114.次の探索へ
休みも終わり、次の探索のために南の海へ移動していた。
「ちなみにこの魔法石は今後国宝になる予定だ」
私が皆に作った魔法石を渡し終わった後、カイトがいきなりそんなことを言い出した。
「は?国宝?」
皆を代表してエリスさんが素っ頓狂な声を上げた。なお作った張本人である私は声を上げることすらできなかった。
「ああ、まず間違いなくアリサが作らなければこの世界になかった代物だ。見た目もさることながらその希少性が第一に挙げられる。そして先日この魔法石の効果テストを実施したところ、アリサの目論み通り全属性及び物理攻撃をある程度軽減することが確認できた。さらに」
まだ何かあるらしい。
「魔法石に込めた魔力が満タンの時のみ、即死効果のある攻撃を無効化することが判明した」
「え!?」
今度は吃驚して声が出てしまった。それは予期していない副次効果である。全部まとめたボーナス効果だろうか。
「アリサの気持ちが籠ったのかもな」
カイトが微笑んだ。なるほど、そういう解釈もあるらしい。
ギルバートさんが血相を変えている。
「そんな大層なものを私たちがおいそれと受け取ってよろしいのでしょうか?」
「国王陛下は不毛の地探索のためには欠かせないと仰って下さっている。何よりアリサの気持ちだから」
「ありがとう、アリサさん」
順応の早いレオンさんを皮切りに皆にお礼を言われた。
「でも、そんなことになるなら追いはぎとか気を付けないといけないわね」
「国王陛下は現存するのはあの1粒だけだと公言する予定だから、俺たちが持っていることは秘密だ」
「なるほど」
「これはどうやって作ったんですか?」
オークリーさんが訊ねてきたので、私は魔法石についてあれこれと話をした。
他愛のない話をしながら道程2日の国内移動を終え、私たちは南の海へと来ていた。冬の2か月目の初日である。今日からこの広い海原を南の果ての島まで航海する必要がある。
「この地図上では東の目的地とさほど変わらない距離にある。船だと速度が出るから渡航自体は日の出から日の入りまでの丸1日で済みそうだ」
今回は島の湖にある主を探す旅だ。目的地には早く着くため今回は10日分の食料を積んでいる。船で移動することもあり、荷の重さにはまだ余裕があるので他にも色々緊急時の備えの物を積み込んで準備は万全だ。
私たちはまだ薄暗い夜明けに出航した。てっきり水兵さんも一緒なのかと勝手に思っていたのだが、驚くべきことに近衛兵の皆は船の操縦にも明るいらしく、この外洋船には私たちだけが乗っている。
魔法で帆に風を送るので快調な滑り出しだった。
「不毛の地の境に来たらまたフェアリーの様子を教えてほしい」
「分かった」
南の島を通過した途端に前回同様フェアリーの数が少なくなった。
「カイト、やっぱりフェアリーの数自体減っているわ。海だからか水は比較的いる。あと風と闇。火と光と土はほとんどいない」
「雷はどうでしょうか?」
「前回よりはいる」
それを聞いてギルバートさんが少しほっとしたようだった。今回の属性だと前のギルバートさんみたいに絶望的に魔法が使えないという人はいない。少し苦しいのはギルバートさんとエリスさんか。ギルバートさんはほっとしていたが、結局やや不利で不憫である。
「風魔法は続きそうか?」
「大丈夫だよ。大した魔法じゃないしフェアリーの数は足りているから魔力はまだまだある」
「頼もしい限りだ」
カイトは苦笑した。今回推進力となる風魔法は私が担っていた。
「徒歩と違って体力が温存できて良いね」
「ああ、でも船が使えなくなったら終わりだ」
「それは、ゾッとしないわ」
海の藻屑というやつか。
「だから船は何としても死守したい」
「確かに、生命線だもんね」
「アリサは泳げるんだっけ?」
「全く泳げないわけじゃないけど苦手。ちなみに海で泳いだこともない。まぁでも水の中でも魔法が使えるはずだから何とかするよ」
何かしらの魔法が使えたら生存できるとは思うが、そうでないなら私のスペック的には海に落ちたら余程の凪ぎでない限りは溺れ死ぬ。
「不毛の地で魔法を過信するな。もし君が海に投げ出されたら必ず助けに行くから、まずはとにかく落ち着いて、なるべく水を飲まないように、それから泳ぐのではなく脱力して浮くことを考えるんだ」
「分かった、ありがとう」
溺れた人はパニックになって助けに来た人にしがみついて一緒に溺れされてしまうこともあるとテレビかなんかでやっていた気がする。水が苦手な人は特にパニックになりやすい。そういった点でも落ち着くということは何よりも大切だ。
「海の上では何も起きないと良いんだが」
カイトが不安そうにしていた。陸と違って海には逃げ場がない。皆や多分私のことを心配してくれているのだと思う。
その後も船は天候にも恵まれ怖いくらい順調に進み、既に日が傾きかけていた。予定では日の入り頃には着くはずなので後数時間くらいだろうか。不毛の地に入ってからは相変わらず何度か襲撃を受けたが、今のところ大きな被害は出ていなかった。
「あの魚の魔物食えるかなぁ?」
退治した魔物についてレオンさんが思いを巡らせている。マグロを狂暴化させたような魚だった。
「食料はまだあるだろう」
「だけどよ、ギル、味気になんねぇ?やっぱりマグロみたいな味すんのかな」
「食うに迫られないと食指は伸びないな」
2人の暢気な会話が聞こえてきてクスッとしてしまった。前はずっと歩いてばかりだったからああいう会話もなかったなと思う。
「見えてきたぞ、多分あの島だ」
水平線の先にはオークリーさんの言う通り島が見えてきていた。不毛の地の島だから荒地なのかと思っていたが、青々とした木々が生い茂っている。寒いが雪は降っていなさそうだった。
「早く上陸して火に当たりたいですね」
エリスさんが自分の身体をさすりながら言う。
「そうですね、日も落ちてきましたし」
「前はまだ歩いていたから温かかったですけど、こう船の上でずっと風を浴びているともう寒くて」
歩かないとこういう弊害もあるのだなと思った。それに海の上だからというのもあるのだろう。
「あと少しの辛抱ですよ」
「ええ、頑張ります」
エリスさんはこの後出てきた魔物を率先して狩っていた。動いて温まりたかったんだろうなというのが分かった。
(後30分くらいかな)
島が見え出してからもそのまま時間は過ぎていき、大分日が沈んだ。岸も近くなり、カイトの表情にも少し余裕が出始めた時。
ドゴン!!!!
突然船体に強い衝撃が走って船が大きく揺れた。そして、ちょうど船縁にいた私の体はいとも容易く宙を舞い、冷たい海に放り出されたのだった。
次回は今日の20時台に投稿予定です。
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※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。
※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。




