表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
倒した敵は俺の力になる 〜魔物だらけのダンジョンを攻略しながら、ドロップ品を配信で売って一気に億万長者へ〜  作者: 上部乱
巽の塔ー風山漸

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/85

第72話 山に火を放つ


悪党たちが木立に突っ込んでいって最初の一分で、俺はひとつ理解した――

こいつら、「破壊」という一点においては、生まれつきの才能を持っている。


ラトンが先頭を切って突っ込んでいき、山刀を風を切る勢いで振るっていた。それに続いて他の連中もなだれ込み、チェーンソーの轟音が森にこだまする。


太い幹が音を立てて倒れ、地面が揺れて、落ち葉がざあっと舞い上がった。


別の方ではもう、誰かが幹の根元にぴたりとノコギリを当てて引きはじめている。

手つきが慣れすぎていて、こいつらいったい今までこういうことを何度やってきたんだ、と思うほどだった。


「この連中、やっぱり生まれながらに環境破壊するためにいるみたいね」

ワカナが俺の隣で眺めながら、なんとも言いがたい賞賛の混じった口調で言った。


「ワカナさあ、人の褒め方がちょっと変なんだよなあ」

「あたし、なんか間違ったこと言った?」

彼女は火炎放射器を担ぎ直して、前へと歩いていった。


灯油、木炭、カセットボンベ。買い込んできた可燃物が悪党たちの手で次々と開封され、切り倒された幹と厚く積もった落ち葉の間に、ばらまかれていく。


何人かは、燃料に浸した松明を引きずって木立の間を縫うように進み、火がつきそうな場所を片っ端から点火していった。


十分も経たないうちに、最初の火の手が上がった。


それから二箇所目、三箇所目。


俺とワカナは、それぞれ火炎放射器を構え、まだ手をつけていない密集地帯にあたりをつけて、点火装置の引き金を引いた――


噴き口から火柱が湧き出して、幹に叩きつけられ、一瞬で張りついた。橙色の炎の舌が樹皮を伝って這い上がり、相当な速さで広がっていった。


「これ、思ってたより使えるね」

ワカナは歩きながら、ついでとばかりに横の木にも火をつけた。


「背負ってると、まあまあ重いけど」


『ワカナが火炎放射器ぶっ放してるwwww』

『元ヤン、本領発揮』

『あの慣れた手つき!!』

『悪役の風格すごい』

『「山火事」が文字通りすぎるwwwwww』

『煙やばっ!!!』


火勢は広がっていった。樹冠の間で炎が躍り、乾いた落ち葉と枯れ枝はうってつけの着火材だった。一度つけば、たちまち燃え広がっていく。


山の上を風がごうごうと吹き、火の舌をさらに奥へ奥へと押し流していった。


そこでようやく俺は思い出して、知恵の書を開き、燃えている木のうちの一本に向けて、確認をかけた。


ページの上に文字がにじむように浮かび上がってきた。新しい記録だった。


山の木霊Lv 1

EXP 20

HP 28 MP 3

反応:2

筋力:2

霊感:12

運:4


ドロップ品:

N アレルギーの木霊の若葉 50%

R 体力を奪う木霊の青枝 30%

S 怒りに身を震わす木霊の種子 18%

U 人の心を惑わす木霊の花びら 1.9%

E 宿主を操る木霊の樹根 0.1%


俺はそのページを二度読み返した。


「この敵の名前、木霊って言うんだ」

「木霊?」

サチが寄ってきて覗き込む。

「最初トレントかなって言ってたけど、そんなには遠くなかったね」


「それと、ドロップ品見てよ」

ユウキも横から覗き込んできて、視線が文字の上を流れた。


「アレルギー、体力を奪う、怒りに身を震わす……これらの名前、まとめると、私たちにあいつがやってきたこと、そのまんまだよね」


「アレルギーの若葉が、ユウキさんがずっとくしゃみしてた原因」と俺は言った。


「体力を奪う青枝が、HPがじわじわ減ってたあれですね」


「で、宿主を操る樹根、っていうのは……」

ワカナが眉をひそめた。

「0.1%のドロップだけど、いちばん怖そうな名前してるじゃん」


「それは、いったん置いとこう」

俺は言った。


「とにかく今は、火を回すのが先」

そうこうしているうちに、経験値が動きはじめた。


ひとかたまり、また一面と、上昇していく――火が広がっていくにつれて、燃え死んでいく木霊一体ごとの二十ポイントの経験値が、潮みたいにこちらへ押し寄せてきた。


木の大半は、あの悪党どもが燃やしているのだが、彼らは神器を持っていない。経験値を吸収する手段がない。


だが、知恵の書はどうやら彼らを俺の従者と判定しているようで、彼らの手で死んだ木霊もすべて、俺たちの取り分に計上されてくる。


俺はステータス欄の数字を見つめていた。満たされていく狂気じみた喜びがあった。


経験値が狂ったように積み上がっていき、やがてその数字は、俺の予想していなかった位置で止まった。


レベルが連続で三段階!


