離れてる
エイヤと青年は入学式会場へ滑り込んだ。
「間に合った……」
青年が大学の看板を見て、エイヤを見る。
「同じ学校だったの?」
「みたいだね」
二人は最後列の席に腰を下ろした。
「さっきはありがとう」
「別に」
「俺、水刀悠斗。君は?」
「張切エイヤ」
「エイヤ?」
「うん」
「よろしく」
「こちらこそ、よろしく」
二人は慣れない場所で互いの緊張をほぐすように、式が始まるまで小声で話した。
式が始まった。
しばらくして、水刀が小声で話しかける。
「エイヤって、何かスポーツやってる?」
「やってないよ」
「え? マジで?」
水刀がエイヤを見る。
「じゃあ、なんで強いの?」
エイヤは少し考えた。
「兄貴かな」
「兄貴?」
「3つ上の兄貴がいるんだけど、ガキの頃から取っ組み合いばっかしてた」
「お兄さんもエイヤみたいにデカいの?」
「全然。175くらいかな」
「十分でかいじゃん。エイヤより強いの?」
「うん。俺より全然強い」
「今は大学生?」
「いや、普通に働いて、一人暮らししてる」
「へえ」
水刀が頷いた。
そして、エイヤの後ろを見て急に黙る。
「……エイヤ」
「何?」
「このタイミングで申し訳ないんだけど」
「?」
水刀が声を落とした。
「スーツのおしり、パックリ裂けてるよ」
「…………は?」
エイヤが後ろへ手を回す。
「…………」
さっきの音が頭の中に蘇る。
ビリッ。
「マジかよ!」
「声!」
前の席の学生たちが一斉に振り返った。
大学生活初日。
お尻の部分が破れたスーツにスリッパ。
最悪のスタートだった。




