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呼ばれる

数日後。

 エイヤはKUROWADA FIGHT GYMへ向かった。


「こんにちは!」

「おう、エイヤ」


 黒和田が手招きする。


「ちょうどよかった。話がある」

「また大事な話ですか?」

「今回はかなり大事だ」


 大樹と田所も近くにいた。

 黒和田が机の上に置いていた紙を見せる。

 エイヤが紙を見る。

 黒和田が少し笑った。


「国内最大の総合格闘技団体FIREから試合の依頼が来た」

「え?」

「12月31日の最大イベントFIRE GROUNDの初戦だ」

「マジですか?」


 大樹が身を乗り出した。


「すげえじゃん!」


 田所も驚いている。


「今、話題の選手だからな」


 黒和田が続ける。


「日本のヘビー級は層が薄いからな」


 田所もうなずいた。


「ようやく出てきたヘビー級のスター候補に出てほしいんだよ」


 エイヤはもう一度、紙を見た。


「ぜひ出たいです」

「そう言うと思った」


 黒和田が笑った。

 その時、スマホが鳴った。

 けい太からだった。


『会いたいんだけど、今日空いてる?』


 エイヤはすぐに返信する。


『今ジムいるよ。来る?』

『いいの?』

「けい太がここに来るみたいです」

「ちょうどいいな」


 黒和田が言った。

 しばらくして。


「お邪魔します」


 けい太がジムに入ってきた。


「久しぶり」

「おう」

「元気だった?」

「まあな」


 少し痩せたように見えた。


 その日の夜。

 テーブルには寿司やビールが並んでいた。


 エイヤ。

 大樹。

 田所。

 黒和田。

 けい太。

 5人でエイヤの勝利を祝っていた。


「改めて、おめでとう」

「ありがとうございます!」


 けい太も笑う。


「マジで勝ってくれてありがとう」

「教えてもらったパンチで勝てたよ」

「すごかったよ」


 みんなが笑った。

 少しして。

 けい太が箸を置いた。


「実は俺、ボクシングジム辞めました」

「え?」


 みんながけい太を見る。


「辞めたの?」

「うん」

「これからどうすんの?」

「まだ分かんない」


 黒和田がけい太を見る。


「だったら、うち来ないか?」


 けい太は少し黙った。


「……いいんですか?」

「一人抜けたし、うちとしては助かる」

「じゃあ、お願いします」

「決まりだな」


 黒和田がグラスを持ち上げる。


「じゃあ、エイヤの勝利とFIRE出場決定」


 少し間を置く。


「それと、新しい仲間に」

「乾杯!」

「乾杯!」


 グラスがぶつかった。


 次の日。

 水刀の部屋。

 カメラの前にエイヤが座っていた。


「いくよ」

「うん」


 撮影が始まる。


『みなさんに報告があります』

『12月31日、FIRE GROUNDへの出場が決定しました!』

『対戦相手は鬼釜悠二《おにがまゆうじ》選手です』

『絶対勝つので、ぜひ応援してください』


 エイヤが隣を見る。


『それと、今日はもう一つ報告があります』

『ここで新メンバーの紹介です』


 画面の外から、けい太が入ってきた。


『どうも、ボクシングコーチのけい太です』


 エイヤが笑う。


『頼もしいメンバーが加わりました』

『これからパンチの精度を上げていきますんで』

『成長を見ていただけたらと思います』


「はい、オッケー!」


 水刀が撮影を止めた。


 その日の夜。

 動画が公開された。


『年末出場おめでとう!』

『絶対見に行く!』

『鬼釜戦楽しみ!』

『またエイヤにパンチ教えてくれ!』

『この二人好きだわ』


 コメント欄は、お祝いの言葉で埋まっていた。

 けい太へのコメントも好意的なものが多かった。

 隣でスマホを見ていたけい太が笑った。


「なんだよ、これ」


 エイヤも笑う。

 久しぶりに見た、けい太の笑顔だった。

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