別人
動画を再生する。
三熊が画面いっぱいに映っていた。
『おうおうおうおう、エイヤさんよー』
『言ってくれたな? 雑魚が』
三熊がカメラを指差す。
『お前がどうやって俺に勝てるんだよ』
『いいよ、やってやるよ!』
『覚悟しとけ!』
エイヤが画面を見つめる。
動画が終わった。
そう思った。
『はい、というわけで』
「え?」
三熊が急に笑顔になる。
『スポンサーさんを募集します』
『試合ではコスチュームに企業名を載せますので、興味のある企業の方はお問い合わせください』
『よろしくお願いします!』
動画が終わった。
エイヤはスマホを置いた。
「結局、金だったな……あいつ」
しばらくして。
ピコン。
ダイレクトメッセージが届いた。
送り主を見る。
「三熊?」
エイヤがメッセージを開く。
『ご無沙汰しております。三熊です。
エイヤ君、元気?
この度はご迷惑をお掛けして本当に申し訳ないです。
それにしても、すごい人気だねー!
お互いスポンサーを探さないといけないと思うので、10月くらいはどうでしょうか?
会場やレフェリーはこちらで交渉してみます。
忙しいと思うけど、お互いがんばろうね!』
「…………」
エイヤはもう一度、さっきの動画を見る。
『覚悟しとけ!』
メッセージを見る。
『がんばろうね!』
「全然違うじゃん……」
翌日。
水刀がスマホを持ってジムへ来た。
「エイヤ、やばいよ」
「何?」
「昨日の動画」
画面を見せる。
「めちゃくちゃ回ってる」
「また?」
「スポンサーの問い合わせも来てる」
「スポンサー?」
「ほら」
メールが何件も届いていた。
『張切エイヤ選手へのスポンサーについて』
『試合協賛のご相談』
『動画広告について』
「本当に来てる」
田所も画面を覗き込む。
「まだ試合の日も決まってないんだろ?」
「10月くらいって言ってました」
「くらい?」
「はい」
大樹が笑う。
「適当だな」
黒和田は腕を組んだ。
「でも、やるならちゃんとやんないとな」
「はい」
エイヤはスマホを見る。
三熊の動画。
自分の動画。
コメント。
スポンサーの問い合わせ。
まだ会場も、日付も決まっていない。
それでも。
格闘技ファンの間で、話題の中心になっていた。




