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【完結済】人違いで異世界に攫われました  作者: あいうちあい
第5章 不毛の地の探索(冬)
125/162

124.日本食パーティー

※キリの良いところがなくやや長めです。

 そしてあの謁見から10日後。ついに今夜、日本食パーティーが開かれていた。


(考えてみたら何かを主催するのなんて初めてだわ)


 そう思うと少し緊張したが、私1人だけでやってきたわけではない。ジョゼフ料理長は全ての料理を絶賛していたし、ヴォイニッチさんだって沢山協力してくれたのだからきっと大丈夫だろう。

 パーティーはヴォイニッチさんの提案でカイトたち近衛兵と料理人たちは立食形式で食堂を貸し切り、国王陛下たち重鎮は別室で着席しながら使用人に料理を取ってもらってビュッフェを楽しむ形式にしてもらった。その方がお互い気を使わずに済むのだろう。私は基本食堂にいて、後で陛下のところに顔を出す予定だ。


「随分と気合が入っていますね」

「最早異次元のパーティーですよ」


 オークリーさんとエリスさんが苦笑いでそう評した。


「この際だからやりたいこと詰め込んでみました」

「何から突っ込めば良いのか分からない」

「本当に」


 レオンさんとギルバートさんの意見が珍しく合っている。


「準備大変だったんじゃないか?」

「大変だったけど私1人でやったわけじゃないし、それに楽しかったよ。だからカイトにも皆にも楽しんで行ってほしい」


 私が笑ってそう言うと、カイトも皆も何か納得したように笑った。


「アリサさん、何がオススメ?」


 レオンさんが困った質問をしてくる。私はしばし考えて、料理長たちの反応が良かったものを答えていくことにした。


「全部オススメだけど、そうだなぁ、前菜系なら胡麻和え、サラダなら胡麻ドレッシングが好評だったかな。副菜は大根の味噌田楽と茄子の煮びたしは繊細な味だと思う。がっつり食べたいならあっちのご飯ものと揚げ物系は外せないわ。個人的には角煮がトロトロで美味しいのと、魚なら鯖の味噌煮が良い」

「覚えきれないよ」

「一緒に回って料理の説明はするから、食べたいものを食べて」


 料理人たちにはホテルのように時間帯を分けて交代して入場してもらっているのでそれほど混雑しているわけではない。私はゆっくり回りながら皆に料理を説明していく。ちなみに前回陛下に出した豚肉の生姜焼きとだし巻き卵と肉じゃがも追加で作っていた。多分あの感じだとこういう料理が出て美味しかったと散々言いふらしている。その話題の料理がないとなれば少し可哀想だと思ったのだ。そしてそれは皆にも食べてもらっていたのでオススメはしなかった。


「アリサさん、あっちは何?凄く良い匂いがするんだけど」

「魅惑のライブキッチンコーナーよ」

「何それ?」

「要は料理人が目の前で調理したものを提供してくれる場所ってこと」

「出店的なこと?」

「まぁそんな感じ」


 どうせならやろうと思って作った渾身の一画だ。今回はタレ味の焼き鳥とほたてのバター醬油焼き、それから味噌・醤油が選べる焼きおにぎりを作ってもらっている。あくまでも日本食の枠からは抜けないようなレパートリーにした。


「本当に張り切ったな。あの焼き台作ったのか?」

「受け取っていない報奨が溜まっていたからヴォイニッチさんから陛下に打診してもらって、業者に特急で作ってもらったの」


 きちんと木炭仕様の炭火焼だ。この世界は薪が主流だが木炭もないわけではなかった。ただしそこそこ良いお値段がする。

 私が答えるとカイトが少し呆れた顔をした。


「せっかくの報奨なんだからもっと自分のために使えば良いじゃないか」

「だってもう十分すぎるほどもらっているんだもの。正直過剰だわ。それに気のせいかもしれないけど、陛下私に甘い気がするのよ」

「報奨が過剰だとは思わないが、陛下が君に甘いという認識は間違いじゃない」


 2人で苦笑した。何となく第2の娘くらいに思われている節があるのだ。いつの間にかクローゼットの服が増えていくし、今回のこのパーティーも私が全てお金を出すつもりだったのに気が付いたら報奨の1つとして扱われていて結局一銭も出していない。

 一通り回ったところで皆思い思いに料理を取って食べてもらう。真っ先に私のこだわりポイントに気付いたのはエリスさんだった。


「前菜以外どれも料理が温かいんですね」

「注意書きが至る所にありました」

「スープも湯気が出ています」


 オークリーさんとギルバートさんも驚いている。


「日本料理には熱いものは熱いうちに冷たいものは冷たいうちに食べるという考えがあるんです。なので実はあの大皿と台にも工夫をして保冷と保温をしています」


 これもまた焼き台と同じように業者に発注をして保温器兼保冷器を作ってもらっていた。発注したのは湯煎式のもので、金属の大皿の下にお湯または水冷を張って私の魔法で温度を常に一定に保ってある。ちなみに陛下がいる別室ではヴォイニッチさんがこれを担当してくれていた。


