第96話 再び軍隊を編成する
塩辛い水砲をもう一発放った。
効果が薄いことは分かってても、撃たずにはいられない。
次に何をすればいいか分からない時は、手元にあることをすべてやってみる。そういう性分だ。
水球が空中で弧を描いて、水道管の上に丸くなっているカタツムリの群れの中に突っ込んだ。
HP -67
HP -43
HP -52
HP -38
HP -71
HP -29
……
数字が次々と浮かぶ。
ダメージはある。確かにある。
だけど、やっぱり同じ問題だ。これじゃ効率が悪すぎる。
あいつらは体を殻に引っ込めるだけで、殻が天然の塩水バリアになってしまう。塩水は殻の上を滑り落ちて、水道管を伝って地面に流れていく。カタツムリたちは昼寝してる子どもみたいに殻の中で丸まったまま、塩水が流れ去るのを待つ。流れ去ったら、またのろのろと触角を伸ばすだけだ。
続けよう。
できることをすべてやってみる。
従者を呼ぶこともできる。
ヴァイオニルが瞬間移動の力を遮断してくれたから、観の門に置いてある百万の軍勢はここに現れない。だけど、倒した敵をその場で新しい従者に変えることはできる。
「起きろ――」
まずミストキャノンで大量の水球を放って地面を洗った。塩水で新しい従者が傷つかないようにするためだ。
清い水がざあざあとタイル床を洗い流した。黄ばんだ塩の結晶と粘液が一緒に流れていく。床は元の灰白色に戻った。少し湿ってたけど。
私のカタツムリ従者たちが、きれいになったばかりのタイル床に次々と現れた。
奴らの体は普通のカタツムリより大きい。ずっと大きい。飼われている豚くらいのサイズだ。殻には薄い緑の光が放射されていた。私が再生して従者に変えた印だ。
「よし!これで臨時軍隊ができた!」
床いっぱいのカタツムリを見て、俺は嬉しくなった。
こいつらは確かに軍隊と呼べる。
ただし――動きが遅すぎる。
仲間と離れ散ってからこっち、常に何かポーズボタンを押されてるみたいで、何もかも思うように進まない。
奴らをもっと速くする方法を見つけないと。
呟きながら目を閉じて、もう一度心の中の「歌リスト」を探した。
『インドラの雷のまつり』
『ヴァルナの水の伎楽』
『ヴァユの風の香讃』
『アグニの火のもてなし』
『スメール山の天の歌』
……
これにしよう。
『ヴァユの風の香讃』
さっきの水の楽技は霊感能力を上げた。なら風の香讃は反応を上げるはずだ。
口を開く。
さっきと違う歌声が出た。軽やかな風が流れるような声。一つ一つの音が耳をかすめる風みたいに聞こえる。
――『ヴァユの風の香讃』発動。
反応強化倍率 ── Level²
33 × 21 × 21 = 14553
風属性効果 ── Level³ 倍率
33 × 21 × 21 × 21 = 305613
やっぱり。
背中のピクシーのタトゥーを起動させて、たくさんのカタツムリの中に軽く飛び込んだ。歌声でこの大群の従者に働きかける。
カタツムリたちが速くなった。
反応の基礎値はそこまで高くないけど、レベルの三乗をかけると、こいつらはスローモーション映画の逆みたいに速く動く。
元々数秒かかってた足の一歩が、発条を仕込まれたみたいに止まることなく蠕動する。
蝸牛軍隊全体が突然生き生きとしてきた。殻の模様が高速移動で残像を放ってた。
すぐに奴らを水道管の上に向かわせた。
一匹また一匹と、私のカタツムリ戦隊が水道管を登った。敵のカタツムリの背に乗る。
柔らかい体を思いっきり伸ばして、敵の殻の中に入り込む。
そしたら――
カタツムリは肉も食べられる。特に同じカタツムリの肉なら、食欲がすごく刺激される。最高だ。
ちゅぱ、ちゅぱ……
水道管の上から湿った音が聞こえてきた。
私のカタツムリ軍隊が敵の殻の中に入り込んだ体が蠕動してた。外からは肉がどう飲み込まれてるか見えないけど、音だけで全部が分かる。
時々、敵のカタツムリが水道管にぶつかる、乾いた割れる音がした。
「本当に残念だな……」
俺は首を振った。
こういう光景、ライブ配信できたら話題になるだろうな。
だけど、今はそんなことを考えてる場合じゃない。
私のカタツムリたちが水道管を完全に包囲した。茶灰色の殻が水道管全体に密集してた。遠くから見ると、水道管に腫瘍ができたみたいだ。
「勝負がつく前に、これを試してみようか!」
俺は楽しくなって笑った。
知恵の書の二番目の能力を起動した。
カタツムリの一匹を武装に変えた。今回の武装は――
『ダイアガストロポッドの割殻大槌』
俺の手に巨大な戦槌が現れた。槌頭は螺旋状の殻で、一つ一つの筋が濃い茶色に光ってた。握り手はカタツムリの筋肉を硬化させたもので、握ると不思議な弾力がある。
――へえ!
