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17.討伐依頼

大変申し訳ございません、元々この話は24日の12:20に掲載予定だったのですが、誤操作で一回UPしてしまいました。

慌てて削除したのですが何人か既にご覧いただいている方がいらっしゃったみたいなのでこの時間に掲載し直しました。

変な挙動をしてしまったこと、また予定通りにUP出来なかったことを深くお詫び申し上げます。

「魔物の襲撃が激増しているのは知っているな?」

「はい、伺っております」

「現在、王都から地方に騎士兵団や魔法兵団、奇跡兵団、更には近衛兵団も派遣しているのだが対応しきれていないのが現状だ」


 軍事についてはまだ誰からも教わっていないので詳しいことはよく分からないが、近衛兵団以外にもいくつかあるみたいだ。考えてみたら当然か。奇跡兵団だけ何をする部隊なのか不明だが、国王陛下の話を遮るわけにはいかないので後で誰かに訊くしかない。


「特に魔物の中でも強力な個体が数体入り込んでおり、各地で深刻な被害を出している」


 それはあのガーゴイルの親玉みたいな個体のことだろうか。


「そこでだ。フェアリーアイを持つお前に、これらの魔物の討伐をお願いしたい」


(いやいやいや、魔法初心者の私にいきなりお願いすることじゃないでしょ)


「国王陛下、お言葉を返すようで恐縮ではございますが、私は魔法初心者でございます。手練れの兵たちで仕留めきれない魔物を、私が倒せるとは思えません」

「お前の潜在能力の高さを買ってこのようにお願いしているのだ」


 これがポテンシャル採用というやつか。


「当然報酬は出す。余のできる限りで、お前の望むものを与えよう」


(報酬、私の望むもの?)


「勿論、これは余の国の問題である。正直なところ、異世界から来訪したお前には関係のない話だろう。よって断ることもできる。これは強制ではなくあくまでもお願いである」


 ここで陛下は立ち上がると、階段を下りて私の前まで来た。


「余が頭を下げるほど、フェアリーアイはそれだけ価値のある能力であり、魔法使いである。どうかこの国のために力を貸してはくれないだろうか?」


 陛下は私の目の前で右手を胸に当ててお辞儀をした。


(私は今、国王陛下直々に頼みごとをされているのか)


 正直、どうしたら良いのか分からない。この国におけるフェアリーアイという存在がどれほど貴重なものなのかは理解した。しかし実際自分が討伐に行って、魔物を本当に倒せるかは全く見当がつかない。失敗したら遁走するか、最悪は命を落とすだろう。


(でも、陛下は私にならできると信じているからこそ、この国のために頭を下げているんだよね)


 魔法初心者だろうが何だろうが、それを補って余りある天賦の才がフェアリーアイということなのだろう。


「頭をお上げください、陛下」


 陛下は顔を上げる。背が高くてガタイも良いのでこうして近くで見るとやはり威圧感があった。しかし目は別だ。戦場に行かせるべきか迷っている。そういう目をしていた。


(私にならできるって信じているんじゃない。国王という立場上、この国のためにお願いするしかないんだ)


 もしかしたら陛下はサリア様と私を重ねているのかもしれない。フェアリーアイとして危険な戦場を駆け抜けた愛娘。そして最後は人身御供としてこの国ために散っていった勇ましく凛々しいお姫様。親なら誰だって自分の子供を死地には向かわせたくなかっただろう。私は陛下の娘ではないけれど、そもそも戦場に女子供を向かわせるということに抵抗があってもおかしくない。それでもお願いしてくるのは地方からの圧力があったり、民意があったりするのだろう。

 その陛下の逡巡が見えて、却って私の覚悟は決まった。


「上手くできるか分かりませんが、お引き受けいたします。ただ、1つだけお願いがございます」

「なんだ?」

「報酬には転移魔法の研究をお願いしたく存じます。どうか私の生きているうちにもう1度、転移魔法が使えるよう研究を進めては頂けないでしょうか?」

「…分かった」


 交渉は成立した。


「今後の細かいことはまた追って説明する」

「畏まりました」


 これで謁見は終了した。



 謁見の間を出て自分の部屋に戻る道中、カイトはずっと無言だった。エスコートは受けているが、何だかよそよそしい。


(怒っている?)


