103.探索断念?
※敵を倒すシーンがあります。苦手な方はご注意ください。
巨大なサンドワームはその大きな口で、下から砂地ごと私たちを丸吞みにした。気が付いた時には既に頭上で口が閉じてしまっており、私たちは巨大な筒状の腹の中に納まっていた。
(横っ腹に風穴でも開けないと)
幸いなことにフェアリーたちも呑み込まれているので魔法は発動できそうである。カイトには今日はもう攻撃に加わるなと言われているが、緊急事態なので仕方がないだろう。
私が魔法を使うために手を翳そうとした時だった。
「俺がやる!」
言ったのはレオンさんだ。どうやらカイトと同じく皆私になるべく魔法は使わせたくないらしい。レオンさんは剣に風を纏わせ大剣を作り出すと、勢いよくサンドワームの腹を掻っ捌いた。どんなに大きくとも所詮はただの巨大なミミズである。呆気なく切り込みが入って脱出口ができたので、私たちは脱出した。
しかし場所が悪かった。巨大なサンドワームはそこそこ移動していたようで、出た場所は先ほど通過してきた大渓谷だったのだ。私たちは谷底の川に向かって真っ逆さまに転落してしまった。
(まずい!食料が濡れる!)
この世界には防水袋などないので、川に落ちたら携行食が駄目になってしまう。
「プティシー!―飛行せよ― カイトも乗って!」
流石に魔法を使わざるをなかった。私は箒に跨り、カイトも乗ったことを確認すると、皆を回収しに箒を飛ばす。フェアリーの数が少ないのでいつものスピードは出ないし、上手く操れなかった。それでも近くにいたギルバートさん、オークリーさんまではすぐに回収に成功した。
「レオンさん!エリスさん!」
先に落下していた2人が少し遠かった。それでも私はフェアリーに惜しみなく魔力を引き渡し何とか加速する。ギルバートさんとオークリーさんが2人を掴まえようと手を伸ばし、2人もそれに応じる。手が届いた。重さでガクンとなったがそれもギリギリ耐えた。
(間に合った!?)
しかしそう思ったのもほんの一瞬で、サンドワームの体液でぬるついた手はつるんと滑り、2人は離れてしまった。
「リスミスティス!―緩衝となれ―」
カイトが落下の勢いを殺して着水の衝撃は和らげることが出来たものの、結局2人とも川に落ちた。そこそこ深い川のようで2人は背負っていた重たい荷物を捨てて川岸に向かって泳いでいる。
(やばい、重たい)
2人を諦め私も川岸に向かうが、4人でも明らかに重量オーバーだった。それでも必死に魔力を注ぎ込んで川岸に辿り着く。最後はヘロヘロの飛行しかできなかった。
「つ、着いた…」
私は川岸に着くなり倒れ込み、はぁはぁと肩で息をする。魔力は1割を切っていた。本当にギリギリだった。
「ごめん、無理をさせた」
カイトが私の身体を支えながら謝ってくる。
「平気、でも2人の荷物が」
「仕方ない。アリサのおかげで最悪の事態は避けられた。本当にありがとう」
「この後どうするの?」
「4人分の残りの食料があれば6人無事に帰れる」
「ここまで来たのに…」
(あともう少しだったのに、ここで引き返すことになるなんて)
私は悔しくて唇を噛み締めた。
「ひとまずアリサは休んで、魔力を回復することに専念してほしい。…どのみち帰るにしてもこの渓谷の上に戻るには君の力が必要だから」
カイトは辿り着けないことよりも、私に無理をさせるしかないこの状況に心底うんざりしているようだった。
「カイトはここまで来たのに悔しくないの?」
「悔しいよ。でも無理をして隊を全滅させるわけにはいかない。特にアリサの生還は絶対条件だ」
カイトはフェアリーアイの私を死なせるわけにはいかない。勿論私自身を死なせたくないとも思ってくれているはずだ。隊長として隊員の命と再探索を天秤にかけたら前者に傾くのは当然のことである。カイトの判断は正しい。私は悔しい気持ちを押し留めた。
「分かった。でも寝る前に水浴びしたい」
「寒さで風邪を引くぞ」
「流石にこの汚さだと寝られないわ」
サンドワームの体液でべとべとだった。いつもは汚れたら浄化魔法をかけて身体を清潔に保っているのだが、魔力がほとんど残っていない今それはできなかった。
「じゃあ服は着替えて、ギルに浄化魔法をかけてもらおう。1人分ならギルもできるだろう」
「ごめん、ありがとう」
カイトは手早く私のテントを立て、寝袋も広げておいてくれた。私は身綺麗にすると魔力回復のために寝袋に潜り込む。ちなみに川に落ちたレオンさんとエリスさんは無事に川岸に辿り着いていた。
(後のことは後で考えよう)
ひとまずは身体が休息を欲していた。
外が騒がしいと思ったら襲撃に遭っているようだ。私はすぐに飛び起きてテントを出たが、ちょうど討伐が完了したところだった。
「悪い、起こしたな」
カイトが剣の血を拭いながら声をかけてくる。足元を見るとたまに襲撃にくる七面鳥を大きくしたようなみてくれの怪鳥の魔物が倒されていた。
「大丈夫。私どれくらい寝ていた?」
「まだ半日しか経っていないよ」
渓谷の底は既に真っ暗だったが、まだ地平線に日は落ちていない夕刻時らしい。テント前では焚火をしていた。どうやら私が朝生成して伐採した木の枝がすぐ近くに落ちていたようで、それを使っているみたいだった。それから誰かのテントの上にはびちゃびちゃの寝袋が2つ干されている。恐らくあの後荷物を回収してきたのだろう。それを見たら寝る前のことを思い出して少し憂鬱な気持ちになった。
その時エリスさんが声をかけてきた。
「アリサさんも起きたなら夕飯一緒にいかがですか?」
「夕飯もまだだったんですか?」
「ちょうど食べようとしたところで襲われました」
「なるほど。夕飯を狙われたのかもしれませんね」
「ふふっ、かもしれません」
七面鳥のような怪鳥、減った携行食、夕飯。その時、それらのキーワードが私の中で1つに繋がり、とある考えに結びつく。
「あっ!」
自分の辿り着いた思考に吃驚して思わず声が漏れてしまった。
「どうかしましたか?」
エリスさんが怪訝な表情で訊ねる。
私は少し緊張した。きっとこの世界の人たちが今まで誰も考えつかなかったことをこれから口にすると思ったのだ。しかし背に腹は代えられない。大きく息を吐くと意を決して言った。
「その怪鳥、食べられませんか?」
案の定、皆一斉にぎょっとして私の方を向いた。
次回は明日の12時台に投稿予定です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。
※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。




