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夢の世界より  作者: ていきょー
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西暦2023年6月 妻の様子がおかしい③

「あなたは理解してるつもりでも、本当の私をしらない。」


どれだけ虐げられたのだろう。

助けなければ。


「この復讐はあなたの想像以上に根深い。」


これは、暴力団がらみか?

警察も政治家も絡んでいる可能性があるな。。


「俺に、助けられることはないか?」


「無いだろうね。どんな能力を持っていようと、無理だとおもうよ。

気持ちだけは、涙がでちゃうくらいありがたいけど。」


日本の根深く、どんなに黒い社会でもなんとかできる自信はあるんだけどな。

しかし、俺の今の能力や状態を知っていての発言なのだろうか?


「なんでもするよ。人の眼に見えないように活動したりもできるって、知ってるだろ?時間を止めたり。探るくらいならいくらでも・・・」


「いいえ。無理。あなたは本当の私を知らない。無理なの。関わっちゃいけない。どれだけの地獄か想像もつかないと思う。事の顛末は鉄平が理解できるだけの範囲でなら、聞きたければ話すね。」


本当の麗美?どういうことだろう。

確かに、うるさいくらい今までペリロイドの催促をしていたけど頑なにスルーされてきた。

これには、本当に俺の想像を超えた復讐の理由があるのだろうか?


「この世には、少しでも知っただけで地獄を見る羽目に・・・違う、そんな一時的な地獄じゃない。永遠にも近い地獄につながることがそこかしこに、実は身近にあったりするものなの。」


「何を言ってるのかわからないけど、じゃあ例えば・・・?」


この後、俺は絶句した。

身の毛もよだつとはこの事だ。


「人の首を数百積んだ神輿を見たことがある?ドロドロで、異臭が漂う神輿。それただ茫然と眺めることしかできない絶望した人の顔。それを見て至福を感じる外道の顔。

物心ついた子とその両親は監禁され、自分の両親が絶叫の中体の部位を少しずつ火であぶられているのを、目の当たりする光景。母は泣き叫ぶ子の顔と体の異変ともに別々の地獄を感じながら泣き、絶叫する。父は気を失っている間に焼け焦げた部位を切り取られ、そしてまた別の部位が火であぶられ、また目を覚ます。消えない痛みに昼夜、呻き続け、子は恐怖と精神異常で失禁し、震えが止まらない。

子とお前の命だけは助けてやると脅されて、残った1本の腕ですでに絶命した愛する美しい妻の髪の毛を、真ん中だけむしり取るように命令される。まるで落ち武者のような頭蓋のまま、さらには四肢を切り落とすように命じられる。無残な妻の姿を前に、唇を半分以上かみ切りながら、怒り悲しみで震えている様。それを酒のつまみとするニヤついた人でなしのギャラリーたちによって子は儚くも命を奪われ、到底届かぬ腕一本を振り回し、さらにギャラリーは湧き上がる。」


少し想像しただけで悪心がこみ上げる。

麗美の眼は涙であふれかえっている。


「大の親友たちが目の前で・・・無力にも狭い空間に閉じ込められてパキパキって・・・押しつぶされて・・・最後は幼い犬のように『くぅ…』と一声出したあと跡形もなく無に消えてゆく様!!!想像できる!?なぜそんな鬼畜な所業が起こりうるのか!」


「・・・もういい!悪かった!」


咄嗟に麗美を抱きしめた。

震えている。


「・・・麗美はそんな地獄を、見てきたのか?」


「・・・うん。続けて語るなら一晩で語りつくせない程に見てきたよ・・・・!愛している人に!愛する人を・・・!! うっうっ・・・!!」


「蝶名林・・・!」


「・・・っ!」


麗美ははっとした表情のあと、俺を突き放して涙を袖で拭きながら、荒い呼吸を何とか抑えながら、大事なことを伝えようと懸命に語る。


「違うの。蝶名林やそれを取り巻く人間が原因じゃない。ごめんなさい。つい怒りでしゃべりすぎた。」


「誰の仕業なんだよ?」


まっすぐ、麗美はこちらを見つめなおして真剣な顔でこう忠告した。


「あなたにこれ以上(ごう)を積ませるわけにはいかないから、これだけは最後に言っておく。きっと、蝶名林や財界人、政治家、警察が絡んでいて、身動きがとれない私が抗おうとしているんだって、そんな想像をしてるんでしょ?」


「ちがうのか?」


「ごめんね。あの界隈に潜入しようとしたのは確かなの。知っての通りあなたを蔑ろにして体も売った。根深いし多くの女性たちにも同じことをしていて、まるで昔の大奥のような場所もある。そこでも悪魔のような奴らがいて、まるで奴隷のように扱われているような話もよく聞く。そこに潜入するために探りを入れようとしていたの。私があそこにパートで行こうと思ったのは、友達がひどいことをされていることを知ったから。きっと鉄平は私が弱みを握られて酷いことをされているのことを憂いて助けてくれようと思ってるのだとおもうけど・・・」


