17.5 神話
読まなくても分かるように本文を作成していくつもりですが、読んでいた方が分かりやすいと思います。
神殿の石壁の『神話』より引用
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はじめ、世界には何も無かった。
その何もない空間に亀裂が生じ、狭間ができた。
その狭間から全知全能の神、メタクシーが誕生したのである。
さらにメタクシーが生じて間を置かず、女神イヒネイカが出現した。
二柱は結ばれ、この世界に天と地を生み落とした。
そこから二柱は広大な天と地の狭間で美しい調べの歌を歌った。
神メタクシーの歌声は天高く響き渡り、雲を形成した。
女神イヒネイカの歌声は地を這って地形を形成した。
その二柱の歌声は溶け合い、混じり合い、四方へ轟き、
月と星と太陽と海をも創造した。
やがて二柱は歌を歌うのを止め、今度は踊り出した。
そのリズムは後に世界に自然の法則と四季を与えることになる。
踊り終わった二柱は宴会を開くために、
従者として人間、獣人、鳥人、魚人、妖精人それぞれの夫婦を生み出した。
従者は出現するや否や、二柱にそれぞれ己の得意とすることを奏上した。
妖精人曰く、
「我々の僕は食すとお腹を下します。
その代わり無数の僕を召喚して全ての自然とその法則を管理し、
魔法を使うのを手助け致します」
魚人曰く、
「我々の僕は食すと大変美味であります。
無数の食料としての魚を召喚し、水辺に住まわせ、
いつでも食せるようにしておきます」
鳥人曰く、
「我々の僕は魚とはまた違った風味で大変美味であります。
無数の食料としての鳥を召喚し、草木の茂る場所に住まわせ、
いつでも食せるようにしておきます」
獣人曰く、
「我々の僕は魚とも鳥ともまた違った風味で大変美味であります。
無数の食料としての獣を召喚し、水辺以外の至る所に住まわせ、
いつでも食せるようにしておきます」
人間曰く、
「我々は僕を有しておりません。
その代わり地を耕し無数の植物を育て、いつでも食せるようにしておきます」
二柱は一番初めに生まれた人間に他の四種族の統括もするよう命令した。
そして五種族の従者たちは互いに互いを補い合いながら二柱の宴会を催した。
宴会は長く続き、疲れた女神イヒネイカは
月と太陽を代わる代わる昇らせ、昼と夜を作った。
これによって時が生まれ、神メタクシーが数え始めてから
十日十晩で宴会を打ち切ることにした。
二柱は丁度この時夜に眠ったので、
大抵のものは夜に寝て、昼に起きるようになった。
また揺蕩っていたリズムと生じた時が歯車が噛み合うように合致し、
自然法則と四季が動き出した。
二柱と五種族はしばらくこうして暮らしていたが、
最初の宴会の日から四百日が経った頃。
神メタクシーが五種族を呼び出して曰く、
「私とイヒネイカは地に大変長く居過ぎてしまった。
天が嫉妬して最近頻繁に雷を鳴らすので、しばらくあちらの機嫌を取りにいく。
お前たちはここに残り、私たちがいつ戻ってきても
すぐさま暮らせるように万事取り計らうこと」
そう言い残して二柱は天へ昇られた。
残された五つの兄弟種族は初めのうちは言いつけを守って生活していたが、
時が過ぎることに互いに不和が生じ、頻繁に喧嘩をするようになった。
魚人曰く、
「獣人と鳥人の召喚した僕が、我々の召喚した僕を盗み、食している」
鳥人曰く、
「それなら我々の召喚した僕も、獣人の召喚した僕に盗み、食されている」
獣人曰く、
「我々がそう命じたわけではなく、自然法則の食物連鎖に従い事がなされている。
全ては二柱の御心のままである」
魚人曰く、
「それであればそのように管理している妖精人が悪いのか」
妖精人曰く、
「自然法則に従い管理している。濡れ衣を着せられるなど心外である」
憤慨した妖精人は召喚した精霊たちを皆引っ込めた上に
どこかへ隠れてしまったので自然法則が狂い出し、
春にもかかわらず花が咲かなくなり、夏にもかかわらず雪が降り、
秋にもかかわらず日が落ちず、冬にもかかわらず雨が降ってしまった。
その上他の種族は魔法が使えなくなり、僕の管理ができなくなってしまった。
そこで人間は妖精人の機嫌を取ろうとしたものの、妖精人の居場所がつかめず
魚人、鳥人、獣人から役目を果たせない落ちこぼれと揶揄されるようになった。
しばらく四種族がいがみ合う中、妖精人は四種族の僕を一つずつ、
それぞれ最も残忍な方法で殺し、それを互いの種族がしたかのように見せかけた。
妖精人の策略によりとうとう四種族は激昂し、戦争が勃発した。
それぞれの種族は互いの種を存続させるために沢山の子供たちを生み出し、
その子供たちがまた子供たちを産み落とし、戦いで死んでは生まれ、
死んでは生まれを繰り返し、ここで四種族の生と死が形作られた。
妖精人は四兄弟の戦争をただ愉快な気持ちで眺めていた。
長い戦争を繰り返しているうちに地が傷み出し、