初めて近距離の重い武器を使うぞ。
槌を持ち上げてみた。
いい重さだ。この重さなら重力に任せて落とすだけで、ここのカタツムリ全部が砕けるだろう。
こうして、何百匹ものカタツムリ従者を連れて、俺たちはまるで下から燃え上がる野火みたいに、水道管の下から上へ侵食していった。
私のカタツムリ部下たちは這い上がり、俺はピクシーのタトゥーを起動して飛んだ。
ダイアガストロポッドの槌を思いっきり振ってた。
パリン!
敵のカタツムリの殻が割れる音。いい音だ。
パリン!
パリン!
振るたびに、槌の螺旋の筋がカタツムリの殻をぶち砕いた。粘液と肉が水道管に飛び散る。下にいるカタツムリ従者たちがすぐさま群がって、残骸をきれいに食べ尽くした。
殻の欠片が地面に落ちて、ちんちん、こんこんと音を立ててた。奇妙な雨みたいだ。
数分で、水槽エリアのカタツムリは全滅した。
水道管の上に残ったのは私の従者たちだけ。お腹いっぱいで、のろのろと這い回ってた。
額の汗を拭いて、俺は地面に飛び降りた。
さっきの根菜類が蝸牛を焼いてた場所に戻った。
この香りいっぱいの陣営で、ダイコンとジャガイモが今完成させたばっかりの料理について熱く話し合ってた。
「バターの味が肉の中心まで染み込んだ?」
「染み込んだ、染み込んだ!白ワインの酸味も油っこさをちょうどいい感じに消してくれた!」
二人の根菜がベーキング紙の上の完成品を指さしながらコメントしてた。まるで何か大事な儀式をしてるみたいな真剣な顔で。
ちょうど、俺も腹が減ってた。
歩み寄って、完成した焼きカタツムリを何かけか切った。
今回は、スパイス、バター、白ワイン……様々な濃い香りがこのカタツムリの肉で完璧に調和してた。
少しの歯ごたえがあって、かじった時に口いっぱいに焼きカタツムリの濃い豊かな香りが広がった。
「ん!今回の味は全然違う!」
「そうだろ?これが本当の完成品だ!」ジャガイモが「胸」を張った。もしくは胸に見える部分を。
「美食家のために、料理としてのプライドのために、最高の腕前を出さないと!」
理屈は変だけど、別にいいや。
腹が満たされて、あとで仲間を探すための力が出りゃそれでいい。
「さあ、よそ者、早く食べろ、温かいうちに!」ダイコンが促した。
うなずいて、俺は貪りながら腹を満たした。
バターの香り、白ワインの微かな酸味、ニンニクの辛さ、パクチーの爽やかさ――すべての味が口の中で開花して、さっきまでの疲れを一気に吹き飛ばした。
腹が満ちたら、体全体の調子も良くなった。
「さあ――」
口を拭いて、ダイコンとジャガイモに言った。
「皆で僕の仲間たちを探しに行こう!」
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