第239話 六風の源
頭の中に溢れた疑問の数々を、無理やり抑え込んだ。
この老人が知恵の書だというのなら、聞きたいことは山ほどあった。けれど先ほどのさらりとした、揺るぎない口調を聞いていると、一言も挟む気になれなかった。俺にできることは、脚の列をすべて砂に突き立て、銃口を地面へ向けて下げ、全ての聴覚をその二人へ注ぐことだけだった。
雨は降り続けていた。背後では栓がまだ絶え間なく水を噴き出し、灰白色の池が俺の脚を越えて広がり、また引いて、体の側面へ幾重もの波紋を打ち寄せていた。
シュジョウの蛇の体はまだとぐろを巻いたままだった。鱗はもう逆立っていなかったが、どの一枚も止まることなく、雨の中でかすかに震えていた。炎の竜巻に焼かれた砂はまだ煙を上げていて、そこに落ちる雨粒は触れた瞬間に白い蒸気となり、彼の蛇の体のそばで細く立ち上っていった。
老人は本を胸に抱え、袖でもう一度表紙を拭ってから、ゆっくりと顔を上げた。
「先ほど、この若者は自分で選んだ代行者だと言ったな」
シュジョウが先に口を開いた。
「それならこの雨と、どこからともなく湧き出たこの水も、お前が彼のために起こしたことなのか?」
「全部が俺の力というわけではない」
老人はすぐに答えた。
「この若者の力の大半は、巽の塔そのものから来ている」
俺の前部がかすかに震えた。
「彼の化身も、武装も、従える者たちも――すべてこの塔に属するものだ」
老人は抱えた本を少し高く持ち上げた。表紙の縁から水滴が滑り落ちた。
「俺の本は、彼がその力を操るための媒介にすぎない」
このゴーレムの体、このミストキャノン、ずっと付き従ってくれているピクシーたちまで――すべて敵を倒した後に塔から与えられたものだった。それは俺自身、最初からずっと分かっていたことだった。
だが、それを他人の口からこんなにはっきりと言われると、全身が勝手に強張った。
「塔がこの力を彼に渡したと言うのか?」
シュジョウの口調は一歩も引かなかった。
「まさにその通りだ」
シュジョウの視線が俺のゴーレムの体から砲身へ移り、それから老人へ戻った。尾の先が水面の下で二度軽く叩いた。
「渙の泉庭の栓もか?」
「それもそうだ」老人は頷いた。
「栓が外れていない限り、水は止まらない。お前がこの一帯の空気から水分を一滴残らず燃やし尽くしたからこそ、この雨が降った。砂塵混じりのこの雨も、最初から最後まで、お前自身が引き起こしたことだ」
シュジョウは反論しなかった。雨が彼の裸の肩を伝い流れ、蛇の体の鱗に沿って細い筋となって集まっていった。彼は俺の背後で今も水を湧かせ続けている栓をじっと見つめ、長い間黙ってから、低い声で再び口を開いた。
「これは自分で確かめる必要がある」
「確かめるがいい、いくらでも」老人は言った。
「だがその前に、手を出さないでくれ」
シュジョウは鼻から短く鋭い音を漏らした――同意でもなく、拒絶でもなかった。
老人はシュジョウへ一度だけ目を向け、それから俺の背後でまだこぽこぽと音を立てている栓へ視線を移した。
「マスミ、その栓はもう仕舞う時間だ」
「このまま流し続けたら、この場所は二つ目の渙の泉庭になってしまう」
俺は一瞬固まった。
「巽の塔のように魔力が濃く満ちた塔の中に、これほどの水が溜まれば、そう長くないうちに自分の魔物を生み始める」老人の眉が寄り、口調が真剣なものに変わった。
「フォッグシェル・サラマンダーのようなものがな」
フォッグシェル・サラマンダー。その言葉で、渙の泉庭の濃く立ち込めた霧と、水の底に潜んでいたあの巨大な球状の生き物が頭に浮かんだ。俺は即座に答えた。
「分かりました。今すぐ仕舞います」
あの栓はこの戦いの流れを変えた鍵であり、シュジョウが一番長く目を向けていたものでもあった。今それを抜くことは、彼に「もう戦うつもりはない」と告げるのと同じだった。
俺は前部右側の脚を伸ばし、ゆっくりと栓を挟み込んだ。わざとゆっくり動かし、シュジョウの目がその動き一寸一寸を追えるようにした――これは水を止めるだけで、それ以上の意味はないと示すためだった。
俺は脚を持ち上げた。
戦いの間中湧き続けていた泉が、一気に止まった。
池の水はあらゆる方向へ地面を伝って引いていき、焼け焦げた砂に一口ずつ呑み込まれていった。灰白色の水面は一つの湿った輪にまで縮み、やがて何も残らなくなった。
ちょうどその時、内部の放射線センサー配列が、予想外の結果を返してきた。
周辺の放射線量が急激に下がっていた。
あまりに低くて、センサーシステムが誤作動したのかと思い、何度も何度も確認し直した。結果は毎回同じだった。
なぜだ? 水はただの水だ。栓を抜いただけで、放射線量まで一緒に下がるなんてあり得るのか?
