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倒した敵は俺の力になる 〜魔物だらけのダンジョンを攻略しながら、ドロップ品を配信で売って一気に億万長者へ〜  作者: 上部乱
巽の塔ー風澤中孚

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第42話 毒刺


空がもう少し暗くなってきていた。


今日は渙の泉庭を攻略して、乙姫と交渉して、一対一の決闘を三戦こなした。

半日以上動き続けて、正直なところ疲れていたし、お腹も空いていた。


「ここは私に出させてください!」

フェアリーが一歩前へ漂い出た。


翅をわずかに震わせて、マファガイスをまっすぐに見据え、抑えきれない怒気を声に滲ませていた。


マファガイスが顔を横に向けた。

視線が彼女の上をすっと流れていった。


「私にそんなに怒りをぶつけなくていい。」

彼は言った。

「どれだけ強い感情を向けられても、私は動じない。」


マファガイスは場数を踏んだ古兵だった。

人がどの一歩から崩れ始めるかを、よくわかっていた。


「残念!」フェアリーが翅を一振りして、そばの細かい砂を周りに巻き上げた。

「怖がらせられたらよかったのに。」

場外から彼女を見ながら、フェアリーのことが心配でならなかった。


ユウキが私の隣にしゃがんで、まだワカナの手の甲の毒刺の傷を処置していた。


ワカナは岩礁にもたれて、顔色が少し戻っていた。

手の甲の痺れはまだ完全には引いていない。

うつむいて、黙ったまま砂地を見つめていた。視線の焦点が合わず、頭がぼんやりしている様子だった。


サチが隣に座り、片手をワカナの肩に乗せて、戦場を見ていた。何も言わなかった。

幸運の指輪が彼女の指の上でかすかな光を散らしていた。


「フェアリー。」私が小声で言った。

もう出ていってしまっているから、聞こえているかどうかわからなかった。

「落ち着いて。」


「落ち着いていますよ、主様。」

振り返らずに言った。

「ちょっと不機嫌なだけです。」


『フェアリー出た!!』

『明らかに怒ってるじゃん』

『マファガイスって本当にやっかいだな!』

『フェアリー大丈夫?』

『ピクシーの女王対エイの戦士、これは見ごたえあるぞ』


セバスティアンが中央に出て、開始を告げた。

フェアリーはすぐに上へ飛んだ。


高くは上がらず、翅を高速で振動させて、空中に停止した。


手の平に細長い風刃を集め、マファガイスの肩を狙って切り込んだ。

鮮やかで、迷いがなかった。


マファガイスが左にずれた。風刃が鰭の先端をかすめて通り過ぎ、本体には届かなかった。

せいぜいエナメル質を少し削った程度だった。


着地して、一瞬止まり、そしてまた体が滑り出して、フェアリーの左下方へ回り込んだ。


フェアリーが向き直って追い打ちをかけた。

風刃を三本続けて放った。

速く、正確で、それぞれ彼の動く軌道を狙って放ったのに、三本とも少しずつ外れた。


フェアリーが目をこすった。

なぜ当たらないのか自分でも疑問に思っているようだった。


「気のせいかもしれないけど、あのエイ亜人の体の輪郭、なんかぼんやりして見えない?解像度の低い動画みたいな感じ。」私がユウキに小声で聞いた。


「そう感じるのは私だけじゃなかったんですね。疲れて目がおかしくなったのかと思ってました。」ユウキが少し驚いた様子だった。

これはフェアリーに伝えなければ。


「フェアリー、あいつをじっと見つめすぎないで。視覚に何か細工してる気がする!」私が叫んだ。


「そんなこと、どうやってできるんですか!」

フェアリーの文句はもっともだった。


マファガイスは速度型の戦士ではないかもしれないが、だからといって他の感覚で捉えられるほど動きが遅いわけでもなかった。


それでもフェアリーはアドバイスに従い、なるべく相手を凝視しないようにした。


すると、目が楽になった。

放った風刃はまだ命中しなかったが、少なくとも彼を躱させることはできた。


何度かやり取りを重ねるうちに、マファガイスが数歩余計に後退させられ、新しい対策を考えているようだった。


観客席の海民亜人たちが静まり返った。

岩礁に座っていた何人かが身を乗り出して、戦場を食い入るように見つめた。さっきの喧騒が一時、すっかり鎮まっていた。


「ここまでやられると、私たちの族の者でも簡単には対応できない。」

誰かが低く呟いて、周りの何人かが頷いた。


フェアリーが空中を素早く横移動して、

マファガイスの右後方に回り込んだ。


両手を重ね合わせて、それまでのどの攻撃より分厚い旋風を溜め込み、彼の背中めがけて押し下ろした。


旋風が低い唸り声を引きながら、砂地に浅い窪みを刻んだ。


マファガイスが体を傾けて鰭翼を広げ、力を借りて横に跳び退き、旋風の縁を擦って通り抜け、砂地に転がり込んで砂煙を大きく巻き上げた。


砂煙が晴れると、エイ乗り族の亜人の姿が消えていた。


フェアリーが空中で止まって下を見た。


砂地には旋風が刻んだ窪みと几条かの引き跡だけがあり、マファガイスの影はどこにも見えなかった。


雪原の上で溶けた雪だるまのように、跡形もなく消えていた。

雪に溶け込んだのではなく、砂に溶け込んだように。


「どこ?」サチが身を乗り出して、眉をひそめた。


「砂浜の上で消えた?」

