第62話 少し休もう
中南米で丸一日過ごして、ついでにサンクトペテルブルクにも寄ってきた。
今の私には、休息がかなり必要だった。
ボカ・デ・クペへ転送して戻り、日陰になっている場所を見つけて腰を下ろし、ピクシーたちが忙しく動き回る様子を眺めた。
ピクシーたちが熱帯雨林の木々の成長を加速させていた。
幹と蔓が交差し合い、何度も絡み合いながら、ものすごく太い糸で布を織っているような光景だった。
ときどき二、三本の枝が変な方向に伸びると、すぐにピクシーが飛んでいって元の方向に導いた。髪を梳かすような手つきで。
不思議な光景についつい目を向けてしまうが、建物全体を仕上げるのは一瞬ではすまなかった。
ピクシーたちがまず簡単な東屋を作ってくれた。私が一息つける場所として。
中に木と蔓で編んだビーチチェアと小さなテーブルが置いてあった。
背もたれの角度がとてもちょうどよくて、座って後ろに体を預けると、もう立ちたくなくなってしまった。
テーブルにはピクシーたちが用意した昼食と、冷やしたピクシーの蜜酒が一缶置いてあった。
その蜜酒を手に取って一口飲んだ。
甘さの中に花の香りがして、冷たい感覚が喉からずっと下へ伝わっていった。
気持ちいい。
目を細めて、遠くで手伝いに来ている元構成員たちを眺めた。
廃墟の砕けた石を片付けて、まだ使えそうな材料を分けて積み上げていた。
積極的とは言えないが、怠ける者もいなかった——
周りに何人かのアンドリアス・サピエンスが立っているだけで、効果はかなりあった。
この人たちはきっと腹も減っているし、疲れてもいる。
食べさせて休ませるだけの余裕は十分あった。でも今この時点では、現状をしっかり認識させる時間を少し置いたほうが、お互いのためになると思った。
今日の作業が一段落してからにしよう。
彼らを残したのは、現代の武器を作る技術が必要だったからだ。
本物の軍需工場の専門工員ではないのはわかっている。
でもここで何年も過ごしてきたなら、銃弾の火薬を詰め直すくらいはできるはずだ。
残りは、ゆっくり育てていけばいい。
もっと大事なのは——違法な武器を密輸してきた人脈だ。
それはお金があるだけではどうにもならないものだった。
配信はずっと開いたままだったが、視聴者たちも私と同じく休憩モードに入っているようで、コメントのペースが昨夜よりずっとゆっくりになっていた。
たまに誰かが一言書いて、また静かになる。
『配信者ようやく休むの?』
『この二日間のスケジュール詰め込みすぎだろ』
『昨夜ヤクザに乗り込まれて、今日は南米まで反撃しに行った』
『サラダは大丈夫?』
『サラダが水に浸かってる(画像)』
横を見ると、サラダが案の定、近くのプールに丸まっていた。
プールの中はミストキャノンで吹き飛ばされた建物の残骸でいっぱいだったが、あの巨大なサラマンダーはまるで気にしていなかった。
尻尾を大きな石の上に乗せて、目を細めて、何もかもどうでもいいという顔をしていた。
東屋で目を閉じて、これからのことを考えた。
前に借りていた部屋にはもう戻れない——
大家への説明は別として、しばらくあの街に長居するつもりはなかった。
また奇襲されても困る。
サチ、ワカナ、ユウキ……
三人の状況をざっと頭の中で整理した。
あいつらが三人に手を出そうとするかもしれないが、彼女たちの手にある神器は、私の知恵の書と同格のものだ。
きっと対処できると思う。
それにワカナのあの手段を選ばない性格からすれば、誰かが絡んできても、最後につらい思いをするのは向こうのほうだろう。
そう思ったら、少し気持ちが落ち着いた。
熱帯の午後の中で、そのまま眠り込んでいた。
次に目が覚めたときには、もう夕暮れだった。
空の色は重たいオレンジ色で、ジャングルの上から溢れ出して、半分できあがった基地全体を暖かい色に染めていた。
空気に濡れた木と花の香りが混じって、遠くの川から細かい水音が届いていた。
体を起こして、目をこすり、周りを見渡した。
この時間は、昨日起きた時間くらいだろう。
この場所の時差に体がまだついていけていないようだった。
基地はほぼ完成していた。
立ち上がって、中を歩いて見た。
大きくて温かみがある——これまで一緒に使ったことのない二つの言葉だったが、
ピクシーたちはそれを自然に融合させていた。
この空間はマルコのジャングル別荘より広いのに、中に入っても広すぎる感じがしなかった。
どの隅にもピクシーたちが丁寧に配置したものがあったから——
蔓で編んだ照明の枠、小さな花を咲かせた植物が柱を伝って上へ登り、床は磨かれた板張りで、踏むと少し弾力がある気持ちいい感触だった。
部屋がたくさんあって、それぞれに違う雰囲気があった。
一目では見渡せないほどだった。
「ゆっくり探索するのは後でいいか。」
心の中でそう記録して、スマホを手に取り、サチの番号に電話した。
今は思い切り気を抜いて、普通の人間に戻りたかった。
街をぶらついて、映画を見て、魔力を補充しなくていいご飯を食べたかった。
二コール鳴って、サチが出た。
「マスミ!」
電話口の声がずいぶん弾んでいた。
今にも飛び出していきそうな、出発前の高揚感があった。
「どうした?すごく張り切ってるみたいだけど。」
「え?なんでそう思うの?」
「そのまんま、声に出てるから。」
「あ、そりゃそうだよ、電話してきたってことは準備して出発してってことでしょ?」
私は少し固まった。
「え?私がまだ何も言ってないのに、デートに誘おうとしてるってわかった?」
「ふふ、だって私、あなたの彼女だもん!」
電話口の口ぶりが軽やかで、サチらしい自然な確信があった。
当たり前のことを言っているような声で。
私は少し笑った。
「じゃあ今日行きたいところある?」
「なんで聞くの?一か所しかないじゃない。」
「一か所?」
「うん、一緒に漸の台を攻略しに行く準備、もうできてるよ!」
スマホを持ったまま、新しくできた基地の廊下で立ち止まった。
ちょっと待って。
ずっと話がかみ合っていなかった。
「電話したのは、一緒に買い物に行かない?って聞こうと思って……」
「買い物?」
「今から?」
「うん、ちょっとのんびりしたくて、普通の人間みたいな感じで。」
電話口が二秒黙った。
「……なんで私に電話したの?」
「あなたが私の彼女だから。」
「あ、そうか!」サチが言って、声がまた軽やかな周波数に戻った。
「じゃあ二十分待って、着替えてくる。」
「わかった。」
「それで買い物終わったら、漸の台に行こう。」
彼女がひと言付け足した。
予定表を組んでいるような、当たり前の口ぶりで。
「……わかった。」
スマホを仕舞って、窓の外の夕暮れを眺めた。
熱帯の空がゆっくりと色を深めていくところだった。
反対側では、ピクシーが転送門を開けてくれていた。
門の向こうは、賑やかな都市の朝だった。
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