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22.贈り物

「1つ気になっていたんだけど、ここの住民たちの食料は大丈夫なの?」


 会議が終了したので私は心配していたことをカイトに訊ねていた。きっと湖は大事な食料調達の場であると共に飲み水や生活用水などにも使われていたのではなかろうか。


「そもそも自警団以外の人たちは安全な場所に一時避難しているし、最低限の水や食料は国からの支援で商隊が届けにきているはずだ。それに管理者のフィンさんは召喚魔法を使える」

「え、召喚魔法?」

「神話の一節にあっただろう」


 召喚する話はあった。それは確か5種族の始祖が誕生した際、二柱にそれぞれ己の得意とすることを奏上した場面だ。


魚人曰く、

「我々の僕は食すと大変美味であります。

 無数の食料としての魚を召喚し、水辺に住まわせ、

 いつでも食せるようにしておきます」


「それってまさか?」

「そう、魚人族の中には始祖の名残で魚を召喚できる人がいるんだ。フィンさんに限らず、管理者はみんな管理するために召喚魔法が使える。今は自然法則はイヒネイカ様が管理しているけど、生態系が崩れてしまうこともたまにあるから、そういう時に管理者が召喚魔法で生態系を元に戻すんだ」


 神話では自然法則やフェアリーの管理などは元々妖精人という種族が行なっていたが、神の逆鱗に触れてしまいドラゴンに姿を変えられており、現在それらの管理は女神イヒネイカが代わりに行なっていることになっている。


「もしかして獣人族や鳥人族も?」


 獣人や鳥人の始祖も魚人の始祖と同じような奏上をする一節があるのだ。


「そう。それぞれ3種族は各地域に管理者をおいて、生態系が乱れると召喚魔法を使って増やしている。多くなったら狩りをするだけだ」


 ちなみに人間の始祖はそういった奏上をしていないので召喚魔法は使えない。


「じゃあ食べ物には困らないのね」

「まぁ魚だけだし、無限に出せるわけじゃないけどな」

「問題は湖ですよ」


 エリスさんが割って入る。


「聞いた話が本当なら、スライムが無事に討伐できたとしても、あの湖はしばらく使えないでしょう。ここは美味しい魚がたくさん取れる良い漁場だったので、市場もしばらくは魚不足になると思います」

「奇跡兵団の除染作業次第だろうな。けどここの湖はエリスの言う通り漁獲量もそこそこあるから、優先的に回って来るんじゃないか?」

「だと良いけど」


 各兵団のサポートに土地の除染、奇跡兵団のやることは山積みのようだ。


「さぁ、明日に備えて今日はゆっくり休もう」


 オークリーさんがそう言ってこの場はお開きになった。



「あ、すまない、アリサ。話があるから少し残ってくれないか?」


 他の隊員たちはそれぞれの客室に帰る中、私だけ呼び止められた。


(なんだろう?)


 明日の動きについてだろうか。これでもアギオスさんにしごかれて、付け焼刃ではあるがサポートの仕方のいろはは学んだつもりだ。まぁそうは言ってもきっとギルバートさんの足元にも及ばないので、あっちのチームの方が安定していて、討伐数も多くなるだろう。

 しかし仕事とは一切関係のない話のようだった。


「疲れているところ申し訳ない。なかなか渡すタイミングがつかめなくて。これ、受け取って欲しい」


 カイトはそう言ってラッピングされた縦長の箱を取り出したのだ。


「え?」

「ほらこの間、アリサの白いハンカチ、俺の血で駄目にしただろう?あの時洗って返そうと思っていたのに受け取り損ねたから」


 ガーゴイル襲撃の際、目元の血を拭ったハンカチのことか。たった1枚の布切れの対価には見合わない。


「そんな、お礼なんて良かったのに」

「俺がお礼をしたかったんだ」


 そう言われてしまうとせっかくの好意を無下にすることもできず、私はプレゼントを受け取った。


「いま開けても良い?」

「ああ」


 リボンと包装紙を綺麗に外して上箱を開けると、中にはペンダントが入っていた。トップが真珠くらいの丸い大きさで、ホワイトムーンストーンのような綺麗な白い石だ。手に取ると触ったことのある感触だった。


「これ、もしかして魔法石?」

「よく分かったな」


 やはりハンカチ1枚のお礼には見合わない。前に聞いた話だと、何かしらの属性軽減の効果があるはずだ。白は光属性の石だから、打ち消すとしたら闇属性の軽減だろうか。今回の任務のためと考える方が自然である。


「つけて良いか?」

「あ、うん」


 ここまで来たら断ることは出来なかった。カイトが私の手からペンダントを取り、そっと首の後ろにチェーンを回す。


(顔が、近い)


 こんな紳士的なことを今まで男性にされたことがないので思わずドキドキしてしまう。


「できた。やっぱりこれにして良かった」


 カイトが満足そうに頷いている。ペンダントを選ぶときに他のものと迷いでもしたのだろうか。だとしたら真剣に選んでくれたその時間含めてのプレゼントだ。


「本当にもらって良いの?」

「ああ、お守りだ。服の上でも良いけど、身体を守るためのものだから中に隠した方が効果がある。まぁ、ある程度は魔力を込めてあるから大丈夫だとは思うが」

「じゃあ中に入れておく。外れて無くしても嫌だし」


(それに何だか気恥ずかしいし)


 顔が火照る。まともにカイトの顔が見られないが、まだお礼を言っていなかった。


「素敵なプレゼントをありがとう」

「気に入ってもらえて良かった。どういたしまして」


 カイトがほっとしたように笑う。私は自分がどんな表情をしているのか分からなかった。

 部屋を出た後も、何だかずっと変にドキドキして緊張していた。


(イケメンは、これだから困る)


 自分の客室に戻って、真っ先に窓辺に向かった。月明かりが入っていて明るい。そこにペンダントをかざしてみる。月に照らされて青白く光るそれはちょうど今浮かんでいる満月のようで、ただひたすらに美しかった。


(大事にしよう)


 ペンダントのトップを握りしめて、無くしませんようにと願った。

次回は明日の12時台に投稿予定です。

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※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。

※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。


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