みんな
「うおおおおおおお!!」
会場から大歓声が上がった。
大樹たちがリングへ入ってくる。
「エイヤ!」
「やったな!」
大樹がエイヤに抱きついた。
黒和田も田所も笑っていた。
「おめでとう」
「ありがとうございます!」
三熊のところにはリングドクターが駆け寄っていた。
スタッフが担架を持ってくる。
三熊はそのまま医務室へ運ばれていった。
エイヤがリングを降りる。
客席から拍手が続いていた。
三熊が運ばれていく時にも、拍手が送られていた。
両者が退場しても、なかなか拍手は鳴り止まなかった。
「エイヤー!」
「おめでとう!」
エイヤが客席へ頭を下げる。
「ありがとうございます!」
身体は痛かった。
でも。
今まで教えてもらったことが全部、試合の中で役に立った。
エイヤは今までにない自信に満ちていた。
控室。
ジムのみんなと試合の話をしていると、スマホが鳴った。
「あ」
母からだった。
「もしもし」
『試合おめでとう!』
「ありがとう」
『見たよー。よかったー!』
「うん」
『会社の人たちも応援してくれてたよ』
「そうなんだ」
『サインしてってお願いされたから、書いてくれる?』
「うん。ごめん、今忙しいから」
『分かった。ごめんごめん』
「また後でね」
『はーい』
電話を切る。
黒和田が笑った。
「お母さんか?」
「はい」
「息子がこんだけ注目されて、プレッシャーだっただろうな」
「そうですかね」
エイヤが立ち上がる。
「ちょっとトイレ行ってきます」
「おう」
控室を出た。
けれど、トイレには向かわなかった。
三熊が控室に戻ったと聞いていた。
扉の前で止まる。
コンコン。
「はい」
扉を開けた。
三熊が椅子に座っていた。
「三熊さん」
「あ、エイヤ君」
「ありがとうございました」
「ありがとう」
三熊が笑った。
「エイヤ君、めちゃくちゃ強いじゃん」
「ありがとうございます」
「いやー、参ったよ」
三熊が頭をかいた。
「いろいろ盛り上げるために言ってごめんね」
「…………」
エイヤの頭に何人かの顔が浮かんだ。
黒和田。
けい太。
千夏。
「あのやり方はどうかと思いました」
「…………」
「実際に傷ついてる人たちもいるんで」
三熊の笑顔が消えた。
「そうだよね。ごめん」
「僕に関しては大丈夫です」
エイヤが三熊を見る。
「でも、他の人たちにはちゃんと謝ってください」
「…………」
三熊は少し黙ってから、うなずいた。
それ以上、何も話さなかった。
「今日はありがとうございました」
「こちらこそありがとう」
エイヤは控室を出た。
しばらくして。
会場を出る。
「飯でも行くか?」
黒和田が聞いた。
「いえ、僕は疲れたんで帰ります」
「そうか、ゆっくり休めよ」
「はい」
エイヤはスマホを取り出した。
母からメッセージが来ていた。
『気をつけて帰ってきてね』
エイヤが少し笑った。
今日は唐揚げかな。




