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23.子スライムの討伐

※バトルシーンが含まれます。苦手な方はご注意ください

 翌日の日の入りになった。作戦決行の時間である。討伐の際に何かあってもいけないので、自警団の人たちやフィンさんには、一時的に別の場所に避難してもらっていた。


「まずは二手に分かれて、湖の周りを半周しよう」


 カイトとエリスさんと私は時計周り、オークリーさんとギルバートさんとレオンさんは反時計回りで湖を回ることにした。湖はカルデラ湖のような地形で、周りを山に囲まれていた。かなり広く、半周でも普通に歩いて5時間くらいかかる。討伐しながらならもっとかかるだろう。合流する頃にはきっと真夜中だ。そしてそこから子スライムの湧き具合を考慮して明け方まで討伐する。しかしその後が本番で、お腹を空かせたボススライムを最後に倒さなければならない。今日は長丁場である。私はどれだけ体力を温存できるかにかかっているだろう。

 私たちはカイトを先頭に私、最後尾はエリスさんが担当した。ランタンは真ん中の私が持っている。


(昼間とは雰囲気が全然違う)


 今日の日中は手分けして湖の周りを散策していた。どうせスライムには遭遇しないが、地形や状況などを見るためだ。湖からほとんど同心円状に被害が広がっており、動物には遭遇しなかった。植物もスライムが食事をしたところはかなり立ち枯れている。腐食作用が残っていたら爛れてしまうので迂闊に触らない方がよさそうだった。


(灯りが心許ない)


 現代人にとって全く電灯のないところなど、よほどの田舎でもない限り歩かない。視覚情報が8割と言われるが、それに頼れない今、私の聴覚はひどく研ぎ澄まされていた。


パキッ


「アミナフォトス―光の防御―」


 光属性の防御魔法だ。自分を中心に球状にガラスのようなシールドを形成し、全属性魔法と物理攻撃を防いでくれる大変優秀な魔法である。ただし常人はあまり長時間は使えないのと多段攻撃に脆いというデメリットがある。

 私が防御魔法を使った瞬間に腐食液がシールドにかかる。ヘドロのような汚い緑色だ。体液を飛ばしてきているので恐らくスライムも同じ色だろう。ジューという音とともに腐食液が蒸発していった。


「バラネロー―水の球―」

「ブロビー―雷―」

「カファリステト―浄化せよ―」


 すかさずカイトがスライムを水球に包み、エリスさんが雷を打ち込んで倒して、腐食液で汚染された水を私が浄化した。綺麗になってからカイトは魔法を解く。ちなみにこの水は聖水になっており、スライムの腐食作用を食い止める効果がある。


「耳が良いですね」

「たまたまです。頭上から降って来られると厳しいと思います」

「その時は僕が対処しますよ」


 エリスさんが優しく笑う。いつもならその美人の笑顔で緊張しているところだが、今は却って緊張が解れていくのが分かる。


(私、気負いすぎだ。全部を自分でやる必要はないのに)


「はい、ありがとうございます」

「アリサはよくやっているよ」


 カイトもフォローしてくれる。


「本当ですよ。この攻撃力と防御力向上はいつまで持つんでしょう?」


 討伐を開始してすぐに攻撃力向上と防御力向上の魔法をかけていた。光属性魔法にはこういうものが多い。


「切れたらまたかけますよ」

「頼もしい限りです」


 最初のうちは雑談をする余裕があったが、そのうち多くの子スライムに囲まれはじめた。


「数が多いな」


 カイトが呟く。


「バラフォトス―光の球―」


 私は頭上高くに強い光源を打ち上げる。これで闇属性のスライムたちは動きが鈍くなる。


「バラネロー―水の球―」

「ブロビー―雷―」


 カイトとエリスさんが次々とスライムを閉じ込めては倒していく。


「ブロヒフォトス―光の雨―」


 途中から気が付いたのだが、光属性魔法で攻撃したらスライムの身体が浄化しながら倒せるので、私も数を減らすのに貢献することができた。


「カファリステト―浄化せよ―」


 自身の攻撃の合間にカイトが保持している水球を急いで浄化する。カイトは残っていたスライムにその聖水をそのままかけて倒していた。


(私、案外上手くできているのでは?)


