101.探索開始
※敵を倒すシーンがあります。苦手な方はご注意ください。
不毛の地探索のため、王都を出発する日が来た。
「ようやくくっついたんですね、おめでとうございます」
「なっ」
集合時ストレートにそう言ってきたのはエリスさんだ。
「エリスさん、ようやくって」
「外野は見ていてじれったかったんですよ」
「そうそう、ドラゴンの棲家の時のあれが逢引きじゃなかったってことの方が衝撃だった」
レオンさんまで話に参加してきたが、カイトが助け船を出してくれた。
「俺は良いけど、あまりアリサをからかってくれるな」
「からかってない、祝福してんの」
「カイトさん、アリサさん、おめでとうございます」
大真面目に祝福してくれたのはギルバートさんである。
「これでカイトはより一層任務に力が入るな」
オークリーさんがカイトの肩に手を置いて言った。面映ゆいことこの上ないが、皆一様に祝福してくれているのだと分かる。
「アリサさん、こっち」
「何ですか、エリスさん?」
エリスさんが小声で手招きしてきた。
「カイトのこと、よろしく頼みます」
エリスさんはサリア様の最期の時にカイトを止めた1人だ。そしてその後のカイトを見てきてもいる。同期としてカイトには幸せになってもらいたいのだろう。
「はい」
「ほら、もう出発するぞ」
私とエリスさんが2人で話している間に結局カイトが集中砲火を受けたらしく、赤面しながら強引に話を打ち切っていた。
私たちは3日かけて東の国境の城壁まで辿り着く。季節は代わり冬のはじめになっていた。
「この国は雪が降るんだっけ?」
「ああ、積もるほどに降る。ただ不毛の地は場所によって気候が全く違うと言われている」
城壁の上から見下ろす東の果ての地は荒野というより荒地に近い。ほとんど草木は生えておらず、剥き出しの岩と大地がひたすら広がっていた。
「念のため旅程と注意事項を確認しよう」
カイトが皆を集めると懐から地図を取り出した。驚くべきことに太古の地図というのが現存しており、小さな楽園になる前の世界の全容をおおよそ知ることができた。考えてみたら戦争が勃発する前は不毛の地と化した場所にも人々の営みがあったのだ。念のため原図から写しを取って全員がこの地図を携帯している。
「この地図によると東の果てはおよそ7日で辿り着く距離にある。予備日含めて8日、帰りを含めると約16日を想定している。もし目的地に辿り着かなかったとしても8日経ったら折り返す。食料が続かないからな」
カイトは現在地から真東にすっと地図をなぞり、丸印がついている東の目的地を指差した。移動は徒歩である。馬が生きられる環境ではないし、ラクダは残念ながらこの世界にはいなかった。不毛の地での食料調達は見込めないので各自大きなリュックサックに詰め込んでいる。水は魔法で出す算段だ。
その時レオンさんが質問をした。
「なぁ、ずっと気になってたんだけど、魔術書には東の果ての地としか書いてなかったんだろ?どうしてここが目的地だって分かるの?」
「マンドレイクは処刑地に自生すると言われているからだ。東にはここしか処刑地がない」
「なるほど」
一説には無罪の童貞男性が処刑される際に激痛で射精した精液が零れ落ちた地面から生えると言われている。そんな原材料から作られる魔法薬を飲まないといけないのは正直辟易する。
「戦争で荒廃した大地だから地形が大きく変わっていても何ら不思議じゃない。地図は鵜呑みにせず参考程度に考えてくれ。それから不毛の地は場所によっては魔法の発動が不安定だと聞いている。アリサ、フェアリーのことでもし何か分かることがあれば道中教えてほしい」
「分かった」
「未踏破の地だ。本当に何があってもおかしくない。全員気を引き締めるように」
私を含め皆が大きく頷いた。
「やっぱり想定より魔物が少し多いな」
カイトが1メートルくらいのサンドワームを屠りながら言った。
「恐らくアリサさんが呼んでいるんだろう」
オークリーさんがそう答えた。どうやら生者が安寧の地を踏み荒らしているからという理由だけでなく、フェアリーアイがいるからというのも魔物の湧きを増やしている原因らしい。大人しく寝ていてくれれば良いのにと思う。
「すみません」
「ああ、すみません、そういう意味で言ったわけでは」
オークリーさんが慌てている。きっと私のせいではないと言いたいのだろう。
「そうですよ、これでも治まっている方です。夏じゃないだけマシですよ」
「お気遣いありがとうございます」
エリスさんが慰めてくれた。
荒地を歩き始めて半日ほどが経過していた。慣れない土地を歩くのはやはり大変なことである。時折こんなふうに魔物が襲ってくるので油断ならないし、国を出てから徐々に魔法の発動が不安定になっていた。
「フェアリーの数がどんどん少なくなっているわ。それに属性にもばらつきがある」
「どういうことだ?」
「ここには比較的土、風、闇のフェアリーが飛んでいるけれど、光、水、雷のフェアリーは極端に少ない」
それに魔法の発動について今まであまり深く考えていなかったのだが、魔法の大きさがフェアリーの数に比例するようだ。高火力や高出力の魔法はその分多くのフェアリーが力を合わせて魔法を発動させている。例えばフェアリー10匹分の魔法があったとして、ここに8匹しかいなかった場合、いつもよりも多くの魔力を対価にすれば10匹分の仕事をしてもらえるが、そうでなければ8匹分の魔法しか発動しない。5匹とかならそもそも10匹分のパフォーマンスが出ずに魔法が弱まるし、1匹なら魔法が発動しなくなるといった感じだ。それが魔法の発動が不安定になるということらしい。
国内にいる時はフェアリーが不足することがないので気にならないが、考えてみたら大樹を生成する時はフェアリーが足りないと思っていたから、何か私の中で経験則というか感覚みたいなものはあったのだと思う。
私は皆にそのことを説明した。
「アリサさんいて正解だったな。そんなの常人の俺らには分かんねーもん」
「確かに、どの属性魔法が発動しやすいか否かが分かっているだけでも探索の難易度が大幅に変わりますね」
レオンさんとギルバートさんがそう言った。
「しかし、水属性が少ないのは痛いですね。水の補給を考えなくては」
「それは大丈夫です。この間発見したんですけど、多くの魔力を渡せばフェアリーが属性を変更してくれるんです」
「何だそれ、そんなことができるのか」
オークリーさんとの会話に食いついたのはカイトだった。
「うん。普通より魔力を消費するけど、飲み水くらいなら全然平気」
「アリサさんはフェアリーが見えるからまだ良いとして、僕たちはあまり魔法に頼らない方が良いかも知れませんね。いつもより魔力の消費が多くなりそうですし」
エリスさんが剣1本に割り切ろうとしている。
「エリスが良いならそれでも構わないが、念のため時折フェアリーについてはアリサに確認しよう」
「分布や数が変わったら共有するよ」
探索はまだ始まったばかりだった。
次回は明日の12時台に投稿予定です。
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※「ら抜き」「ら入れ」「い抜き」などの言葉遣いに関しましては、私の意図したものもそうでないものもキャラ付けとして表現しております。予めご了承くださいませ。
※WEB小説独特の改行に悪戦苦闘中です。試行錯誤しながら編集しております。ご容赦くださいませ。




