16.謁見
扉の前まで行くと内側から扉が開いた。部屋はまさに豪華絢爛だった。まず広くて天井が高い。シャンデリアがいくつも下がり、天井や壁には神話の絵画のようなものがびっしりと描かれている。部屋の左右には恐らくお城の重鎮が勢ぞろいで、みんな細部にまで拘った煌びやかな衣装を纏って直立している。出入口から奥までレッドカーペットが敷かれ、その一番奥には数段高くなったところに背の高くて大きな玉座が置かれていた。
腰掛けているのは先日お会いしたヴィクトリア国王陛下だ。今日はいかにも国王らしい服装で、紺の上下に白いブラウスと胸元にボリュームが出るジャボという布をつけている。そしてそこかしこに金色の装飾が施されていた。真っ赤なマントに身を包み、頭には王冠まで被っている。
カイトがゆっくりと歩き出す。それに合わせて私も歩いた。部屋の中央より少し前に行ったところでカイトが立ち止まる。しかし今日国王に呼ばれたのは私なので、カイトの腕から手を離して私はもう2歩前に出た。事前の打合せ通りだ。
(ここでお辞儀をする)
陛下に敬意を表す礼法はカーテシーではなくお辞儀だった。頭を垂れるという行為が敬意を表すというのは、なじみ深くて非常に助かる。私は両手をお腹の前で組み、背筋を伸ばした状態で腰からお辞儀をした。勿論角度は最敬礼の45度だ。
「頭を上げよ」
その言葉で私は顔を上げた。ちなみに左右に並んでいる人たちも後ろにいるカイトも、私の礼に合わせて同じことをしていた。
「アリサ・クロダと言ったな。お前は先日ガーゴイルの群れがこの王都を襲った際、見事な魔法でこれを打ち払ったと聞いている」
見事かは分からないが倒したのは事実である。
「この現場に居合わせた兵士たちは口を揃えて「全属性魔法を同時に発動させていた」と証言している。これが真であればお前はフェアリーアイを持つ者ということになるが間違いないか?」
「フェアリーアイかは分かりませんが、フェアリーが見えていることは間違いありません。また先日全属性魔法を同時に使用したというのも本当です」
「なるほど。ヴォイニッチ、あれを」
「はい」
先日もいた従者のヴォイニッチさんがお盆のようなものを持ってきた。見ると7つの石がお盆の上に乗っかっている。順に赤、水色、茶、黄緑、黄色、白、そして灰色の石が並んでいる。
「これは?」
「これは魔法石というものです。赤から白までの石は各属性に適性があるかどうかを調べるのに使います。灰色の石はおおよその魔力量を測るのに用います」
ヴォイニッチさんが分かりやすく説明してくれる。なるほどこれが以前リリアンさんが言っていた戦闘職の入団試験に使われる魔法石というやつか。
「お前がフェアリーアイか否か、今ここで明らかにしたい」
陛下が言う。どうやら私は試されているらしい。
「どうすれば良いのですか?」
「まずは赤色の石から順に手に取って魔力を込めてください。適性があれば石が光ります」
ヴォイニッチさんの言う通り、私は赤色の石を手に取り魔力を注いだ。すると石は赤い光を放ち始めた。
「火に適正があることが明らかになりました」
要領は分かったのでサクサクと進めていった。石は次々に光り、4つ目辺りからギャラリーがざわつき始めた。
(確かどんなに優れた魔法使いでも普通なら3つの属性魔法しか使えないって前にリリアンさんが言っていたっけ)
色々魔法について聞いている時にそんなことを言っていた。そしてどの属性魔法が使えるかは生まれながらに決まっていて、努力して後天的に身に着けることはできないということだった。つまり属性魔法が何種類使えるかは天賦の才によって決まっているということである。ギャラリーが4つ目からざわつき始めたのは常人を突破したからだろう。
結局白色まで全ての石が光った。
「全属性魔法に適正があります」
ヴォイニッチさんが宣言した。ギャラリーが騒然としている。遮ったのは国王陛下だった。
「静粛に。最後の石も試してみてくれ」
最後は灰色の石だ。これはおおよその魔力量を測ってくれるのだったか。
「これはどうすれば良いですか?」
「同じく魔力を込めれば石の色が変わります。その色によっておおよその魔力量が分かります」
「分かりました」
私は灰色の石を手に取り、魔力を込めた。石ははじめ何も変化がなかったが、徐々に白くなり、その次は黄色、赤、青と色が遷移し、最後は紫色になった。そして。
『パキッ』
嫌な音がした。手元の石を見ると亀裂が入っている。それは瞬く間に広がってそのまま真っ二つに割れてしまった。
(備品壊しちゃった!?)
私は内心パニックになった。測定どころではない。
(この石、一体いくらするの?)
入団試験くらいにしか使われないということはもしかしたらかなり希少な石なのではないか?しかも今の私は無一文だ。多額の請求をされても支払うことなど到底できない。やばいやばいと狼狽える。きっと今の私は顔面蒼白に違いない。
「石が割れただと?」
国王陛下も驚いている。過失とは言え陛下の目の前で城の備品を壊すなど言語道断だろう。
「壊してしまい、大変申し訳ございません!」
先ほどしたように最敬礼で頭を下げた。これでも駄目なら土下座して謝るしかない。
ざわついていた取り巻きは今は水を打ったように静かだった。その静寂が恐怖心を更に煽る。
(どうしよう、今から土下座に切り替える?)
そう思っていた時だった。
「顔を上げ給え」
陛下からお許しをもらい、最敬礼を解いた。
「何か勘違いをしているようだが、壊れたことは気にしていない」
「さ、左様でございますか」
それを聞いて、私はほっと胸を撫で下ろした。
「魔法石が壊れたということはその石でも魔力量が測れないほど膨大だということだ。最大量の紫を出した者は歴代のフェアリーアイでも何人かいたが、石を壊した者の記録はない」
(つまり、規格外ということ?)
すぐ隣にいるヴォイニッチさんは畏れのような眼差しを向けてきていた。左右のギャラリーを盗み見ても見た似たような感じで、引いているか化物でも見るような視線だった。
(ああ、今すぐこの場から消え去りたい)
試されて晒されてドン引きされて、全く散々である。穴があったら入りたいくらいだ。
「お前がフェアリーアイであることは最早疑いようがない。それが確定した上で、折り入って頼みたいことがある」
国王陛下にとってはここからが本題だったようだ。
次回は明日の12:20投稿予定です。
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※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。
※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。




