20.到着
どうしても最初の魔物討伐なので説明回みたいなのが続いています……すみません……
「何だか楽しそうだったな」
午後の昼下がり、本日5回目の休憩時間だった。休憩は全部で6回を予定していたので、目的地まで大分近づいているはずだ。馬車から下り、入念にストレッチをしていたところでカイトに声をかけられた。
「そう?ねぇ、サリア様ってそんなに男前だったの?」
私の中のサリア様像は完全に宝塚の男役になっていた。
「否定はできない。でも女性らしい部分もたくさんあった。人の性格を二分することなんてできないだろう」
「それはそうね。変な質問だったわ」
私は何でそんな話題を振ったのだろう。
(サリア様についてもっと知りたかったから?)
それともカイトから見たサリア様をもっと知りたかったからだろうか。
「それにしてもこの服、もっとどうにかならなかったのかな?」
私は大きく話を逸らすことにした。
「もっとどうにかって?」
「だって真っ白だし高そうだし。泥はねとか気になるでしょ」
「制服だし、汚れるのは仕方がないんじゃないか?それにその服、魔法石が練り込まれているから防護としての性能もあるはずだ」
「何それ?この服そんなに凄いの?」
「謁見の時の魔法石は覚えているだろう?」
「うん」
「あの魔法石には使い道が2つあって、1つはアリサがやったように魔法属性の適正を調べることができるのと、もう1つは魔力を込めると特定の属性の攻撃を軽減できるようになる。例えば赤色の魔法石は風属性の攻撃を軽減させるんだ」
「へぇ、凄い」
デザイン重視だと思っていた制服にそんな性能が備わっていたとは。
「裏地の布が黒だっただろう?その布地に練り込まれているんだ。近衛兵団と奇跡兵団の制服だけ全属性の軽減と物理攻撃軽減の効果がついているんだが、恐らくアリサの制服も同じ仕様になっているだろう」
あの場にはなかったが、透明の魔法石もあるらしく、それは物理攻撃を軽減させるらしい。
「それって物凄いことじゃない!?」
ほぼ無敵ではないか!
「軽減と言っても、本当少しだけな。ないよりはマシってくらい」
「あ、そうなんだ」
魔法石を石として持っているならもっと効果があるみたいだが、石を砕いて布に練り込んでいるくらいではそれほど効果はないらしい。鎖帷子くらいか。
「でも、裏地の布ならやっぱり表地は白じゃなくても良くない?」
騙されかけたが、表はデザイン重視ということだろう。
「まぁ、似合っているから良いんじゃないか?」
「そういう問題じゃない」
カイトが軽やかに笑う。つられて私も笑ってしまった。
その後も馬車に揺られ続け、概ね予定通り目的地に到着した。疲労困憊であるが、夕食後は現地の人たちに状況を詳しく聞き、対策を検討しなければならなかった。そして明日もしくは明後日には魔物の退治に赴く予定だ。
「お疲れ様です。これ良かったらどうぞ」
声をかけてくれたのはオークリーさんだった。手にはお水を持っている。
「ありがとうございます。ちょうど喉が渇いていたところで」
ご厚意に甘えて頂くことにした。
(それにしても、私以外みんなピンピンしているなぁ)
近衛兵の皆さんには疲れの色がなかった。上手く隠しているのかそもそも鍛え方が違うのか。
「皆さん、全然疲れていないように見えます」
「え?まぁ多少は疲れていますが、これが仕事ですので」
もっと体力を付けなければいけないと思った。
「凄いですね。私なんかずっと馬車に乗っていただけなのに、一番疲れている気がします」
「慣れですよ、何も凄くなんかありません。アリサさんの方がずっと凄い」
「私、何もしてませんよ」
オークリーさんは少し言い淀んでいたが、意を決したように話し始めた。
「自分、実は先日のガーゴイル襲撃の際、現場にいたんです」
「そうだったんですか」
「あの日はたまたま多くの兵が王都を離れており、戦況は芳しくありませんでした。最終的に自分たちだけでも鎮圧することはできたと思いますが、もっと被害は大きくなっていたはずです。アリサさんのおかげで被害を最小限に食い止めることができました。本当に感謝しています」
オークリーさんの真っ直ぐな言葉が私には嬉しかった。
「あの時は一心不乱で、自分でも何が何だかあまりよく分かっていませんでした。でも、そう仰って頂いてありがとうございます。とても励みになります」
疲れが吹っ飛んだように心が軽い。
(この人たちのためにも頑張らなきゃ)
ここで無駄死にさせるわけにはいかないのだ。
「おーい、置いてっちゃいますよー」
レオンさんが手を振って呼んでいる。私たちは急いで後を追った。
ここは湖の少し手前にある魚人族の屋敷だった。この湖一帯を管理し、この辺りに住んでいる魚人族を取りまとめている管理者のお家らしい。貴族なのかと思ったが、この世界に貴族制はないらしい。管理者はこの土地や湖を治めている領主ではなく、あくまでも湖や土地は皆の共有の財産であり、それを取りまとめているだけなのだという。
屋敷は王都と同じような石造りの家だった。田舎で土地がある分、王都の一戸建てよりも大きく作られている。
カイトがドアベルを鳴らす。ちなみに今回このパーティーの隊長はカイトらしい。私も基本的にカイトの指示で動くことになっている。
「ようこそ、いらっしゃいました」
出てきた家主は聞いていた通り魚人族の男性だった。魚人といってもほとんど人間と変わらない。肌が少し水色に近い青白さで、手には水かきが付いている。足は人間と同じく二足だ。髪は肌よりも濃い水色で、長い髪を後ろで1つに束ねていた。服は白いフリル付きのシャツに青いベストとスラックスを合わせている。暑いのかコートは羽織っていない。
私たちを見て安堵した顔をしたが、怯えているのが分かる。外の様子をきょろきょろと伺っているのだ。きっとドアを早く閉めたいのだろう。
察したカイトは私から先に家に入るよう合図したので、意を汲んでさっさと入った。他の人たちも続いて入り、カイトが最後に上がり込んだ。家主さんはカイトが入るや否や扉を閉めてほっとした顔をした。よほど外が怖いらしい。
そのまま案内されたのは大きな食卓のある部屋だった。人数分皿が並んでいる。お腹が空いていたので有難かった。
「私はフィンと申します」
家主のフィンさんが挨拶をしたので、それに続けて私たちも順に挨拶を交わした。
「本日はさぞお疲れでしょう。何のお構いも出来ませんが細やかな晩餐を用意致しましたので、お召し上がりください」
「お心遣い痛み入ります」
出てきた料理は魚のムニエルがメインだった。共食いには当たらないのだろうかと思ったが黙って食べることにした。
「とても美味しいです」
「お口に合ったようで何よりです」
食事中はせっかくの美味しい料理が台無しにならないよう他愛ない話でアイスブレイクをした。
次回は今日の20時台に投稿予定です。
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※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。
※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。




