところだが、致し方ない。


「クラムチャウダーというスープも魚介と野菜のうまみがミルクに合っている。このミルクレープというケーキは繊細だな。この世界の食材だけでもまだこれだけの可能性があるとは驚きだ。今日は良い勉強になった、ありがとう。パーティー用の料理についてはこの後諸々を加味した上で決定しようと思う」


 作る手間、提供スピードなど何か色々考えないといけないことがあるのだろう。


「分かりました。少しでもお役に立てたのなら良かったです」

「また是非色々教えてくれ。それから、アリサさんの使った料理と調味料類の味見をしてもよろしいか?」


 国王陛下に献上する料理なのでジョゼフさんたちにしっかり味見してもらわなければならない。


「はい、お願いします。皿に移すので待っていてください」


 見慣れない料理にジョゼフさんが興味津々である。私は作った料理と味噌、醤油、日本酒、食酢をそれぞれ皿に出した。今日は酢を使うメニューはないが一応持ってきて正解だった。ちなみに焼酎は調味料じゃないので部屋に置いてきている。


「なんて興味深い味わいなんだ!」


 ジョゼフさんがあさりの味噌汁を飲んで叫んでいた。ポールさんは無心で生姜焼きを食べてから白米を掻き込んでいる。ジュールさんはだし巻き卵を食べてからノートに何か書きつけていた。


「お口に合いますか?」

「ああ、大丈夫だ。きっと陛下も喜ばれよう。この肉じゃがとやらにもう少し味が染みればお出ししようか」

「良かったです、ありがとうございます」


 及第点をもらえたようでほっと一安心だ。


「それにしてもこの調味料類は我が国にはない味だな。独特だが癖になってしまう」


 料理長が目をうっとりとさせてそんなことを言っている。未知のものを発見した学者のように喜々としていたが、その次の瞬間には途端に肩を落としてしまった。


「しかし今回のパーティーでこれらを出すことができないなんて実に残念だ」

「そうですね、私ももっと色々お作りしたかったのですが残念です」


 和食を食べてもらいたい私としても非常に残念なことである。


「またの機会にしましょう。果報は寝て待てです」

「はい」


 ポールさんに慰められて私とジョゼフさんは渋々頷いた。


 夕方、国王陛下に私の日本食が供されている頃、私の部屋でも近衛兵の皆に同じご飯を振る舞った。良い機会だったので先日の約束も一気に果たそうと思ったのだ。日本食は国王陛下にも近衛兵の人たちにも好評だったようで、両方からまた作って欲しいと頼まれたので何かの折に再び振る舞おうことになった。ただ近衛兵の人たちは私の部屋に呼んだものだから、皆お菓子やらお酒やらお土産を携えて来てしまっていて、却って気を使わせてしまった。次は何か良い方法を考えたいところである。


 こうしてあっという間に1か月は過ぎていった。

次回は今日の20時台に投稿予定です。

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※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。

※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。


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