住める場所が徐々に削られていった。
そうしてある日、二柱が何も知らずに戻ってくると
荒廃した大地が一面に広がっていた。
二柱は種族の長となった初代の五兄弟から事情を聞き、
全てを平等に罰することに決めた。
神メタクシーは罪を断定して曰く、
「魚人は発端を作り出した。鳥人と獣人は罪を擦り付けた。
人間は四兄弟をまとめることができなかった。
妖精人は最も悪く、狭量な心で皆を困らせ、
役目を自ら放棄し、その上戦争の引き金を引いた」
女神イヒネイカは罰を執行して曰く、
「食物連鎖は自然法則の一部であり、是である。これを良しとせよ。
その上で魚人は鳥人と獣人の召喚した僕を食せる凶暴な僕を創造なさい。
鳥人は獣人の召喚した僕を食せる凶暴な僕を創造なさい。
魚人、鳥人、獣人は三すくみの構造でもって禍根を断ち切ること。
最も悪い妖精人は僕の精霊の管理を我に委ねること。
汝の気まぐれで他の種族の魔法が使えなくては困ります。そしてさらに」
女神イヒネイカが指をパチンと鳴らすと、
美しかった妖精人がゴツゴツとした見慣れぬ生物へと姿を変えてしまった。
「汝らの種族は今から妖精人と名乗ることを禁ずる。
これからはドラゴンと名乗るがよい。
また汝らの種族にも他の兄弟と同じように生と死を与える。
そして人間には他の種族をまとめるためにより多くの魔力と魔法の才を与える。
代わりに寿命を他のどの兄弟よりも短くする」
そして、誰も住めなくなった土地の一画に二柱は楽園を作った。
また女神イヒネイカは楽園の中に神殿も創造した。
女神イヒネイカ曰く、
「ここを一つの国と定め、この小さな楽園を保ち、暮らしなさい。
そしてもう一つ罰を与える。
この国の外を亡霊の地とした。そこは戦禍を免れなかった無辜の民が集う場所。
私はそこに彼らの長たる混沌を産み落とした。
彼らの憎しみは谷よりも深く、悲しみは海よりも濃い。
嘆きの声は高い山並みを越え、苦しみは地を這い、怒りが天を衝く。
そこは不毛の地。誤って踏み入れた場合は命の保証はできぬ。
しかし生者がこの地をかき乱さない限り、亡霊は微睡みの中に居続けるだろう。
何故ならここは彼らの安寧と鎮魂の地なのだから。
彼らがその微睡みから目覚める時、それは生者が足を踏み入れた時か、もしくは
――――欠けている部分①――――
混沌は全ての汚穢と厄災を引き連れて復讐に来るであろう。
我は神殿の試練の先に手助けの導を置いておく。
これに臨み、導を頼りに混沌を打ち払うことができた時、
我々はまた地上に降りてこよう」
神メタクシーの罪の断定と女神イヒネイカの罰の執行により戦争は仲裁された。
四種族は二柱に平伏した。
しかし、ドラゴンだけは二柱に反抗した。
曰く、
「なぜ自分だけ姿を変えられなくてはならないのか」
女神イヒネイカ応えて曰く、
「地上に降りてきた時に汝らと人間の受けた罰を解いてやろう」
そう二柱が告げると天へと昇って行った。
ドラゴンはその裁定に納得ができず、
「解せぬ、解せぬ解せぬ」
そういうや否やドラゴンは北の山へ飛翔し、姿を見せなくなった。
四種族はいつかドラゴンの気も収まるだろうと先に国を整備することにした。
パラディソスというの名はこの時つけられた。
国はお盆のような形をしており、三方を山々に囲まれていた。
川と湖沼、そして南にある海は魚人が、
草木の茂るところと水辺以外には獣人と鳥人が、
人間は国の中心部の平野に田畑と国を管轄する建物を建築した。
四種族はそれぞれ自分たちの中でも際立って優秀な者たちを選出し、
他の三種族長が話し合いで一人を決めた。
また人間の種族長を国王と呼んだ。
四つの種族長たちは話し合いで問題を解決することにしたが、
最終的な決定権は国王にあるとした。
万が一私利私欲のために権利を行使する長が現れた場合は、
各種族長あるいは国王の権限によって悪しき長を追放する。
こうして国の法を整え、ドラゴンを除いた四種族はこの国で豊かに暮らしていた。
それを北の山の頂から見ていたドラゴンは
自分たちだけが除け者扱いされている気がして我慢がならず、
また食料を確保しなければならないことからも
頻繁に国に降りて来ては悪さをし、盗んで腹を満たすようになった。
これに困じた四種族はドラゴンが生きていけるほどの食料を毎日山の麓へ供給し、
襲ってくる際には打ち払うことにした。
四種族ともいつかはまた五種族の兄弟で宴ができると信じていた。
しかしドラゴンの憎しみは増すばかりで一向にその兆しはなかった。
何度かドラゴンが徒党を組んで襲ってきては双方に犠牲者が出た。
しかし四種族は決してドラゴンを討伐し殲滅しようとはしない。
――――欠けている部分②――――
※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。
※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。