脚が栓から離れたばかりのところで、老人がこちらを向いた。まるで俺の頭の中の疑問を、すでに見透かしているかのようだった。
「覚えているか――渙の泉庭を抜けた後、あそこに残された泉の水は、魔力を回復させる水だった」
「覚えています」俺は必死に思い出そうとした。
「体力と魔力を回復させて、それにマイナスの効果を解除する……」
老人はかすかに笑い、何も言わずに、俺が自分でその考えに辿り着くのを気長に待っていた。
マイナスの効果。
俺の思考が止まり、前部がびくっと跳ね上がった。
「あ! マイナスの効果って……まさか放射線による影響まで含まれているんですか?」
老人は頷いた。
シュジョウの視線が二人の間を行き来したが、彼は口を挟まなかった。
俺の知覚の中に、配信のコメントが突然、潮のように押し寄せてきた。
『放射性の砂塵を洗い流せるのか!』
『うわ、スリーマイル島もチェルノブイリも福島も救われるぞ!』
俺は何も言わず、ただ栓を脚に挟んだまま、二度と地面に触れさせないようにしていた。
シュジョウの視線が、何もなくなった砂地から俺の脚へ移り、しばらくしてから引き戻された。
「本物の神がここに姿を現した以上、理由もなく邪神が封じられた場所へ踏み入ったわけではないと信じよう」シュジョウの目が再び俺へ向いた。
「だが、すでに誰かがベルゼブブを解放しに行ったという話は、俺には信じられない」
「好きな方法で確かめるがいい」ジェフティは穏やかに言った。
「そうする、だが……」シュジョウはまだ疑わしい目で俺を見ていた。
おそらく彼は、俺をこの塔全体への脅威だと思っているのだろう。
その視線を受けて、文様の板が焼け焦がされるような感覚がした。
「心配するな」老人が小さくため息をついた。
「彼は無茶なことはしない」
そう言うと、彼は俺の方へちらりと目を向けた。その目は、約束したはずだ、口を挟むな、と言っているようだった。
俺はすぐに脚で地面を二度叩き、分かっていると示した。
老人はその動きを見て、口の端をわずかに上げ、それからまた真剣な表情に戻った。
シュジョウはそれ以上何も言わなかった。右腕をゆっくりと胸の高さまで上げ、五本の指を開いて、手のひらを俺たちへ向けた。雨が指の間を一滴ずつ伝い落ちていった。
「第七窓番人――六風の源」
何も現れなかった。
光もなく、影もなく、雨さえ曲がらなかった――一筋一筋がまっすぐ落ち続け、一滴も列を乱さなかった。俺は知覚のすべてを外へ向けて広げたが、どの方向の空気も澄んでいて、見える気配は何一つなかった。
「それは天地の意思に縛られている――形もなく、色もない」シュジョウは腕を引き戻した。
「お前たちにはそれが見えない。だが、それはお前たちを見ている」
「それに二人を見張らせておく。俺は小畜の天井まで様子を見に行く」
小畜の天井! それが俺たちの目的地だった!
その名が頭の中で何度も巡った。
「行ってくるといい」老人は言った。
シュジョウの蛇の体が鋭くねじれ、風の輪を巻き起こした。雨が渦を巻いて散らされ、灰白色の水しぶきが空へ跳ね上がり――旋風が収まった時には、彼はもう消えていた。
雨の音が、急に空ろに感じられた。
まだ聴覚を引き戻す前に、匂いが漂ってきた。焦げた土の匂いで、苦く、息が詰まるようだった。
このゴーレムの体には、ありとあらゆる検知装置が組み込まれていた――濾過アレイ、赤外線センサー、分光解析器……
様々な表示に目を通したが、空気の中にどんな物質があるのかは分かっても、その数値の変化が実際に何を意味するのかはまったく分からなかった。
そう思った瞬間、システムの中から声が響いた。
【検知出力を人間向けに変換】
それはどういう意味だ?
それを理解しようとしていたところへ、データがそのまま、もっと分かりやすいものに変わった――
湿った落ち葉の匂い、かすかな錆の気配、刈ったばかりの草の汁の匂い。
「おお! これはなかなか面白い機能だな」
老人は俺の傍に立ち、笑っていた。
「ゆっくり試してみるといい。気長に彼を待とう」
そう言われると、急に遊ぶ気になれなくなった。
俺は脚の列をすべて砂に突き立て、銃口を低く下げたまま、余計な音を一つも立てなかった。
しばらくして、その匂いがまた変わった。




