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【完結済】人違いで異世界に攫われました  作者: あいうちあい
第5章 不毛の地の探索(冬)
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109.合法的な蘇生薬

※戦闘及びやや残虐なシーンがあります。苦手な方はご注意ください。

 1時間ほど歩いて魔物の巣窟である大遺跡群へとやってきた。私は町を鏡越しに見て近くに敵がいないことを確認すると早速行動を開始した。


「バラフォトス―光の球―」


 敵に探知されやすいよう敢えてこの魔法にした。そしてもう1つ。


「クリヴォソマ―姿を隠せ―」


 闇属性魔法である認識阻害魔法はリスクなしに便利な魔法の1つである。これが国内に横行したら覗き見し放題、窃盗し放題、タダ見し放題、盗み聞きし放題などなど、とにかく由々しき事態に陥ってしまう。禁じられるべき魔法の筆頭だ。そう、国内では。


(ここはほら、国外だから)


 それに唯一バレる可能性のある敵は今から屠る。目撃者をもみ消せば完全犯罪成立だ。私はこの秘密こそ墓まで持っていく、今度こそ絶対に。

 足音が複数聞こえてきた。私はその気配を背にして立ち、鏡を向ける。先日も見かけた2体がやって来ていた。同じ容姿をしている。


(やっぱりあの時魔法を使ったから呼んじゃったんだわ)


 偵察に来たのは偶々ではなかったのだ。

 その2体を一旦無視して町の中に入る。念のためもう1体の姿を拝んでから倒したかった。勿論町の中を移動する時も前方を常に鏡で確認するのは怠らない。中心部まで進むと動く影を発見した。


(いた!)


 町中に残っている魔物だけ2体と容姿が違った。こちらの方がより美しい。ゴルゴン3姉妹は美人なことで有名だが、とりわけ末のメドゥーサは1番の美貌の持ち主だったという。恐らくこの魔物が私のターゲットだ。

 そうと分かれば先に姉2体を始末することにした。先ほどとは違う道を辿り、別の外周に向かう。なるべく帰り道に遭遇する確率を下げたかった。とはいえ鏡の確認は絶対にした。これが生命線である。

 町の外に辿り着くと私はまた光の球を打ち込んだ。廃墟の壁と向かい合うようにして敵を待つ。再び姉2体が偵察に来た。私は素早く魔法を放つ。


「レピダアネモス―風の刃―」


 敵には私の姿が見えていない。奇襲は呆気なく決まり、翼を切り刻むことに成功した。これでもう飛べまい。間髪入れずに次の攻撃に移る。


「ギボリナホリスティ―地よ割けろ― プトシブラフォス―岩よ降り注げ―」


 地響きと共に戸惑っている姉2体の足元に大きな割れ目を形成した。敵は翼をもがれているため、なす術なくその割れ目に落ちていく。そこに特大の岩をいくつも落として追撃した。これで出て来られないだろう。


(元々姉2人は不死身なのよね)


 唯一メドゥーサだけは不死身ではない。だからペルセウスはメドゥーサの首だけ落とし、姉2人がやって来るとその場を逃げたのだ。それを模した魔物であれば割れ目に落ちた2体も不死身のはずである。実際妹を残して前衛に出てくるのだから不死身の可能性は高い。


(殺せないなら地に沈めて閉じ込めれば良いじゃない)


 私の中のマリーアントワネットがそう呟いていた。

 するとここで町の中から足音が聞こえてきた。どうやらメドゥーサ役の魔物が心配して見てきたらしい。何とも甲斐甲斐しいことである。私は敵が町の外に出た瞬間に打って出た。


「シングラティシーフォトス―光の拘束―」


 妹は呆気なく拘束されて地面に倒れ伏す。


(認識阻害魔法、癖になりそうだな…)


 こんなに簡単に奇襲が成功するなんて、脳内麻薬が出てしまう。


「ゴーラムエダフォス―土のゴーレム―」


 私はゴーレムに敵の足首を持たせ、頭を下にさせた。逆さまに吊るされて敵は激しく暴れているが光の拘束と屈強なゴーレム相手では抜け出せないようだ。この間に器2つと香水の瓶を取り出して香水は中身を捨てておく。今後の下準備である。

 10分か15分ほどが経過した。頭に血が上ったのかぐったりしている。頃合いになったので私は持ってきていた皮手袋をして後頭部をがっしりと掴んだ。蛇たちが咬みついてくるが手袋をしているので気にならない。


「レピダアネモス―風の刃―」


 魔物の首を刎ねた。大量の血が噴き出してくる。私は急いで用意した2つの器にその血を受け止めていく。1滴も無駄にはできなかった。


(メドゥーサの首を刎ねた際、右側の血管から流れ出た血には死者を蘇生される効果があり、左側の血管から流れ出た血には即死させる効果がある)


 ペルセウスがこの蘇生の血を持ち帰ると名医アスクレピオスの手に渡った。彼はこの血を元に死者を蘇らせる薬を作って次々と死者を蘇らせるも、最終的には神の怒りを買って殺されてしまう。


(大丈夫、私は謙虚だから5人分だけ血が取れれば良いわ)


 そのために敵をわざわざ逆さまにしてできるだけ頭に血が上った状態で首を切断したのだ。自分が残虐だとは少しも思わなかった。目には目を、歯には歯を。それに、私は皆を取り戻すためならどんな汚いことでもやる。

 作業が終わると私は地面の割れ目に頭を投げ込んだ。ちなみに死んだ状態でも顔には石化効果があるので注意が必要である。身体の部分はゴーレムに投げ込んでもらい、役目を終えたゴーレムは土に還ってもらった。


(さて、問題はどちらが蘇生薬かだけど…)


 どちらから見て右の血管かは覚えていない。しかし、血の入った器をしばらく置いておくと白と黒のフェアリーがやってきてそれぞれ指し示してくれた。私は毒の方を香水の入っていた瓶に詰め込んでポケットに忍ばせる。これは闇属性魔法ではない、合法的な毒薬である。きっと討伐の際、どうにもならない時に役に立ってくれるだろう。そしてもう1つ、合法的な蘇生薬はこれから持ち帰るので零さないよう器にしっかりと蓋をした。


(勝因は認識阻害魔法と鏡ね)


 石化さえ封じてしまえばさほど強い敵ではなかったと思う。私は逸る気持ちを抑えながら意気揚々と帰路に着いた。



 はじめのうちは戦闘の高揚感や蘇生薬を手に入れた達成感があって気分が良かったけれど、遺跡群が近づくにつれて段々不安になってきた。


(これで生き返らなかったらどうしよう?)


 蘇生の血が石化した人間に効くとは限らない。そもそもあれはメドゥーサを模した魔物であってメドゥーサではないので、これが蘇生薬かさえ疑わしい。


(でも、わざわざ白いフェアリーが集まってきたぐらいだし)


 光属性フェアリーはこの不毛の地では最も希少と言っても過言ではない。そのフェアリーが来たということはやはり蘇生薬なのではないかと期待してしまう。

 ようやく遺跡群に辿り着いた。実は荒らされないように皆にも認識阻害魔法をかけていたのでそれを解く。ちゃんと出発した時の状態で現れてくれたことに安堵する。そしていよいよ蘇生薬を試すときが来たと思ったら俄に緊張してきた。手が震えている。


(これで駄目だったら私は…)


 早く試したい、けれどこれで駄目だったらきっと立ち直れない。それでもここまで来て試さないというのはあり得なかった。

 私は一縷の望みをかけて、皆に蘇生の血を注いだ。

次回は明日の12時台に投稿予定です。

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※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。

※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。


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