117.湖探索と不死鳥
※戦闘シーンがあります。苦手な方はご注意ください。
船尾へと戻る途中、私は信じられないものを目にした。
「カイト、あれ見て、不死鳥じゃない!?」
「本当だ、実在したのか…」
私は喜び、カイトは驚愕している。
神殿の時に見たのは雛だったが、今見ているのは成鳥でタカくらいの大きさだ。燃えるような赤い羽が全身を覆っている。今は島の外周を優美に飛んでいた。ちょうど同じ方向に飛んでいたので並走したらあちらが一瞥してきた。一瞬目が合ったかと思うと、そのまま森の中へ入って姿を消した。
「良いものが見られたわ」
「本当に。陛下への報告事項がまた1つ増えたよ」
不遇続きの中で起きたちょっと嬉しい出来事である。
地上に戻り、皆に諸々情報共有をしてその日は終えた。
翌朝、本格的に湖の探索に乗り出した。出発してから3日目のことだ。
「今日と明日で島の手前を探索し、見つからなければ明後日以降は島の奥に拠点を移して探索する。再三言っている通り魔法が使えないから、出来る限り戦闘は避ける。魔法石に魔力は詰めたな?」
全員が大きく頷く。
「アリサは必ず隊の真ん中を歩いて。絶対に危険な行動はしないように」
「はい」
独りでお留守番も考えたのだが、それはそれで危ないということになり結局同行することとなった。なお探索範囲を広げるために隊を半分にすることも検討されたようだが、同様に危険ということでまとまって行動することにしたらしい。
森の中には見知った魔物とそうでない魔物が混在していた。
「見たことのない魔物はこの島で独自の進化を遂げたのかもしれない」
「ああ、毒があるか分からないから、なるべく相手をしない方が良いだろう」
前側を歩くカイトとオークリーさんが静かに会話をしている。
「そうだな。ただ、見知った魔物の程度は低い」
「倒しても良いんじゃないか?全部をやり過ごしていたらあっという間に日が暮れるぞ」
「やっぱりそう思うか?」
「慎重なのは良いが、このペースなら食料が尽きる」
「分かった。軽傷なら手当をして、中傷以上になったら引き返そう」
「それで良い。船尾に行ったら魔法は使えるんだから」
オークリーさんの助言でカイトの心は決まったようだ。
「じゃああのトロールやって良い?」
レオンさんが話に加わった。ちなみに今はトロール2体を茂みに隠れてやり過ごしている最中である。
「ああ、頼む」
「行くぞ、ギル」
カイトがそう言った途端にレオンさんとギルバートさんが飛び出した。攻撃力や防御力向上の魔法もかかっていない、いわば生身の身体にも関わらず、それを感じさせないほど素早く、そしてあっという間にあの大きな魔物たちの首を切り落としてしまった。それに対して吃驚しているのは私だけで他の皆は当然といった感じである。
(魔法が使えなくたって強いじゃない…)
この島では改めて近衛兵の皆のスペックの高さを思い知らされている。
「おっと」
エリスさんが突然私の頭上で剣を振ったかと思えば、べちんと良い音がして何かが吹っ飛んでいた。よく見たらヒルのようなの魔物だ。固有種のようなのであれは放っておくらしい。
「アリサさんの頭上であいつを割るわけにはいきませんからね」
「はい、ありがとうございます」
スライムの時にもこんなことがあったなと思った。
そんなことを考えていたら、しばらくして子スライムたちが襲撃に来た。獰猛だが、腐食作用のない廉価版だったので皆あっという間に倒してしまう。また歩いていると今度は大きな蛾の魔物が空を飛んでいた。見たことのない魔物だ。派手だが妖しい美しさがあって、見惚れていると後ろから鼻と口元を袖で覆われた。
「あいつの鱗粉には昏倒の作用がある」
カイトだった。勿論自分の顔をもう一方の手で覆っている。見たことがないと思ったが、他の人は既知の魔物のようだった。
「ああやって鱗粉を振り撒いて、倒れた人の身体に口吻を刺して体液を啜るんだ」
「へぇ…そうなんだ」
お昼前には聞きたくなかった話である。
「気付かれているわけでもないから、あれはやり過ごそう」
どうやらあの鱗粉は気付かれたから撒かれているわけではなく、常に振り撒いているものらしい。頑張ったら倒せるのだろうけれど、流石に空を飛んでいる敵を相手にするのは大変なのだろう。そのまま妖しい魔物は頭上を通過してどこかへと飛んでいった。
探索は概ね順調で、皆怪我もなく島の半ばに到達していた。
「昼休憩にしよう」
爽やかな森ならマイナスイオンを感じながら食べるところだけれど、鬱蒼と茂った森からは不穏な気配しかしないので残念ながら楽しいピクニックという感じではない。
「ここまで歩いてみて魔物が出そうな洞窟はあったけど、湖どころか泉とか池、沼地の類は一切なかったね」
エリスさんが午前中の振り返しをし始めた。カイトがそれに応える。
「そうだな、それらしいものは一切なかった」
「でも、今のところ遭遇した魔物は魔法がなくても倒せるものばかりだったからそれは良かった」
「本当に。そう言えば獣型や鳥型の魔物は見かけていないよな?」
「うん」
「固有種は虫型に多い気がします」
ギルバートさんが言った。確かにそうだと思った。虫は進化のペースが早いと聞くから、魔物もそうなのかもしれない。
「ああ、固有種に関しては攻撃パターンも毒性も分からないからこのまま回避しよう。それに見知った魔物も進化している可能性がないわけじゃないだろうから午後もしっかり気を引き締めよう」
皆コクリと頷いた。
休憩も終わり、午後は別のルートを通りながら拠点に戻る。その道中私たちはまた不死鳥を見かけることができた。今日は木に止まってこちらの様子を伺っていた。
「あれが昨日言っていたやつか!」
レオンさんが興味津々である。
「そう、同じ個体かは分からないけど」
「不死鳥なんて早々いないから同じやつじゃないかな」
「お昼ご飯少し取っておけば良かったわ」
「不死鳥を餌付けしてつれて帰るつもりか?」
カイトが苦笑した。
「不死鳥を飼うのは夢だったけれど、あの感じだとなつきそうにないかな。あと現実問題少しサイズが大きいのよね」
「問題はそこ?」
「そう。でもできたら友好の印に餌くらい上げたいじゃない」
「君のその強い憧れはどこから来ているんだ?」
「昔読んだ本から。不死と美と平和と勇気の象徴なんだから」
そんなことを話しながら先に進む。その不死鳥は私たちが歩き去るまでじっとこちらを伺っていた。
結局この日は何も見つからず、その次の日も湖は見つからなかった。明日は半日歩いたところに拠点を移してから島の奥側を探索する。
不思議なことにこの探索途中、1日に1回は必ず不死鳥を見かけていた。いつもじっとこちらの様子を伺ってくるだけで近づきもしなければ攻撃もしてこない。島の侵入者を警戒しているのかもしれないし、悪さをしないように見張っているのかもしれない。
次回は明日の12時台に投稿予定です。
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※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。
※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。