「なるほど、あの一画もそういうことなんですね」

「そうです。出来立てを熱いうちに味わうことを大切にしています」

「これ、あの時のことを思い出しますね」


 オークリーさんが焼き鳥を食べながら言った。あの時とは不毛の地で魔物を食べた時のことだろう。


「分かります。あの時は塩味でしたけど」

「自分はこの甘じょっぱいタレの方が美味しいと思います」

「ふふっ、良かったです」

「この温かいスープもとても美味しいです。ほっとする味ですね」


 ギルバートさんは豚汁風の味噌汁を飲んでいた。


「そんなこと言ったらどれも美味いよ」

「ええ、本当に」


 レオンさん、エリスさんも順に味の感想を教えてくれる。


「アリサがあれほど南の島に行きたいと言った理由が分かる気がする。これだけ故郷の味が美味しかったら恋しくもなるよな」

「あの時の私、相当必死だったでしょ」

「ああ、君もあんなに饒舌になることがあるんだなって思いながら聞いていた」


 そんなこともあったなと思い出してカイトと一緒に笑った。


「あ、すみません、言い忘れていましたけど、あっちに日本酒という米のお酒と、焼酎という日本酒の蒸留酒もありますから良かったら飲んでみてください」

「お米からお酒が作れるんですか」


 エリスさんが吃驚していた。


「はい、お米の甘みが感じられると思います。ただ少し酒精が強いので飲みすぎには注意してくださいね」

「そう言えばリリアンは誘っていないのか?」


 カイトが訊ねてきた。リリアンさんも実は大の酒好きらしいのできっとこのタイミングで思い出したのだろう。


「いや誘ったんだけど今日ちょうど結婚記念日みたいで断られちゃった。だから先にお酒だけプレゼントしておいたわ」

「おあつらえ向きじゃないか。絶対今頃2人で開けて飲んでいるよ」

「お口に合うと良いんだけど」


 そんなことを話しているうちに陛下たちのいる別室に顔を出す時間になったので、一旦皆に別れを告げて食堂を後にする。


「失礼致します」

「アリサ、待っていた」


 別室は重鎮たちの威圧感があるかと思ったが、お酒が入っているせいか和やかな雰囲気が漂っていた。特に陛下はかなりご機嫌のご様子だ。


「余は大変満足している」

「お褒めに預かり光栄です」

「料理も良いが、この提供方法も面白い。是非次の夏のパーティーに取り入れさせてくれ」

「勿論でございます」

「本当にどれも美味しかったわ」

「お口に合って何よりです、ありがとうございます」


 妃殿下も少し頬が赤かった。各種族長には勿論シルヴァさんも呼ばれていて楽しそうにしているし、各兵団の団長さんたちも笑っている。


(やって良かった)


 随分と親しくなったヴォイニッチさんとアイコンタクトを取る。大成功だと目が語っていた。



 陛下たちの部屋を後にすると私は食堂に戻りカイトたちを探した。立食形式とはいえ端の方にはいくつかテーブル席も用意しており、そのうちの1つにカイトが座って1人でお酒を飲んでいる。


「ただいま、他の皆は?」

「お帰り。レオンは立ち食い、オークリーはトイレ、後の2人は酔い覚ましに少し外歩いてくるって」


 普段皆お酒は強い方なのに、慣れないお酒に惑わされてしまったらしい。


「大丈夫かな」

「大丈夫、駄目だったらそもそも外歩けないから。オークリーは単に催しただけだろうし、皆すぐ戻って来るよ」

「そっか、カイトは平気なの?」

「サリアで散々お酒との付き合い方を教わったからな」


 カイトが顔を顰めたので思わず笑ってしまった。サリア様は本当にお酒が好きだったらしい。


「そうだ、ヴィンセントが来たかったってうるさかったんだ。今度何かの折に誘ってやってくれないか?」

「え?そうなの?」

「ジョゼフ料理長と仲良いんだよ。アリサが色々やっているの筒抜けだし、ジョゼフに出し抜かれているって悔しそうにするんだ」

「それは悪いことをしたわ。今日だって飛び込みで来てもらって良かったのに」

「それは流石に宿の営業があるから」

「ああ、そうか。今度調味料持って顔出しに行くね」

「頼む」


 何だか思った以上に日本食は脚光を浴びているようだ。


「アリサ、今日はありがとう。とても楽しかったよ」


 カイトが居ずまいを正してお礼を言ってきた。優しい笑みを浮かべている。私も満面の笑みを返した。


「喜んでもらえて良かった」

「アリサの故郷の味がたくさん知れたし、このパーティーも君の優しさが伝わってきた」

「皆への日頃の感謝の気持ちを込めたの。この間随分心配させちゃったし。それにあれを機にもっと今を大事にしようって考えるようになった。やりたいことや出来ずにいたことを後回しにしないでちゃんとやっていこうって。それで皆やカイトとの楽しい思い出ができたら素敵だと思ったの」

「うん、凄く良いと思う」

「あ、でもね、あなたとの2人だけの時間もとても大切な時間だから、もっと一緒にいたい。大切な時間を共有したいの」

「それは俺も同じ。今度またどこかに行こう」

「うん」


 お互いに微笑み合う。豊かで穏やかな時間が流れていた。

 程なくして皆が戻ってきたので、私も混ざって飲食をさせてもらった。皆楽しそうに過ごしている。そういう場を提供できたことが何よりも嬉しかった。

 至福の時間はあっという間に過ぎ、こうして日本食パーティーは大成功を納めたのだった。

ここまでご覧いただきありがとうございます!

少しでも気になった方はブクマ、評価等ぜひよろしくお願いします( ^ω^ )

次回は明日の12時台に投稿予定です。

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※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。

※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。


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