新田真澄 Level 15

EXP 75360 / 1638400


HP 870 / 870

MP 310 / 310


反応 27

筋力 25

霊感 29

運 27

自由分配 14


このレベルアップを、ずいぶん長いこと待たされていた。


なにしろ中孚堂じゃ、敵を一体も倒していなかったわけだし。


「そういえば……」

俺は振り返った。


「みんなのほうは、どうですか?」

サチは知恵の書を顔のすぐ前に持ってきて、目をぱっと見開いた。

「わたし、十四になってる!」


福原幸 Level 14

EXP 711040 / 819200


ユウキも自分のステータスを確認していた。表情は大げさには動かなかったが、ほんの一拍置いたその間が、何かを物語っていた。

「私も、十四です」


剣持祐希 Level 14

EXP 684640 / 819200


ワカナは何も言わなかった。火炎放射器を地面に下ろし、自分のステータスを覗き込んでいる。

その表情は、最初から期待なんてしてなかったところに、いきなり数字をぶつけられたような、放心の色をしていた。


白川若菜 Level 14

EXP 680900 / 819200


「ワカナ、Lv1からいきなり14まで跳ね上がってるじゃないか」と俺は言った。


「……うん」

彼女は少し黙ってから言った。


「この山、木がいっぱいあるからね」


「うん、これってね、RPGでよくあるやつだよ。あとから加わった仲間が低レベルから始まると、だいたい一気に伸びるんだよね」

サチが、ごく当たり前のことみたいに言った。


あ、と俺は気づいた。彼女と付き合いはじめてから、まだそんなに経っていないが――今日はじめて知った。彼女、オタク属性あったんだ。


『LEVEL 14!!!』

『ワカナ1から14まで一気にwwwwww』

『マスミも15に上がった!!!』

『山ひとつの木霊で4人爆上げ』

『この効率えぐすぎる』

『ワカナさっきまで通行人レベルだったのに、もう14wwwwww』


そのちょうどそのとき、山の上で、何かが変わった。


山じゅうの木霊たちが、明確な生存の危機を感じ取り、対応のモードを切り替えはじめたのだ。


俺がぐるりと辺りを見回すと、燃えている木々の枝先から、何かがにょきにょきと生えはじめていた。それも、かなりの速さで。

長くて、サヤエンドウみたいな形をした実が、一本、また一本と、枝の先からせり出してくる。


「あれ、なに?」

サチが、一歩前に踏み出した。


大火の熱が、その実を瞬く間に乾かしていく。表皮が縮んでいく速度が肉眼でもわかるほどで、強烈な収縮の力が実をぴんと張らせ――そして、ぱあん、と最初のひとつが弾けた。


固い種が、鋭い稜のついたままで、弾丸みたいに激しく射出された。


幸運だったのは、あれだけ密集して種が飛び散ったというのに、サチは一発も食らわなかったことだった。


続いて二つ目、三つ目。山の斜面のあちこちで次々と弾けはじめ、密集した破裂音と空気を切る音とが連なって、ひとつの音壁になった。

山じゅうの悪党どもが一気に乱れ立ち、わめきながら岩や倒木の陰に飛び込んでいく。


「伏せろ!」

ラトンが喉を張り裂けんばかりに怒鳴った。本人はとっくに大岩の陰に転がり込んでいた。


「フォッグシェル・サラマンダー!」

俺は反射的にサラを呼び出して、俺たちの前に立ちはだかってもらった。


だが、サラは大火の中ではどうしても動きが鈍い。熱がこたえているのは見ればわかる。体を縮こまらせ、歩みもひと回り遅くなっていた。


「サラ、もう少し頑張って」

俺は声をかけた。

「あと少しだから」


サラはあのきれいな目で俺を見やったきり、動かなかった。けれど、退こうともしなかった。


「ここで耐え続けるのは無理だ」

俺はラトンに向けて怒鳴った。

「火はもう回ってる、お前ら撤退しろ!」


「どこへ逃げりゃいいんで!?」

ラトンが岩陰から半分だけ顔を出した。すすで真っ黒になっていた。


「山の縁まで走って、そこから飛び降りろ! 呪術師の体の範囲から離れさえすれば、ピクシーが空中で受け止める!」


ラトンは二秒ほどそれを呑み込み、それから振り返って、山じゅうを駆け回っている仲間たちに向けて、声を限りに叫んだ。


「飛べ! 下に飛べ! ボスがお前らを死なせる気でこんなこと言うわけねえ!」

この悪党どもは欠点だらけだが、死を恐れないという一点だけは、長所だと言えた――


彼らは何の迷いもなく縁まで走っていき、一人また一人と、ためらいもせず飛び降りていった。


ピクシーたちが山裾の宙で瞬間移動を使って彼らを受け止め、一人ずつ透明の翼でボカ・デ・クペへと送り返していく。


「あの人たち、今夜の夕飯のとき、思いきり自慢話できるよね」

ユウキは混乱の只中を眺めて、ふっと笑った。


「あの人たちへの配慮、もう一度考え直さないと、ですかね」


俺は山の上の、怒り狂って震えるあの森を見ていた。

種はまだ四方八方に射出され続けていて、火もそのまま燃え続けている。二つのことが同時進行していて、なかなかにぎやかな場面になっていた。


「じゃあ、もう少し、火を大きくしてやろうか」

俺は風呼びの杖を握りしめ、風霊鳥を呼び出した。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


面白いと思っていただけたら、

よろしければ ブックマークや評価、感想 をいただけると嬉しいです。


あなたの応援が、

これからの執筆の励みになります。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