決まった
次の日。
KUROWADA FIGHT GYM。
「三熊は強敵だからなぁ」
大樹が言った。
「そんな強いの?」
「強い、厄介なやつ」
田所が答える。
「あいつ、寝技うまいからな」
黒和田が腕を組む。
「それだけじゃないぞ」
「え?」
「三熊は技のレパートリーが多い」
「レパートリー?」
「過去の試合見てみろ。毎回フィニッシュが違う」
「へー」
「腕十字。絞め技。足関節。何してくるか分からない」
田所が言う。
「三熊、めちゃくちゃ格闘技オタクだからね」
「オタク?」
「いろんな団体の試合見てるよ」
「国内だけじゃなくて海外のもな」
大樹が続ける。
「暇さえあれば試合見てた」
「だから変な技もいっぱい知ってる」
「…………」
「特に寝技は気をつけろよ」
エイヤは三熊と練習した時のことを思い出した。
マウントからの逃げ方。
腕十字。
三角絞め。
ピコン。
エイヤのスマホが鳴った。
「ん?」
通知を見る。
通っているボクシングジムからだった。
『当ジム所属の瀬玉けい太に関するお知らせ』
「けい太……」
エイヤが開く。
『現在インターネット上で拡散されている瀬玉けい太の過去の行為について、本人への聞き取りを行いました。
当ジムとして重く受け止め、当面の間、謹慎処分といたします』
田所がエイヤを見る。
「どうした?」
「けい太、謹慎になったみたいです」
「え?」
「三熊の動画か……」
「電話も出ないんだよね、大丈夫かな」
エイヤはけい太に連絡をしようとした。
「今はそっとしといてやれ」
大樹が言った。
「うん」
スマホを置こうとした時。
ピコン。
通知が届いた。
三熊からだった。
『エイヤ君、お疲れ様です!
会場とレフェリーの話が進みました。
10月18日はいかがでしょうか?
お返事お待ちしております。』
エイヤが黒和田を見る。
「会長」
「ん?」
「試合、10月18日でどうですかって来ました」
「三熊か?」
「はい」
黒和田がカレンダーを見る。
「問題ないな」
「じゃあ、その日にします」
エイヤが返信する。
『10月18日でお願いします』
すぐに返事が来た。
『了解です!
いい試合にしましょう!』
「決まった?」
田所が聞く。
「10月18日です」
「よし」
黒和田が立ち上がる。
「じゃあ、ここから三熊対策だ」
「はい!」
ピコン。
「また?」
エイヤが通知を見る。
『三熊チャンネル 新しい動画が公開されました』
エイヤが動画を開く。
三熊が笑顔でカメラの前に座っていた。
『試合が決定しました!』
『10月18日です!』
「さっき決まったばっかじゃん」
『当日はライブ配信しますので、ぜひ——』
ピッ。
エイヤが動画を止めた。
「もういい」
「がっはっはっは!」
黒和田が笑う。
「本当に何でも動画にするな、あいつ」
エイヤがスマホを置く。
「あいつをボコボコにします」
10月18日。
三熊慎吾との試合が決まった。




