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34.プレゼント探し

 王都に帰ったら国王陛下に随分と労われ、また褒賞金を頂いた。前より格段に金貨の枚数が跳ね上がっていて吃驚した。カイトが国難と評したように、それだけ脅威だったに違いない。それから数日お休みを頂くこととなった。その間にきっと改めて私の派遣先などを検討するのだろう。

 とはいえ休みをもらったところで暇だった。これなら訓練や勉強をしていた方が良かったが、先鋒の都合もあり勝手にアポなしで赴くこともできない。考えた私は独り城下町へ繰り出すことにした。ペンダントのお礼の品探しである。


「カイトの好きなもの分かりますか?」

「何ですか急に?」

「この間贈り物を頂いたのでお礼がしたくて」


 町へ行く準備の途中にリリアンさんに訊ねていた。気に入ってもらえそうなものをプレゼントしたいが、考えてみたらカイトの好きなものやほしいものが全然分からず、リリアンさんにこうして聞いているのだ。


「カイト様は赤ワインがお好きと伺ったことがありますよ」

「へぇ」


(カイト、赤ワイン好きなんだ)


 自分はカイトのこと全然何も知らないんだなと思う。勿論、他の親しくなった近衛兵たちのことも分からない。


(何を好きだとか嫌いだって話あんまりしないから)


 そう言う雑談ができたら良いなと今後の課題として胸に留め置く。


「赤ワインの種類は分かりますか?ミディアムボディとか?」

「とにかく重たいものがお好きと仰っておりました」


 ならフルボディか。フルボディは濃厚な香りや味わいが楽しめる。ただ私は渋いと感じてしまうので、試飲するより店のおススメを買った方が無難か。


「ちなみにリリアンさんは何がお好きですか?」

「ワインなら辛口の白ですかねぇ、アリサ様は?」

「ワインなら赤も白もとにかく甘いのが好きです」


 やんちゃだった大学生時代はとにかく色々な種類のお酒を手当たり次第浴びるように飲んでいたが、途中から自分はお酒はあまり好きではないということを自覚した。それからはジュースのようなお酒ばかりに手が伸びてしまう。


 リリアンさんにオススメの酒店とガラス店の場所をいくつか教えてもらい、私は昼間の町に出かけた。ちなみに服は先日の町娘スタイルでリリアンさんにまた髪を結ってもらっている。基本超インドア派なのだが、やはり見慣れない町を1人ぶらつくのは新鮮でドキドキする。魔法も多少使えるようになったので、暴漢対策もばっちりだ。


 私は乗合馬車に乗って目的地付近まで向かった。広場を通り過ぎて東側のメイン通りに入る。リリアンさんのオススメのお店がこの辺りに複数固まってあったので今日はここを中心に散策するつもりである。ちょうど良いところで馬車を下り、教えてもらったお店に次々と入って贈り物の品を吟味していった。全て見て回った後で一番良いと思ったお店に戻って買うつもりだ。途中自分が気になったお店もいくつか見て回った。


 全てのお店を見て回ったらかなりいい時間になっていた。目ぼしいものはピックアップしたので、決めた店に戻ることにした。お酒は老舗のワイン専門店が1番品揃えが豊富で、店員の接客も良かったためそこで買うことにした。


「試飲は如何ですか?」


 店員に勧められて何種類かフルボディのワインを試飲したが、やはり分からなかった。味の違いは分かるが、自分が飲みやすいと思ったものとカイトが美味しいと思う味は別な気がする。結局店員さんのお勧めと価格帯を考えて購入した。

 ちなみに通貨については座学の時に教えてもらっていたので、おおよその物価からこちらの通貨の価値を勝手に円換算していた。その換算ではこの国の平均月収は24万前後くらいだと考えている。しかしここまで考えたところで私は褒賞金の金額を円に換算するのは止めた。自分の金銭感覚が狂いそうだったからだ。

 正直今の私の懐であればもっとグレードの高いワインに手を伸ばすことも可能ではあるが、高すぎるプレゼントは却って気を使うし、引かれる可能性だってあるので手頃な値段のものにした。

 

(まぁでもこのペンダントはそこそこするよね、魔法石ついているし)


 実は気になって宝飾店にも寄っていた。プレゼントされた物の価格帯を調べるなんて無粋極まりないが、この世界の装飾品の相場を知らなかったし、お返しの価格帯を決めようと思ったからだ。結果分かったこととしては魔法石のついている物はどれも値段が跳ね上がっているということであり、お返しの価格帯の参考にはならなかった。このペンダントはもうカイトの気持ちとして受け止めるとして、そのお返しは相手が気を使わない程度にそこそこ良い物という絶妙なラインを攻めることにした。


 ついでに白ワインの辛口もいくつか試飲して、結局分からなかったので店員さんのオススメで1本購入した。これはリリアンさんの分である。


(プレゼント選びって大変だよなぁ)


 けれど、誰かのことを思いながら真剣に贈り物を選ぶ時間はやっぱり楽しいし尊い時間だとも思う。 

 酒店を出て次に向かったのはガラス店だった。ここにあったワイングラスに一目惚れしていた。他にも何店舗か回ったが、これほどときめくものはなかった。


(やっぱり綺麗、これにしよう)


 形は一般的なワイングラスだが、非常に透明なガラスでできており、しかも持ち手の細い部分には色つきのガラスがまるでインクを落としたかのようにすっと入っていた。シンプルだが上品な逸品だ。お値段も贈答用なら妥当だと思えた。中に入っている色付きガラスの種類は赤、青、緑の3種類から選べ、どれも色濃く落ち着いていて素敵だったが私は緑を選択した。白ワインでも赤ワインでも1番映えそうな色だった。


「ここでお渡し致しますか?それともお手元のお荷物と一緒に郵送致しますか?」

「…持って帰ります。あ、プレゼントなのでラッピングを」

「畏まりました」


 郵送サービスがあるのかと驚いてしまった。思い返してみると町中で大きい荷物やかさばる荷物を持って買い物している人はあんまりいなかった。それに大きなリュックサックやトートバッグを持っている人も見かけていない。かくいう私も今日はリリアンさんにポシェットを持たされていた。荷物が多くなるようなら郵送サービスを使うため荷物を持ち歩く人がほとんどいないのだろう。結果として鞄文化が発達しないということか。荷物を持ち歩かないのは美徳なのか防犯のためか便利だからかは不明である。


(今度リリアンさんに部屋の住所を教えてもらおう)


 今日はどのみち住所が分からなかったので手持ちだ。しかし住所を知っていたところで郵送サービスはきっと有料なんだろうなぁと考えてしまうケチな自分がいたので、もしかしたらこの先も利用しないかもしれない。


 用事を済ませたところでまだ少し時間に余裕がありそうだったので、西側のメイン通りの方にも足を運んだ。ガーゴイル襲撃事件以来ここがどうなっているかずっと気になっていたのだ。


(この間壊れた建物がもう直っている!)


 私が見る限り、メイン通りに面しているお店は通常営業しているようだった。あれから30日も過ぎていない。元の世界の建設スピードを考えると格段に早い。魔法の力のなせる業だろう。私は人の逞しさに感動すると共に、ずっと気がかりだったことが解消してほっと胸を撫で下ろした。すっきりしたところで、北側メイン通りに帰る乗合馬車に乗って帰路に着いた。

次回は明日の12時台に投稿予定です。

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※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。

※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。


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