表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/162

41.闇属性魔法

※バトルシーンが含まれます。苦手な方はご注意ください。

※信仰心の篤い人が出てきます。そういうものが苦手な方はご注意ください。

 あれから3日間、日中の時間帯は山狩りのごとく捜索をしたが、結局見つけることが出来なかった。それと同時に襲撃も止み、敵が生きているのか死んでいるのかさえ分からない状況となってしまった。どこかで生きているなら倒さなければならないし、死んでいるのなら死体を確認しなければならない。


 私たちは捜索してから3日目の夜に作戦会議を開き、この平原の拠点は引き上げ、さらに隊を半分に分けて南北に伸びている山岳地帯の捜索をすることにした。理由としては拠点を移しつつ捜索範囲を広げたいことと、敵が生きていたとして、私という餌と深手を追った経験を秤にかけた時、もうここには寄り付かない可能性があることだ。それからもう1つ、これもまた敵が生きていたとして、隊を半分にし山の中を捜索することで襲撃しやすい状況を作って再度おびき出すためである。

 カイトとオークリーさんと私、エリスさんとギルバートさんとレオンさんに分かれ、更に他の兵団たちも半分ずつ分けて捜索隊を結成した。私たちは北側で、エリスさんたちは南側を捜索することになった。


「気を付けてくださいね」

「そちらも気を付けてください。アリサさんがいるそちらの方がきっと遭遇率は高いでしょうから」


 別れ際エリスさんにそう言われてしまった。

 私たちは1日いっぱい歩き、夕方ごろに手頃な開けた川辺を見つけてそこにテントを張った。


「明日から3日間はここを拠点にして敵を捜索する。見つからなければまた北に拠点をずらして捜索する。それの繰り返しだ」


 カイトが皆に説明する。草の根を分けても探すということなのだろう。なお、夜の見張りは不寝番ではなく数時間ごとの交代制となった。人数も少なくなったうえに日中は探索しないといけないからだ。全員が毎日夜のどこかで必ず見張りが回ってくることになった。

 山の中の捜索ということではじめのうちはかなり緊張していたが、敵の痕跡は一切なく、襲撃もなかった。かなり遠くへ逃げてしまったのか、私たちの知らないところで息絶えているのか。腹の傷はかなり深かったはずなのでどこかで死んでいてもおかしくはない。そうだと良いなぁという希望的観測が頭をよぎる。隊の他の人たちも死んだか、不毛の地へ戻ったのではないかと噂をしていた。


「オークリーさんはどう思いますか?」

「どうでしょう?憶測ですが自分はこの辺りにはいないと思います」


 川の拠点の最終日を迎えていた。つまり半分に分かれての捜索から4日目の夜、手傷を負わせてからは7日が経過していた。私とオークリーさんは連れ立って夜の見張り中だ。厳密にはオークリーさんは見張り兼私の護衛である。最近はなかなか専属護衛として一緒にいられないとカイトは申し訳なさそうにしていたが、彼にだって十分な休息は必要だし、近衛兵の護衛が1人いるなら誰だって良いだろうと思っている。あまりカイトの重荷にはなりたくなかった。


「痕跡がないからですか?」

「はい。巧妙に隠されているだけかもしれませんが 、この辺りには痕跡がなさすぎます。ここは元の拠点からも中途半端な距離ですから生きているにせよ死んでいるにせよもう少し遠くの辺りから手がかりが出てくるのではないでしょうか?」

「つまりここは素通りした場所ということですね」

「そうです。レオンのつけた切り傷が3日で回復していたのを考えると、生きていてアリサさんを襲撃するならもう良い頃だとは思いますが、それなら捜索中襲撃のチャンスはいくらでもあったはずです」

「ならやっぱりこの辺りにはいないのかもしれないですね」


 そんな話に夢中になっていると、いつの間にか遠くのかがり火が消えていた。この拠点も平原ほどではないにせよ、周囲にかがり火を置いていたのだ。私とオークリーさんは近くにいた別の見張りの人に声をかけ、かがり火をつけに行くことにした。


 今日は月が出ていないので明かりの届いていないところは一層暗かった。現代人として一寸先は闇というのは本当に怖いと思った。いや現代人関係なく、深い闇というのは本能的な恐怖を抱かせるのかもしれない。腹の底からゾクゾクとした怖気が立つ。先ほど話していたせいもあって何となく暗闇から何かが出てきそうな想像をしてしまう。