フェアリーの声が上から降りてきた。

隠しようのない戸惑いが混じっていた。

「どうやったかわからないけど、居場所が掴めなくなった。」


高度を上げ始めた。


夕日がひどく眩しかった。

地上にいても空にいても、直視できない角度にあった。


あいつがどこに潜んでいるか見えないまま地上にいるのは危険すぎる。


上空なら、少なくとも待ち伏せはないはずだ。


翅を懸命に振って、砂地の上十数メートルの高さで静止した。目で地面をくまなく何度も掃った。


砂地は動かなかった。

岩礁も動かなかった。

波が岸を打つ音以外、何もなかった。


『消えた!?』

『マファガイスどこにいるの!』

『フェアリー気をつけて!!』

『嫌な予感しかしない!!』


そのとき、フェアリーが感じた。

かすかな気流の乱れ。逆光の方向から、

何かが素早く上昇してくるような。


横へ急いで閃いた——

一瞬、遅かった。


夕日が西からまともに射していた。

フェアリーは無意識のうちに逆光の方向を避けていた。


それを手練なマファガイスはすべて計算していた。


鋭い痛みが、左の翅の付け根から走り上がってきた。

じんじんとして痛く、何か細い針を刺し込まれたようで、灼けるような熱さも伴っていた。


見下ろすと、あの尾刺が翅の付け根の位置から引き抜かれていくところだった。


マファガイスがすぐ隣にいた。空中に突然現れて、ようやく待っていたものが来たという表情を浮かべていた。


フェアリーに怒りと悔しさが一気に込み上げた。


なんとしても、このまま一方的に刺されるわけにはいかない。


手の平をあの尾刺に向けた。掌の中に、細く、素早い風刃を集めた。


風刃が走った。


音もなく、マファガイスの尾刺が、付け根から三分の一ほど上のところで、きれいに断ち切られた。


切られた先端が空中でひとまわりして、落下して、砂地に突き刺さり、まだかすかに震えていた。


マファガイスが自分の断ち切られた尾を見下ろした。

一秒、黙った。

事故の瞬間に自分の脚が飛んでいくのを見るような、そういう沈黙だった。


この事態に向き合う準備ができていたのだろうか。


ようやく待っていたものが来たという顔が、その一瞬で崩れて、言葉にできない衝撃に変わった。


戦士として、いつか手足を失うことは覚悟していると、自分に言い聞かせてきたのかもしれない。

でも本当にその瞬間が来てみると、すぐには受け止められないようだった。


フェアリーが空中に浮いていた。

翅はまだ振動していたが、そのリズムが乱れ始めていた。


翅の付け根を押さえると、指先に紫がかった黒い血がついた。痺れが翅から肩へと這い上がってきていた。


「当てた。」彼女が小さく言った。力が何かに半分吸い取られたような、空っぽの声が風の中に漂った。


そして落ち始めた。


翅が徐々に力を失い、ゆっくりと失速して、風に運ばれながらも支えきれなくなった葉のようだった。


私が駆け寄って、地面に着く前に受け止めた。


彼女が私の腕の中に横たわった。

顔色が灰色がかっていて、翅が力なく垂れ下がり、紫の暗い血が翅の付け根から滲んで、私の袖に染みていった。


「主様。」彼女が小さく言った。

目はまだ開いていたが、焦点がゆっくりと散り始めていた。

「ごめんなさい、今回は勝てなかった……でも当てましたよ……」


「わかってる。」私が低い声で言った。


「よくやった。もう刺されることを心配しなくていい。」

彼女の口の端がわずかに動いて、目が閉じた。


ユウキがもう私の隣にしゃがんでいた。

素早くフェアリーの脈を確かめて、もう片方の手で救急セットを開いた。

動作が速く、確かだった。


サチが傍らに立って、幸運の指輪を握りしめていた。顔色が白く、唇を強く結んで、声を出さずにいた。


「毒の種類はワカナと同じです、応急処置をします。」

ユウキが急いで言った。

「あとで秘釀酒を一本飲ませてください。」


セバスティアンが前に出て、砂地に突き刺さった断ち切られた尾をちらりと見下ろし、

それから私の腕の中のフェアリーを見て、

少し間を置いてから口を開いた。


「第五戦、エイ乗り族マファガイスの勝利。」


その言葉は、いつもより少し重みが少なかった。

その宣告自体が、彼が口に出さなかった何かを押さえているような声だった。


観客席が数秒、静まり返った。

もう騒ぎ立てる者はいなかった。


マファガイスがこの海洋亜人たちの心の中で占める重さが、前の三人の戦士とはまったく違うのが、はっきりとわかった。


『フェアリー……』

『大丈夫かな……』

『尾刺を斬り落としたじゃん!』

『勝てなかったけど、大きな仕事をしたよ!』

『残り二人が本当に手ごわい』

『頑張れ!!』


二勝二敗一引き分け。

次もまた二対二の形になる。

こちらが少し有利かもしれない。


マファガイスが痛ましそうに自分の断ち切られた尾を拾い上げるのが見えた。


ユウキがフェアリーをそっと私の傍に下ろして、立ち上がり、膝の砂を払った。


「次は私の番です。」

その表情は、すべての準備を終えた人のものだった。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


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