麗美は後ろを向いた。


「私が酷い目にあっているとか、そこでその組織をどうにかしようとか、鉄平が考えているのはそれくらいでしょ?でもね、そんな浅い話じゃないの。そこで起きたその結果はほんのちっぽけな渦なんだよ。その渦が起こる原因はもっともっと根が深くて、その渦を消しただけでは何の解決にもならない。渦は分裂しまた渦を生む。過去から今もなお。手を出したら根っこが探しに来るのは想像できるでしょ?それは、あなたの知ってる登場人物にとどまらない。ある存在をおびき寄せることが私の目的。」


「1人のヤーさんと喧嘩して、その場で倒しても組が動き出す、みたいなことか。」


「そう。でもね、相手が悪い。鉄平のその体がどんなに強固で人並み以上に優秀だとしても、時を部分的に止められるとしても、ロス128bや惑星二ビルや惑星オラムに行けたとしても、そこでどんな知識を得たとしてもどんな存在とどういう関係を持ったとしても、、、、それだけではどうにもならないことがこの世にはある。VW0の存在でも、おそらくは・・・」


「え???ちょっと待て。」


眉間に皺が寄る。渦の理屈はわかるが・・・

一体麗美はどんな壮大なものを背負ってるというんだ?

この俺の未来の体や時間を操る能力、それを応用した瞬間移動、これまでの経験があっても解決は無理?


・・・これは、夢か?


「さっきの凄惨な話はあの会社や日本、・・・信じられないと思うけど、それは日本、いや、今の世界で起きていることじゃない。実は私は、この世だけを生きる人間じゃないの。もういろんな世を、時間だけで言えば・・・もう数えていないけど、何千年も渡り歩いてる。貴方にはない特殊な能力を使ってね。どうしても根絶しなければならない事があって。」


「は?麗美・・・?お前はいったい・・・」


「スブーティ。日本では須菩提(しゅぼだい)と呼ばれるみたいだけど、仏典で初めてこの名前がでてきて私はそう呼ぶことにしてる。そもそも名前など無いかもしれない。私はこいつが悪の根源だと、ずっと追ってる。」


「スブーティ・・・?」


「何を条件に現れるのかわからないけど、なんとなくわかるでしょ。今の鉄平たちじゃ気づかれれば即・・・殺されるだけならいいかもしれない・・・。怖いのは死ぬことじゃないの。・・・だから、お願いだから、関わらないで・・・。」


麗美の涙が止まらない。


「じゃあ、なんで麗美なら大丈夫なんだよ!」


「私は、あなたの言う”PW”と時間と距離は寿命に関係なく際限なく行き来できる。正確な・・・そう、座標レベルの位置間移動は、概念的に私の頭じゃ数値化できるものじゃないから正確じゃないけど意識を移動できる。・・・"VW"にも・・・。」


「!!!!」


「もう分かったかな。あそこでのことを事細かに話す必要はもうないね。そういう事情があるからといって、私は鉄平の前では清廉潔白でいたかったよ。隠し切れなくてごめんね。さようなら。愛おしい鉄平。私なんかを助けようとしてくれてありがとう。」


麗美は一瞬、優しい顔だがどこか寂しそうな顔をしながら頭のてっぺんからストロボのようにボッ!と音を立て激しい光を放ち、その場に倒れた。


何が何だかわからない。


「お、おい、しっかりしろ!」


体を揺さぶるが、麗美は寝ているのか気を失っているのか反応しない。

呼吸はあるので死んではいないようだ。


抱き上げてはロス平と南極地下施設に瞬間移動した。

そこにある医療Podに、優しく寝かせ、ため息をついた。


のどが渇いた。落ち着くために冷たいもので喉を潤したかった。

コーヒー豆を引く俺とロス平はしばらく別方向に、ぼーっと、焦点の合わない目で壁の向こうの遠くを眺めていた。


俺が先に口を開く。


「さっきの話どう思う?」


かぶせる様にロス平が答える。


「俺も何もわかんねーよ。パニック状態だ。俺はお前だからほとんど考えてることは一緒だろうよ。おれにもコーヒーを少しくれ。ホットでいい。」


思考が追い付かない。何をどうすればよい結果に結びつくのか。麗美が目覚め、まだあの意識がそこにあったら改めて詳しく聞きたい。


「ドンっ!」


いったい何を背負って、何百年も生きてきたというのか。

さようなら?何言ってんのかわかんねーよ!!


目の前で横たわる麗美を見ながら、医療Podのガラスを小突いて、そう心の大声で叫んだ。


ロス平が親指の爪ほどのマグでコーヒーをすすってから、考察した。


「麗美がまだここで復讐を続けたら、どうせ俺らのことだから何らかの手助けを試みるだろう。そして地獄を見る可能性が出てくる、って、麗美はそう考えたんだろう?そのスブーティ?ってやつによって。」


ゆっくり麗美の眼が開き始めた。

同時に医療Podがこう告げる。

「治療を終了します。全身、損傷はありませんでした。」

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