15.様子のおかしいカイト
※エピソードタイトルを「謁見の準備」→「様子のおかしいカイト」に変更しました。
「アリサ、アリサ?」
私はノックの音で目が覚めた。しばし寝ぼけて前後不覚の状態だ。
「アリサ?起きているか?」
覚醒した私は慌てて部屋のドアを開けた。
「ごめん、寝ていた!」
考えてみたら私は休ませてもらっていたが、カイトは戦闘後も今まで休日を返上して働いていたのだ。全く無神経にもほどがある。
「あ、慌てなくて良いから、ゆっくり支度して。ロビーで待っている」
カイトはそそくさと行ってしまった。
(何だろう?)
さっきから何だか様子がおかしい気がするが、今は待たせる方が忍びないのでさっさと支度をすることにした。支度と言っても着の身着のままだから何もないと思っていたら、仰向けに寝たせいで髪が乱れていたのでカイトが目を逸らしたのはこれが原因かと納得した。
自分じゃ復元不可能なのは最初に理解していたので大人しく全部解いた。手早くポニーテールにして適当に捻じってお団子にした。後は帰るだけなのでこれで良いだろう。
私が急いでロビーに向かうと、カイトが何かヴィンセントさんと話し込んでいた。
「それはきっと神の思し召しなのだろう」
「でも」
「今後どうするかはアリサ様がお決めになることだ」
「…分かっている」
何の話だろうと思ったところで2人ともこちらに気付いたのでその話はそれで終わってしまった。
「すみません、お待たせしました」
「大丈夫だ、表に馬車を止めてある。早く帰ろう」
「せっかくお越し頂いたのにこのようなことになってしまい、申し訳ございません」
「いえ、とんでもないです。よろしければまた改めてゆっくり伺わせてください」
「勿論でございます」
ヴィンセントさんは優しく微笑んで見送ってくれた。
馬車の中ではカイトが何かずっと考え込んでいるようだったのでそのままにしておいた。変に詮索しても鬱陶しがられるだけだろう。
「今日は済まなかった。他のところも回るつもりだったんだが、余計な邪魔が入ったな」
お城に着く少し前のところでカイトが口を開いた。
「ううん。カイトの方こそ、今日は休日だったのにお疲れ様。帰ったらゆっくり休んで」
「ありがとう。落ち着いたらまた他の場所も行こう」
「うん、また誘って。もっと町の色んなところ見てみたい」
カイトとはどんどん約束が増えていくばかりだが消化不良感は否めなかったので、また誘ってもらえるのは正直有難かった。
「それから…いや、アリサも今日はお疲れ様。ゆっくり休むと良い」
「? ありがとう」
何かを言いかけて止めたようだった。
(変なカイト)
モヤモヤしたが結局この大変な一日はこれで幕を閉じた。
数日後、またカイトが訪れた。今回は言伝を言いに来ただけらしく、部屋前の立ち話になった。
「明日の朝、国王陛下に謁見して欲しい」
「分かった」
(何の用だろう?)
「フェアリーアイのことで話があるそうだ」
なるほど、100年に1度の特異体質のことか。
「分かった。陛下への謁見って何を着て行けば良い?」
「クローゼットの中のもので対応できるはずだ。後でリリアンにも言っておくから打合せすると良い。明日の朝の鐘の少し前に迎えに来る」
「了解」
話は終わったようだが、カイトが何かを言おうか言うまいか迷っているみたいだった。
「どうかしたの?」
「アリサ、俺はアリサの好きなようにしたら良いと思っている。気が乗らないなら断ってしまえ」
「何のこと?」
「ごめん、これ以上は言えない。じゃあ」
足早に去って行ってしまった。
(何だったの?)
謎の忠告は結局どれだけ考えても分からなかった。
翌朝はいつもより少し早く起きて支度をした。国王陛下への謁見ということでどれだけ気合の入った服装をしなければならないのかと不安だったが、クローゼットのドレスはわりと現代的なすっきりとしたシルエットのものだった。
「ほっそりしてますね」
もっとこう、ボリュームたっぷりのドレスを想像していたので大変有難かった。
「はい。ひと昔前はそういうドレスが主流でしたが、今はこのタイプが人気ですね。サリア様がフリフリのドレスは動きにくいと着たがらず、希望通りに仕立てたドレスがこのシルエットでした。当時は前衛的だと批判もされましたが、サリア様の抜群のスタイルが皆を黙らせたのです」
リリアンさんがうっとりとした表情で語る。
(サリア様、スカート履きたくなさ過ぎて時代の最先端を行っていたのね)
こういう人がファッションリーダーになるのだなぁとしみじみと感じた。
リリアンさんが選んだのは薄ピンクの上品なドレスだった。首元と袖はレースが覆い、露出は控えめだ。少しウエディングドレスに見えなくもないが、まぁリリアンさんが選んでくれたのだから問題ないだろう。髪はハーフアップのアレンジで軽く編み込んで、リボンで束ねられた。化粧は前回とほとんど同じのナチュラルメイクだ。
「よくお似合いですよ」
「ありがとうございます」
こういう服を着ると自分が自分じゃないみたいだ。
今回も準備が終わってすぐにカイトが迎えに来た。いつも通りの制服姿だ。
「おはよう」
「おはよう」
カイトははじめぼんやりしていたが、私の姿を見て驚いていた。
(きっと驚くほどサリア様に似ていたんだろうな)
「悪い、見惚れていた。今日もリリアンは随分と気合を入れたようだ」
「はい、謁見ですので」
よく見たらカイトの顔が少し赤くなっている気がする。
(そんなにサリア様に似ていたのかな)
褒められて嬉しいが、別に私に見惚れていたわけではないのだろうと思うと少し複雑な気分である。
「行こう、陛下を待たせるわけには行かない」
「うん」
カイトは当然のようにエスコートをしてくる。私も大分慣れてきてはじめの頃よりは幾分戸惑わなくなった。しかし手にぬくもりを感じると妙にソワソワしてしまう。
(耐性なさすぎ)
恥ずかしいので気取られないようにすまし顔で歩く。
この間と違い、今日は謁見の間でやるらしい。前に通り過ぎた大きな扉の前に来ると異様に緊張した。
「大丈夫だ」
「うん、ありがとう」
緊張が伝わったのか、カイトがそんな言葉をかけてくれた。
「行こう」
私は小さく頷いた。
※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。
※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。