 それもこれも偏にアギオスさんの特訓の賜物である。今度アギオスさんに会う際には何かお礼をしなければ。


 ベチャ!


 油断していたら頭上からスライムが落ちてきていたようで、エリスさんが目にもとまらぬ早さで抜刀し、剣の平たい部分でとばしてくれた。


「バラネロー―水の球―」

「ブロビー―雷―」

「カファリステト―浄化せよ―」


 本日何度やったか分からない連携で、とばされたスライムはあっという間に仕留められていた。


「ありがとうございます」

「有言実行ですよ」


 今度のエリスさんの微笑みは破壊力抜群で、私は直視できなかった。

 その後も何度もスライムに囲まれたが、似たような連携で切り抜けていく。

 休憩を挟みつつ進んで、大分夜が更けた頃、前方に仄明るい光が見えた。


「ようやく合流できそうだ」


 その前にまた少しスライムが湧いてきたので3人で戦い、終わる頃に合流した。


「お疲れさまです」

「お疲れ様」


 皆口々に挨拶を交わしてからカイトが様子を伺った。


「そっちはどうだった?」

「そんなに多くなかったよ」


 オークリーさんが返事をする。


「そうか」

「こっちは千本ノックだったよ」


 エリスさんがそんなことを言う。


(あれ、やっぱり多かったんだ)


 初めてなので程度が分からなかったのだが、初心者がいきなりハードモードをやらされていたらしい。


「そんなに?」


 レオンさんが吃驚していた。


「ああ、かなり襲撃された。おそらくアリサが狙われたんだろう」

「え?私?」

「魔力が高いからでしょうか?」


 ギルバートさんが原因を教えてくれる。


「そうだ。魔物にとって魔力の高い人間は良い餌なんだろう」

「そっかぁ。アリサさん美味しそうだったんですね」


 レオンさんが笑うが、そう言われても全然嬉しくない。


「こっち半周はアリサのおかげで大分数が減っていると思う。アリサとギルが交代して、元来た道を戻る方が良さそうだ」


 つまり私はオークリーさんとレオンさんと組んで、そのまま前方に進むということか。オークリーさんとレオンさんは元来た道を戻るということになる。


「了解」

「そうしよう」

「分かった」


 皆異存はないようで、小休止後また二手に分かれて進むこととなった。



「パゴマ―凍れ―」

「ディノダサエラ―風の付与―」

「カファリステト―浄化せよ―」


 レオンさんは風属性魔法を剣にエンチャントし、氷を一刀両断していた。物理攻撃が加わって確実に仕留められるそうだ。

 チームが変わってもやることは同じだった。小休止が終わって少し歩いたところでまた敵に遭遇していた。


「本当に同じ道とは思えないくらい多くなりました」

「腕がなるぜ」


 オークリーさんは驚いていた。レオンさんはまだまだ元気そうだ。


「ずっとこんな調子ではアリサさん相当お疲れではないですか?」

「そうですね、でも大分慣れてきました」


 私は心配をかけないようにオークリーさんに返事をするが、既に疲労の限界は突破している。慣れない戦闘で神経はすり減っていて、最初の頃よりも集中力がなくなっている気がする。何より体力が一番問題である。


(一周40 km、全部歩かされるとは思わなかったわ)


 運動靴ならまだしも固いブーツで40km踏破することになろうとは。足の負担が凄い。ふくらはぎがパンパンである。今すぐ横になって足を上げたいくらいだ。靴擦れも何度もしていたが、休憩の度にこっそり治癒魔法を使って治していた。そうでもしないときっとみんな凄く心配してしまう。


「休憩したかったらいつでも言ってくださいね」

「ありがとうございます」


 慣れてきたのも本当だが、こういう油断こそ命取りである。私はまた気を引き締めるのだった。

次回は明日の12時台に投稿予定です。

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※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。

※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。


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