 雰囲気がとげとげしい感じだ。しかし原因が分からない。何か怒らせるようなことをしただろうか?先日からずっと様子が変だったので、私は思い切って訊ねてみることにした。


「ねぇ、カイト。何か怒っている?」


 するとカイトは足を止めた。私もそれに合わせて立ち止まった。


「悪い、違うんだ。アリサは悪くない。分かっている、けど」


 カイトは苦しそうな顔をしていた。


「討伐依頼なんて、断ってしまえば良かったんだ」


 絞り出すように言った。それは私にだけ聞こえるような呟きだった。


(前の忠告はこのことだったのか)


 カイトも近衛兵という立場上、国王陛下の意に背くような言動は普通はタブーだろう。陛下と同じで、カイトもサリア様と私を重ねて心配してくれているのかもしれない。


「そうね。危険だということは分かるわ。私も、偉大なサリア様と同一視されたり、代わりを務めるように言われていたなら、役者不足で荷が重すぎるって断るところだった。でも陛下はサリア様の代わりを務めてほしいとは言わなかったわ。私が素人であることを理解した上で、フェアリーアイという素質を買って戦地に派遣しようとしていた」


 サリア様と同じ戦力や戦果を今の私に求められても困る。皆が慕うサリア様と今の私とではまさに月とすっぽん。比較するのもおこがましい。


「この国にとって私の能力がそれほど価値のあるものなら、宝の持ち腐れにするより、協力した方が良いかなって思ったの。私にとってここは異世界だけれど、今はこの世界にいる。先日の襲撃を目の当たりにしたら、とても他人事とは思えなかった。私に何かできることがあるならやりたい。放っておけないよ」


 ノブレス・オブリージュ。身分の高い者は、それに相応しい責任と義務がある。私は身分が高いわけじゃないけど、持っている才能があるなら、その才能を使う責任や義務があるのではないだろうか。ロマンティックに言い換えるなら運命や宿命とでも形容できよう。


「でも、帰りたいんだろう?」


 元の世界に戻るくらいならこちらの世界にいる方が健康的な生活は保証されている。暮らしぶりは間違いなくこちらの方が良いだろう。


(でも、この世界にはサリア様の居場所はあっても、私の居場所はないのかもしれない)


 サリア様と私は容姿が似ている分、自ずと比較される。フェアリーアイのせいで今後その比較は加速するだろう。誰かと比較され続けるのも嫌だが、サリア様の方が良かったなんてことになったら本当に私の居場所はこの世界のどこにもない。それならあちらの世界でクロダアリサでいた方がまだ居場所がある。


「あのお願いは保険みたいなものかな。帰りたいと思ったときに帰れるかもしれないという希望を残しておきたいだけ。だってそもそも帰れる保証はどこにもないでしょ?」


 あくまでも逃げ道の確保に過ぎない。


「もし今、元の世界に帰れるなら帰りたいか?」


 そんなもしもの話を聞いて一体何になるというのだろう?


「きっと帰らないわ。今は私にできることがあるならそれを精一杯やりたいと思っている」


 本当に私が持っているこの稀有な素質で誰かを助けられるというなら助けたい。やらないうちから尻尾を巻いて逃げ出すのは嫌だった。


「そうか」


 カイトは何か諦めたような寂しげな顔をしていた。


「フェアリーアイなんて能力、ほしいやつに譲れたら良いのにな。でもきっと、こういう人にこそ宿るものなんだろうな」

「こういう人ってどういう人?」

「言わない。さぁ、いつまでも廊下で立ち話なんかしていられない。帰ろう」


 カイトのエスコートがさっきよりも優しかった。

第一部完です。ここまでご覧頂きありがとうございます!

ブクマ、評価等リアクション頂けると嬉しいです!

次回は25日の12時台に投稿予定です。

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※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。

※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。


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