 途中まではオークリーさんもいるし、子供じみていると思ったのでそのまま歩いてきたが、最終的には見栄よりも恐怖の方が勝ってしまった。


「オークリーさん、すみません。暗すぎるので光の球を打ち上げても?」

「構わないと思いますよ」


 オークリーさんが微笑する。暗いところを嫌がるなんてやっぱり子供じみていると思われたのかもしれない。でも今は羞恥心よりも安心感の方が大切である。


「バラフォトス―光の球―」


 この魔法は敵を怯ませるだけでなく即席の光源としても使えるから便利だ。

 明かりが確保出来てほっと一安心と思って前を向く。

 消えたかがり火のすぐ奥に黒いフェアリーの群れがあった。


「アミナフォトス!―光の防御― エクテーシー!―暴け―」


 もう少し私たちを引き付けてから食べるつもりだったのだろう。私に気付かれたと思ったそいつはすぐに突進をしてきたが、私は前回の反省を活かして防御魔法を先に打ってから正体を暴いた。

 ところが魔狼は前みたいに鼻面に激突せず、口をあんぐり開けて、光の防御を食べようとした。


(あ、まずい)


 魔狼の牙には光耐性があり、光の防御も大して持ちませんと言われていたことを思い出す。牙が当たっているところから卵の殻のよう簡単に罅が入った。

 防御が壊れる瞬間、オークリーさんに思い切り突き飛ばされ、私は辛くも狼の口から逃れ出た。


「オークリーさん!!」


 取り残されたオークリーさんは機転を利かせ、剣をつっかえにして丸のみは避けていた。しかし時間の問題だろう。

 私はもう躊躇わなかった。


「リポシミア―昏倒せよ―」


 闇属性魔法を放つ。魔狼は一瞬かっと目を見開いたかと思うと、そのまま目を瞑って脱力した。巨体がどうっと地面に倒れ伏す。


「オークリーさん大丈夫ですか?」

「あ、ああ。今のは」


 オークリーさんが困惑していた。闇属性魔法を使ったからだろう。もしくはあれだけ手こずっていた相手がこんなに簡単に昏倒したからか。


「貴様、異端者だったのかぁ!!」


 騒ぎに駆け付けた奇跡兵団の男性が物凄い形相でこちらに走り寄ってきた。名前こそ覚えていないものの、この隊の奇跡兵団の中では1番の上官だったはずだ。その人が勢いそのままに私を押し倒してきた。


「うっ!」


 成人男性の全体重が乗っかってきたので息が詰まった。河原の石やら砂利やらに顎を強かに打ち付ける。ガチンとなって歯がジンジンと痛い。舌を嚙まなかっただけマシか。

 両腕を背中で拘束され、足で押さえつけられた。


「彼女に手荒な真似はよしてください!」

「オークリーさん、私のことは良いから早く止めを刺してください!!」

「しかし」

「良いから早く!!」

「唆されるな!そんな下品な魔法で昏倒した魔物を殺すのは近衛兵として名誉か?恥を知れ恥を!」


 その言い草に私は腹が立った。


「闇魔法を使って倒したら下品で、他の魔法を使って倒したら上品?じゃあまたそれを起こすつもり?ふざけないで!どれだけ被害が出て、こいつに苦しめられたと思っているのよ!1つの命を奪う方法に貴賤はない。皆等しく何かの命を奪うという行為に他ならないわ。今後の被害と自分の誇りを天秤にかけなさい!!」


 オークリーさんは逡巡していたが結局先に魔狼の止めを刺しに行った。懸命な判断である。だが私の言葉はこの男性には火に油を注いだ。激しくいきり立ち、ギリギリと背中の拘束を強めていった。


「誑かしたな、イヒネイカ様の皮を被った悪魔め!!私はお前をとても尊敬していたのに!これ以上その姿でイヒネイカ様を愚弄し侮辱するなど断じて許さんぞ!お前にイヒネイカ様と同じ長い黒髪など相応しくないわ!!神の裁きを受けよ!」

「痛い!やめて!!」


 私は髪を無造作に持ち上げられていた。拘束されているので全く抵抗できない。


「やめろ!!!!」


 止めを刺し終わったオークリーさんがこちらに駆け寄るも一足遅かった。


「レピダフォトス―光の刃―」


 まさか興奮した宗教徒に断髪される日が来ようとは夢にも思わなかった。

次回は明日の12時台に投稿予定です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。

※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